Disc Review

To the Limit: The Essential Collection / Eagles (Rhino Records)

トゥ・ザ・リミット:ジ・エッセンシャル・コレクション/イーグルス

去年の9月からスティーリー・ダンをオープニング・アクトに迎え、今度こそいよいよファイナルと謳われている“ザ・ロング・グッドバイ・ツアー”を敢行中のイーグルス。創設メンバーは今やドン・ヘンリーひとり。そこに途中加入のジョー・ウォルシュとティモシー・B・シュミットが加わって。グレン・フライ他界後に参加したヴィンス・ギルもいて。そのとき同時に参加したのち、いったんバンドから脱退を表明していたグレンの息子さん、ディーコン・フライも出戻って…。

そんな顔ぶれで、今年の3月まで全米各地を回って。5月末からは全英ツアーがスタート。マンチェスターに新たに建設された英国最大の屋内アリーナ“コープ・ライヴ”で5回公演して、さらにヨーロッパへ。もちろん各地ソールドアウト続出。ツアーは2025年まで延長される見込みだとか。日本にも来てくれるのかな。来てくれてもどうせまたまた超高額なんだろうけど、それでも来てくれるといいな…。

と、そんなタイミングで、まさにキャリアを総括するような決定的コレクションがリリースされた。まあ、イーグルスの場合、これまでもたくさんのベスト・コレクションが編まれてきたし、全作品を詰め込んだボックスセットもあるし。何を今さら…的な感じではあるのだけれど。

本格的なイーグルス体験はまだ、みたいな若い世代も少なくないだろうし。初期しか聞いてないとか、『ホテル・カリフォルニア』しか知らないとか、いろいろなタイプのリスナーがいるだろうし。こういうベストものはそれなりに重宝しそう。

今回はCD3枚組、あるいはLP6枚組。CDで説明すると、ディスク1と2に再結成時も含む7作のオリジナル・スタジオ・アルバム、『イーグルス・ファースト(Eagles)』(1972年)、『ならず者(Desperado)』(1973年)、『オン・ザ・ボーダー』(1974年)、『呪われた夜(One Of These Nights)』(1975年)、『ホテル・カリフォルニア』(1976年)、『ロング・ラン』(1979年)、再結成作『ヘル・フリーゼズ・オーヴァー』(1994年)、『ロング・ロード・アウト・オヴ・エデン』(2007年)からピックアップされた35曲を収録。

で、ディスク3に『イーグルス・ライヴ』(1980年)、『ザ・ミレニアム・コンサート』(2000年)、『ライヴ・アット・ザ・フォーラム'76』(2017年)、『ライヴ・フロム・ザ・フォーラム MMXVIII』(2020年)といったライヴ・アルバム群からセレクトされた音源を。前出『ヘル・フリーゼズ・オーヴァー』に収められていたMTVライヴからも2曲。で、計16曲。ライヴのクオリティがやっぱりこの人たち、すごいです。

ただ、実はEagles.comでプレオーダーしたブツがまだ手元に届いていなくて。サブスクで聞いている状態なのだけれど。ディスク3の冒頭の「セヴン・ブリッジズ・ロード」は1980年のライヴ音源で。そのあとに『イーグルス・ライヴ』と同様、“次の曲はもうすぐ出る『ホテル・カリフォルニア』ってアルバムからドン・ヘンリーをフィーチャーした「時は流れて(Wasted Time)」です”みたいな1976年のMCが入っていて。でも、実際、次に入っているのは1976年の演奏ではあるものの、曲は「テイク・イット・イージー」で。このMC、商品ではちゃんとカットされているのかな。サブスクだけのミスかな。盤もそうなってるのかな。同じ音源、使い回しちゃったのかと思ってサブスク版の『イーグルス・ライヴ』でチェックしてみたら、そっちはむしろMC部分がフェイドアウトされていたりして。なんか、テキトーだなー(笑)。

1971年、ロサンゼルスで結成。翌1972年に爽快なカントリー・ロック・サウンドをひっさげてデビューを飾って以降、何度かのメンバー・チェンジを経て、やがてよりスケールの大きなロック・サウンドを聞かせるビッグ・グループへ。1982年にいったん解散。メンバーのソロ活動期を挟んで、1994年に再結成。それからは世界各国をツアーして回りながら、時代を超えて色あせることのないイーグルス・サウンドを奏で続けている…と。これがきわめて大ざっぱなイーグルス・ヒストリーなのわけですが。

それだけに、はじめて聞いた年代によって、人それぞれイーグルスに対して抱くイメージは微妙に違うと思う。たとえば1976年から1977年にかけて世界中で大ヒットした「ホテル・カリフォルニア」で初めてイーグルスに接した人にとって、彼らは間違いなく1970年代後半を代表するスーパー・ロック・バンドというイメージだろうし。再結成以降、初めて彼らの音を聞いた人であれば、ちょっとノスタルジックでアダルト・コンテンポラリーなバンドというイメージを抱いているかもしれない。

で、もちろんぼくのような古株洋楽ファンの場合は、1972年のデビューをリアルタイムで体験した世代だということもあって、どうしてもロサンゼルスのいかしたローカル・カントリー・ロック・バンドというイメージからいまだ抜けきれずにいる。その辺の思いは、かつて2021年にモービル・フィデリティがファースト・アルバムのSACDをリリースしたとき、本ブログであれこれ書かせてもらったので、よろしければそちらも参照していただきたいのだけれど。

そんなふうに、オリジナル活動期、再結成以降、両方にバランス良く目配りした的確な仕上がりのベスト・コレクションだと思う。バーニー・レドン作の静かな名曲「マイ・マン」とか「安らぎによせて(I Wish You Peace)」とかが入っていないのは、レドンさんの脱退劇とか考えると仕方ないか。自分で聞きます(笑)。

イーグルスの基本アイテムはもう全部持ってるぜ、みたいな方も、サブスクで聞いてみると楽しいかも。プレイリスト感覚で、ひとつ。やっぱイーグルス、いいなぁ…と素直に思えるはず。Eagles.comでプレオーダーするとリトグラフが特典で付いていたけれど、来週出る国内盤(Amazon / Tower)のほうには特製ステッカー・シートが封入されているそうです。

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