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Disc Review

Fleetwood Mac: 1969 to 1974 / Fleetwood Mac (Rhino)

フリートウッド・マック:1969〜1974/フリートウッド・マック

ピーター・グリーンが亡くなった時期も含めて、本ブログではよく初期フリートウッド・マックの話を書かせてもらっているのだけれど。

このフリートウッド・マックというバンドは、歴史が長いぶん活動時期によってまるで違う個性を放っていて。ファンの間ではどの時期のマックが好きかでけっこうまじな論議になってしまったりも。仕方ない。バンド名の由来になったフリートウッドとマック、つまりドラムのミック・フリートウッドとベースのジョン・マクヴィーというリズム隊だけが結成以来不変のメンバー、という歴史ゆえ、フロントを担う個性が代わるたびにサウンドも変わっちゃう、みたいな。

この二人の名前をバンド名に冠することを決めたのは初期の中心メンバー、ピーター・グリーンだったわけだけれど。その判断というか思いつきが、フリートウッド・マックというバンドの個性を決定づけてしまったわけだ。

で、このマックの歴史において、たぶんもっとも人気が高いのは1975年にバッキンガム・ニックス、つまりリンジー・バッキンガムとスティーヴィー・ニックスを新メンバーに迎えて以降、『ファンタスティック・マック』『噂 (Rumours) 』『牙 (タスク)』『ミラージュ』など特大ヒット・アルバムが続々生まれたポップ・ロック期だろう。次に評価が高いのは初期。1968年から69年にかけて、ピーター・グリーンがリーダーシップを担っていたブルース・ロック期。人気という観点ではその全盛期に劣るかもしれないけれど、この時期を支持するファン(含・ハギワラ)の熱量は圧倒的だ。

おかげで、その狭間、ピーター・グリーンがドラッグ問題などで離脱してしまった1970年からバッキンガム・ニックスが加入する1975年までのマックというのが、なんとも微妙な存在になってしまっている。評価が今ひとつ固まらないというか。なかったことにされがちというか…(笑)。

でも、どんなバンドでもアーティストでも、注目度なり人気なりがちょっと落ち込んだ時期、いかに持ちこたえようとしたかが実はけっこう重要だったりする。1970年代前半のビーチ・ボーイズとか、1960年代後半のエルヴィス・プレスリーとか、1980年代初頭のエルトン・ジョンとか…。それがフリートウッド・マックにとってはビーチ・ボーイズと同様の1970年代前半ということになる。で、その時期の一連のオリジナル・アルバム群を一気にまとめたボックスセットが今日紹介する『フリートウッド・マック:1969〜1974』なわけだ。

マックは1969年にリプリーズ・レコードと契約。ピーター・グリーンにとっては最後の参加作品となったサード・アルバム『ゼン・プレイ・オン』をリリースした。本ボックスはこのアルバムでスタート。2013年に米ライノ・レコードが編纂したボーナス大量投入エディションがディスク1に収められている。

で、ディスク2が1970年の『キルン・ハウス』。離脱したグリーンに代わってダニー・カーワンとジェレミー・スペンサーがリーダーシップをとった1枚だ。カーワンのポップ・ロック志向とスペンサーのロカビリー〜ロックンロール志向が混在する、個人的にはけっこう嫌いじゃない仕上がり。ノー・クレジットながらクリスティン・パーフェクトがバック・コーラスやキーボード、そしてアルバム・ジャケット・デザインなどで関わっている。今回はボーナス4曲追加エディション。

ディスク3は1971年の『フューチャー・ゲームズ』。ジェレミー・スペンサーがやはりドラッグ問題でどうにもならなくなり、脱退というか、失踪。ジョン・マクヴィーと結婚して姓が変わったクリスティン・マクヴィーが正式メンバーとして参加した最初の1枚だった。さらにオーディションを経て新メンバー、ボブ・ウェルチも加入。ここに至ってフリートウッド・マックは英米メンバー混交バンドということになった。スペンサーがいなくなったことで、もはやブルース色は大きく後退。浮遊感と透明感ただようフォーク・ロック・サウンドが売り物に。今回はシングル・ヴァージョン、別ヴァージョンなど6トラック追加のエディションで。

