Disc Review

Live in London / Mavis Staples (Anti-)

2019.02.11

MStaples

ライヴ・イン・ロンドン/メイヴィス・ステイプルズ

元ステイプル・シンガーズのメイヴィスが再び着実なペースで唯一無比の太く豊かな歌心をぼくたちに届けるようになってくれたのは07年、67歳でアンタイ・レコードに移籍してから。移籍第一弾『ウィール・ネヴァー・ターン・バック』はライ・クーダーをプロデューサーに迎え、60年代公民権運動のただ中でよく歌われたブルースやゴスペルをカヴァーしまくった1枚で。60年代、メイヴィスがステイプル・シンガーズの一員として歌声を武器に戦い抜いてきた公民権運動の時代から、実は状況は何ひとつ変わっておらず、戦いがいまだに続いていることを聞く者に強く思い知らせてくれたものだ。

以降、ライ・クーダーに代わってウィルコのジェフ・トウィーディやシー&ヒムのM.ワードをプロデューサーに据え、次々と新作をリリースしながら新たな黄金期を築いてきたわけだけれど。そんな彼女の新作はロンドンのユニオン・チャーチでのライヴ盤だ。今回はメイヴィス本人のプロデュース。“世界で最高に歌いやすい場所”とご本人がお墨付きを与えた特別な会場でのパフォーマンスが記録されている。

歌われているのはトウィーディ/M.ワードによるプロデュース期の楽曲が中心。ベン・ハーパー作の「ラヴ・アンド・トラスト」でショーはスタート。トーキング・ヘッズ、ファンカデリック、ベンジャミン・ブッカーらのカヴァーも交えながらの展開だ。ステイプル・シンガーズの曲もちょこっと。ステイプル・シンガーズ時代の鉄板レパートリーに頼りすぎることなく、今の自らの歌声を届けようという姿勢がかっこいい。17年の最新スタジオ・アルバム『イフ・オール・アイ・ワズ・ワズ・ブラック』の参加ミュージシャンを基本としたバンドがバックアップ。ギター・トリオ+コーラスという編成が潔い。メイヴィスさんも絶好調。今年の7月で80歳になるおばちゃんとは思えない迫力だ。

メイヴィスは以前、アンタイ移籍直後の08年にも1枚ライヴ盤を出していて。これは彼女の故郷シカゴを拠点とするバラク・オバマの大統領選をある種バックアップするような形で世に出たわけだが。今回はさほど政治色が強くはないものの、明らかにドナルド・トランプ政権の悪夢のもと、でも、ひるんじゃいけないと勇気づけるような1枚になっている。アルバム中盤で歌われるトウィーディとの共作曲「ノー・タイム・フォー・クライン」とか、伝統的なゴスペルのイメージと、災害や戦争にいまだ悩み続ける現在進行形の世の中へのメッセージとが否応なく交錯する感じで。たまらないです。

毅然としていることって、大事だな。

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