Disc Review

Sam Amidon / Sam Amidon (Nonesuch)

サム・アミドン/サム・アミドン

昨夜、“ナガシのサハシ”こと佐橋佳幸くんをゲストに迎えてお届けした「#リモートCRT」。今回は佐橋くんがアコースティック・ギターだけでなくエレキ・ギターも持ち込んでくれて。もろもろのコードワークのアプローチについて、あれこれ楽しく話してくれました。

オーギュメントはモテ・コードとか、人生のほとんどの時間バッキングかチューニングしてきたとか、コード進行が慶応っぽいとか(笑)。名言・迷言も続々。11月8日までアーカイブ配信が楽しめますので、ご興味ある方、サイドバー(PCの方)や下方(スマホの方)のCRTインフォメーションをご参照のうえ、チェックしてみてください。

しかし、当たり前っちゃ当たり前だけど。佐橋、ギターうめーな…(笑)。

引き続き、今夜、10月26日はブルース・アレイ・ジャパンから、佐橋くんとぼくがMCをつとめる「ケンタ&サハシの・オタクの御託・承ります@目黒BAJ」の第4回。難波弘之さんをゲストに迎えて、プログレがちょっと苦手なケンタ&サハシにプログレの奥深い魅力を説いていただく予定です。難波さんならではの多彩なキーボード群もどかっと持ち込んでいただきます。詳細、こちら

で、CRTに話を戻して。こちらの次回開催は11月21日、ビートルズをテーマに盛り上がる予定です。『レット・イット・ビー』50周年関連のボックスとか映画とか、その辺のもろもろは来年に延期って感じになってしまったようだけど。50周年は50周年だし。ポール・マッカートニーは『マッカートニー3』のリリースを突如発表したし。ジョン・レノンの新規リミックス・ベストも編まれたし。今月の『レココレ』誌はジョンの特集だし。相変わらず賑やかなビートルズ周辺の話題をめぐって、あれやこれや、プレイリストなども発表しつつ盛り上がりたいと思っています。詳細は追ってお知らせしますね。

さらに年末には恒例のCRT忘年会。12月8日、ロフト・ヘヴンからヨシンバのライヴを無観客・生配信します。ゲストに初恋の嵐・隅倉さんと、ヒックスヴィル・中森さん。萩原、祢屋、能地のCRTレギュラー・トリオもMCとして参加してわいわいやります。むちゃくちゃ楽しみです。こちらの視聴チケットの発売はすでにスタート。また本ブログでも細かくインフォメーションさせていただきますが、とりあえず詳細はこちらへ。

と、もろもろインフォメーションを終えたところで、本日のおすすめ盤。サム・アミドンです。音楽の様式とか、楽曲とか、あるいは楽器とか、そういった種々様々な“伝統”に対する深い深い敬愛の念と、“現在”を生きる者ならではのイノヴェイティヴな感性とがうねうねと絡み合う独特の音世界を提示し続けるシンガー・ソングライターというか、フィドルやバンジョー、ギターなどを駆使するマルチ・インストゥルメンタリストというか。

トーマス・バーレット、ニコ・ミューリー、ビル・フリゼール、奥さまでもあるベス・オートンなど、実に興味深い顔ぶれとコラボレートしつつ、自作曲中心のアルバムを出したり、トラディショナルな米国フォーク音楽のカヴァー中心のアルバムを出したり。着実な足取りで活動を続けてきた。そんなサム・アミドンの新作。たぶん9作目かな。全部追いかけきれていないのでよくわかりませんが。ノンサッチ・レコードに移籍してからはシングルやEPを挟んで4作目のフル・アルバム。

なんだかんだ20年近いキャリアを積んできて。ついに初のセルフ・プロデュース。しかもアルバム・タイトルもシンプルに真っ向から『サム・アミドン』。でも、内容はノンサッチへの移籍第一弾となった2013年の『ブライト・サニー・サウス』同様の、全曲カヴァー作。

アルバムは、古いアパラチアン・チューン「マギー(リトル・マギー)」を伝統楽器の音色とシンセの音色を絡ませつつ、ファンキーなグルーヴに乗せて再構築したようなヴァージョンで幕を開けて。われわれ世代にはジュディ・コリンズやザ・バーズとかのヴァージョンでもおなじみ「プリティ・ポリー」を軽やかに疾走するビートで聞かせて、そのままタジ・マハールの「ライト・レイン・ブルース」のアンビエントなカヴァーへとなだれ込んで…。むちゃくちゃ面白い。個人的にはレッド・フォーリーとかブラックウッド・ブラザーズとかで知られる、ちょっと敬虔な味わいもあるカントリー・バラード「タイム・ハズ・メイド・ア・チェンジ」での淡々とした表現にしびれました。

これはアナログ盤でも欲しいな、と思ったけど。アナログLPのリリースは来年1月になるみたい。

しかし、こういうカヴァー作に堂々と自らの名をシンプルに冠して初のセルフ・タイトルド・アルバムとしてリリースしてきたのだから。これは見事な姿勢表明というか、さりげなくも実に強いメッセージというか。ちょっとぐっとくる。その辺のことも含めて、実は本作の詳細は能地祐子が発行している…というか、勝手に好きで“手書き”(笑)しているSNS版壁新聞“ノンサッチ自警団新聞”の最新ポスト(インスタはこちら、ツイッターはこちら)に詳しいので、ぜひそちらを参照してみてください。

身内のやっていることなので、なんか贔屓目っぽく映るかもしれないけれど。この壁新聞、すごいです。ノージはもうただただノンサッチ・レコードから出るアルバムが好きで好きで仕方なく。まあ、日本ではノンサッチ関連の国内盤リリースがほんの一部を除いてままならないという情けない状況下、しかしノージの好き好きパワーはとどまるところを知らず。そんな思いが高じて、ついに勝手に壁新聞作りをするようになり。自分の友だちだけに向けてSNSでひっそり公開し始めたのだけれど。

面白いもので。それがいつしか本家ノンサッチ・レコードのお目にとまり。ご本家のアカウントがノージの私設壁新聞をリツイートとかシェアとかしたり、コメントをつけたりしてくれるようになって。

そしたら、今度はノージが題材にするミュージシャン本人、たとえばアーリー・ジェイムスとか、ティグラン・ハマシアンとか、ヨアキム・クーダーとか、今回紹介したサム・アミドンとか、あとこちらはノンサッチではないもののジェイソン・イズベルとかのアカウントからも「いいね」が付くようになって。さらにシェアの輪が広がって。日本語で手書きしてあるので英語圏の人には何が書いてあるかすらわからないはずの壁新聞が、なんだかずいぶんとグルーバルなものになってしまった。

いやー、インターネットってすげえな、と思い知りましたよ。とともに、やっぱり個人の純粋に“好き”という熱は言語も国境も超えて伝わるものなんだな、と。そんなことを改めてじわじわ実感する今日このごろなのでありました。本来なら日本のレコード会社がやらなきゃいけないことなのにね。もうレコード会社にはこういう熱はないのかな…。

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