ディスク4は1972年の『枯木(Bare Trees)』。これもフリートウッド、マクヴィー夫妻、カーワン、ウェルチというラインアップによる1枚だ。クリスティン・マクヴィーとボブ・ウェルチのソングライターとしての成長ぶりを堪能できる仕上がり。ジャッキー・デシャノンもカヴァーしていたマクヴィー作「スペア・ミー・ア・リトル・オヴ・ユア・ラヴ」とか、当時けっこうよく聞いたものです。ボブ・ウェルチがのちにソロ・アルバムで再演することになる「センチメンタル・レディ」の初期ヴァージョンもあり。個人的にはこっちのほうが好き。ボーナス3トラック追加エディション。

ディスク5は1973年の『ペンギン』。ここでダニー・カーワンに対しアルコール問題などを理由にクビ宣言。代わりにボブ・ウェストンとダニー・ウォーカーが加入。このアルバムから一気にポップ・ソウル度とかジャズ・ロック度が高まる。ヒットしなかったけれど、ウェルチ&マクヴィー作のシングル曲「ディッド・ユー・エヴァー・ラヴ・ミー」とか、マクヴィー作のオールディーズ・ソウル調「ディスサティスファイド」とか、けっこう好きだった。ブルー・アイド・ソウル風味のウェルチ作「ナイト・ウォッチ」にはちらっとピーター・グリーンもギターで参加している。マックのトレードマークであるペンギンの存在感が前面に出てきた1枚でもあった。オリジナル・リリース通りの9曲入り。

ディスク6は1973年の『神秘の扉(Mistery to Me)』。ダニー・ウォーカーがいなくなって、フリートウッド、マクヴィー夫妻、ウェルチ、ウェストンというラインアップで作られた作品だ。ぼくは個人的にこのラインアップ、けっこう好きだった。けっこう売れた1枚だったような…。ウェルチ作の「ヒプノタイズド」がやはりハイライトか。クリスティン・マクヴィー作の「ジャスト・クレイジー・ラヴ」も好き。ウェルチ作でマクヴィーが歌う「キープ・オン・ゴーイング」のように二人がいい形でタッグを組んでいる感触がある。ストリングスとかも明解に導入されて、いよいよポップ・バンドとしてのマックの個性が確立した感じ。

ちなみに、このアルバムにはヤードバーズの「フォー・ユア・ラヴ」のカヴァーも入っているのだけれど。もともとはウェルチ作の「グッド・シングズ(カム・トゥ・ゾーズ・フー・ウェイト)」という曲が入る予定だったのが、リリース直前に「フォー・ユア・ラヴ」に差し替えられた。で、今回はその「グッド・シングズ」を含めたボーナス2トラック入りです。因みにこの曲、のちにボブ・ウェルチがアルバム『スリー・ハーツ』でやっていた「ドント・ウェイト・トゥー・ロング」の初期ヴァージョン。

このアルバム発表後のツアー中にボブ・ウェストンがミック・フリートウッドの奥さんと不倫しちゃったことでクビになったうえに、マクヴィー夫妻も旦那の酒癖の悪さに辟易したクリスティン奥さまが不倫に走っちゃったり、でも、なんとか元サヤに収まったり…。もうツアーどころじゃない、ちょっと休みたい、と。でも、マネージャーのクリフォード・デイヴィスがツアーをキャンセルしたくないものだから、エルマー・ガントリーを中心とする別メンバーをかき集めてツアーを継続してしまうという、フェイク・フリートウッド・マック騒動があったり。むちゃくちゃな時期を経て、リリースされたのが1974年の『クリスタルの謎(Heroes Are Hard to Find)』。これがディスク7だ。

ボブ・ウェルチが在籍していた最後の1枚ではあるけれど、全11曲中7曲がウェルチ作。基本的にはウェルチ色が濃いポップな傑作だ。「シルヴァー・ヒールズ」「シーズ・チェンジング・ミー」「エンジェル」あたり、よく聞いたっけ。もちろんクリスティン・マクヴィーも相変わらずいい個性を発揮。スニーキー・ピート・クレイノウを呼んでスライド・ギターっぽいフレーズをペダル・スティールで演奏してもらっている「カム・ア・リトル・ビット・クローサー」とか、興味深かった。アレンジャーとしてニック・デカロを起用しているのもいい味。シングル・ヴァージョン1トラックがボーナス追加されている。

そして、ディスク8は“ライヴ・フロム・ザ・レコード・プラント1974-12-15”。バッキンガム・ニックスが加入する直前に行なわれたFM向けのスタジオ・ライヴ音源だ。かなり出来のいいライヴ。もちろんボブ・ウェルチとクリスティン・マクヴィーの作品を中心に演奏しているのだけれど、いちおう「ブラック・マジック・ウーマン」とかピーター・グリーンものも3曲(メドレー含めて4曲)やってます。

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