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Disc Review

Anything You Want: The Warner-Reprise-Elektra Years 1975-1999 / David Sanborn (SoulMusic Records/Cherry Red)

エニシング・ユー・ウォント:ザ・ワーナー〜リプリーズ〜エレクトラ・イヤーズ 1975-1999/デヴィッド・サンボーン

ぼくがデヴィッド・サンボーンという名前を本格的に意識したのはいつだったか…。

もうよくわからなくなってしまったけれど、たぶん1970年代半ば、輸入盤屋さんとかロック喫茶とかを起点に、日本の洋楽ファンの間でちょっとしたセッション・ミュージシャン・ブームが巻き起こったころのことに違いない。エイモス・ギャレットってギタリストが入っているレコードはハズレがないねとか、アンディ・ニューマークとウィリー・ウィークスがリズム隊なんだから絶対かっこいい曲だぞとか。そんな感じでアルバム裏の参加ミュージシャン・クレジットを吟味しながらレコードを漁っていた時期。

まだ誌名に“ニュー”が付いていたころの『ニュー・ミュージック・マガジン』誌も“スタジオ・ミュージシャン名鑑”なる特集を組んだりしていて。まあ、今振り返るとずいぶん粗っぽい情報も含まれていたとはいえ、有名どころからマニアックなところまで、様々なミュージシャン名がリストアップされていたその号は繰り返し繰り返し、まるで英単語を暗記するように読み返したものだ。そんな中で、デヴィッド・サンボーンというサックス・プレイヤーの名前も意識するようになったような。というか、ぼくが当時、普通に接していたタイプのアルバムでフィーチャーされていたサックス・プレイヤーといえば、もうトム・スコットかデヴィッド・サンボーンか、たまにマイケル・ブレッカー…みたいな感じだった。

当時のぼくの愛聴盤の中から、サンボーンが参加していたものを思いつくままにだだーっと列挙してみると——。

B.B.キング『ゲス・フー』(1972年)、ラウドン・ウェインライトⅢ世『アルバムⅢ』(1972年)、トッド・ラングレン『魔法使いは真実のスター(A Wizard, a True Star)』(1973年)、ボーダーライン『スウィート・ドリームズ・アンド・クワイエット・ディザイアズ』(1973年)、ポール・バタフィールド『ベター・デイズ』(1973年)、デヴィッド・ボウイ『ヤング・アメリカンズ』(1975年)、ジェイムス・テイラー『ゴリラ』(1975年)、リンダ・ロンシュタット『哀しみのプリズナー(Prisoner in Disguise)』(1975年)、ポール・サイモン『時の流れに(Still Crazy After All These Years)』(1975年)、マンハッタン・トランスファー『ザ・マンハッタン・トランスファー』(1975年)、フィービ・スノウ『夜の調べ(Second Childhood)』(1976年)、マイケル・フランクス『ジ・アート・オヴ・ティー』(1976年)、ガーランド・ジェフリーズ『ゴースト・ライター』(1977年)、ドン・マクリーン『プライム・タイム』(1977年)、チャカ・カーン『チャカ』(1978年)、ドクター・ジョン『シティ・ライツ』(1978年)、カーリー・サイモン『男の子のように(Boys in the Trees)』(1978年)、イーグルス『ザ・ロング・ラン』(1979年)、ボニー・レイット『ザ・グロウ』(1979年)、ピュア・プレイリー・リーグ『ファイアリン・アップ』(1980年)…。

いやいや。1970年代の、ジャズ以外の分野の盤だけ思い出していてもきりがない。要するに、この人のサックス・プレイにはとにかく大いにお世話になった、と。そういうことだ。

もちろんサンボーンはセッション・プレイヤーとしてだけでなく、自身のリーダー・アルバムもたっくさんリリースしていて。ドン・グロルニック、ジョー・ベック、スティーヴ・カーン、ウィル・リー、バジー・フェイトン、クリス・パーカー、スティーヴ・ガッド、ブレッカー兄弟らが大挙バックアップした1975年のファースト・ソロ・アルバム『テイキング・オフ』とか、ポール・サイモンやフィービ・スノウがゲスト・ヴォーカルで参加していた1976年の『デヴィッド・サンボーン』とか、ジェイムス・テイラー作の超素敵な小品「ベンジャミン」を含む1977年の『プロミス・ミー・ザ・ムーン』とか、特に初期の作品はよく聞いたものだ。マーカス・ミラーとがっつりタッグを組んだ時期のデジタル・ファンク系のものもそれなりに盛り上がって楽しんでいたっけ。

そんなサンボーンのソロ・アーティストとしての歩みをCD3枚組で一気に総まくりしようというのが本作だ。なんか、聞いていてものすごく懐かしかったというか、楽しかったというか。なもんで、ちょっと前、サンボーンの75歳の誕生日にあたる7月30日に出た盤ながら、改めて紹介しておくことにしました。バタフィールド・ブルース・バンドの一員として1967年から1971年まで活動して、脱退後はブレッカー・ブラザーズと活動をともにして。1974年にソロ・アーティストとしてワーナー・ブラザーズと契約。以降、21世紀になってヴァーヴ・レコードへと移籍する前まで、ワーナー〜リプリーズ〜エレクトラ在籍期の歩みを、クロノロジカルにではなく、なんとなく傾向別に3枚のディスクに振り分けた全46曲のアンソロジーだ。

ディスク1は“ニューヨーク・デイヴ&ザ・カリ・クロスオーヴァー・エクスプレス”と題されたもので。スティーヴ・ガッドのドラムとラルフ・マクドナルドのパーカッションにマジカルなストリングス・アンサンブルが絡んで、それらをバックにサンボーンがばりばりブロウしまくる「フライト」で幕開け。ランディ・ブレッカー作のプロト・スムース・ジャズとでも言うべき「イット・トゥック・ア・ロング・タイム」や、レオン・ラッセル作の「ジス・マスカレード」、前述の名曲「ベンジャミン」、郷愁に満ちたオーケストレーションのもとリンダ・ロンシュタットの歌声をフィーチャーした「ザ・ウォーター・イズ・ワイド」など、副題通り、東海岸と西海岸を行ったり来たりしながら生み出した名演が集められている。

ディスク2は“サンボーン:ソウル・マン”。1987年の『ア・チェンジ・オヴ・ハート』の収録曲、ドクター・ジョンのピアノをフィーチャーした「ハイ・ローラー」でファンキーにスタート。ヘイミッシュ・スチュワートのヴォーカルをフィーチャーしたアル・グリーンのカヴァー「ラヴ・アンド・ハピネス」のライヴ・ヴァージョンとか、ハワード・ヒューエットが“ガヤ”を担当している感じのマーヴィン・ゲイ・カヴァー「ガット・トゥ・ギヴ・イット・アップ」の強烈なリミックス版とか、ルーサー・ヴァンドロスらのバック・コーラスとマーカス・ミラーの“ンベッ!”ってスラップ・ベースが懐かしくもかっこいいグラディス・ナイト・カヴァー「ニーザー・ワン・オヴ・アス」とか…。

で、ディスク3が“イヴニング・エンバー・エッセンス”。これは副題からもわかる通り、クワイエット・ストーム系というか、スムース・ジャズ系というか、ちょびっとだけアヴァンギャルド系というか。そういう感触の名演を集めた1枚。全編通してシングル・エディット・ヴァージョン、レア・ミックス、ライヴ・ヴァージョンなども多数。いろいろ思い出します。

個人的にはやっぱり断然ディスク1。泣けたなぁ…。

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