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Disc Review

The Singles & Albums Collection 1958-62 / Dion & The Belmonts (Acrobat Records)

ザ・シングルズ&アルバムズ・コレクション1958〜62/ディオン&ザ・ベルモンツ

ディオンが大好きだ。セリーヌじゃなく。もちろん、かつて一緒に番組とかやらせていただいていた光岡さんでもなく(笑)。

ディオン・ディムーチ。1950年代からすでに半世紀以上、地元ブロンクスのやばさと洗練がきわどく交錯するムードをロックンロールに託して届け続けてくれているごきげんな男。アメリカ東海岸のイタリア系アーティストとして、フランク・シナトラとブルース・スプリングスティーンの間を埋める重要な存在でもある、あのグレートなロックンローラー。

1957年、レコード会社に押しつけられたグループ、ザ・ティンバレインズをバックにローカル・デビューを飾ったのち、地元の悪友たちと組んだヴォーカル・グループ、ザ・ベルモンツとともに翌年、心機一転、再スタートを切って以来、ディオンは常に現役感を失うことなく、現在まで様々なフォーマットの音楽をぼくたちに届け続けてくれている。

ティーンエイジャーの気持ちを託したホワイト・ドゥーワップ、ニューヨーク・スタイルのハード・ドライヴィングなロックンロール、ルーツ感覚溢れるフォーク・ブルース、男の切なさに満ちたカントリー、甘いポピュラー・スタンダード、パンキッシュなロック、そして敬虔なゴスペル…。彼の音楽的変遷は多岐にわたる。けれども、それらはいつもディオンならではの音楽だった。どの時代の歌声にも、確実にディオンならではの魅力が、深さが、技術が、ソウルが、そして何よりも独自のストリート感覚が漂っていた。

一度だけ、21世紀になってから彼のライヴを見たことがある。6年ほど前。2014年のことだ。ニューヨークのビーコン・シアターで。「ドナ・ザ・プリマ・ドンナ」「ラヴ・ケイム・トゥ・ミー」「アイ・ワンダー・ホワイ」「ティーンエイジャー・イン・ラヴ」「ザ・ワンダラー」「オールウェイズ・イン・ザ・レイン」など古今の彼自身の持ち歌だけでなく、バディ・ホリーの「レイヴ・オン」、エディ・コクランの「サマータイム・ブルース」、ビッグ・ジョー・ターナーの「シェイク・ラトル・アンド・ロール」、ハウリン・ウルフの「ビルト・フォー・コンフォート」など、いくつか含まれていたカヴァー曲も印象的だった。もともと60年代にカヴァーしてディオン名義でもヒットを記録したザ・ドリフターズの「ルビー・ベイビー」も含め、実に力のこもったパフォーマンスだった。

1939年生まれだから、あのとき75歳。残された俺が亡くなった彼らの分まですべて背負っていくぞ、まだまだ死ねないぞ、という心意気というか。もはや自分がどうこうじゃない、すでに自らその歴史の一部となっているロックンロールなりソウルなりゴスペルなりブルースなり、そうした“文化”そのものを体現していくんだ、という熱い思いが彼の歌声にはあった。本当に素晴らしい夜だった。元祖“キング・オヴ・ニューヨーク”の面目躍如。そう。キング・オヴ・ニューヨークというとルー・リードを思い出す人がいるかもしれないが、ルー・リードは2代目なのだ。それは本人も認めていた。ルー・リードも心から尊敬する偉大なる先代。それこそがディオンだ。

そんなディオンの最初期、1957〜1962年のモーホーク・レコード音源とローリー・レコード音源を一気にまとめあげたアンソロジーが出た。ディオン&ザ・ティンバレインズ名義、ディオン&ザ・ベルモンツ名義あるいはソロのディオン名義でリリースした全シングルのAB面、およびベルモンツのアルバム『プレゼンティング・ディオン&ザ・ベルモンツ』『ホエン・ユー・ウィッシュ・アポン・ア・スター』、ディオンのソロ・アルバム『アローン・ウィズ・ディオン』『ランアラウンド・スー』『ラヴァーズ・フー・ワンダー』からピックアップされた曲で構成されたCD2枚組、全58曲。

ディオンは自らの音楽を“ブロンクス・ブルース”と呼んでいて。それは“R&Bにストリート・コーナー・ドゥーワップとハンク・ウィリアムスの味をミックスして、イタリア系アメリカ人が溢れる地区独特のフィルターで瀘した音楽”だ、と。で、その魅力のすべてが充満したアンソロジーだ。日本のApple MusicとかSpotifyではストリーミングされていないみたいなんだけど、AmazonのUnlimitedには入っているようなので、興味ある方、そちらでチェックを。

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© 2020 Kenta Hagiwara