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Disc Review

April In Paris: The Genius Of Charlie Parker #2 / Charlie Parker With Strings (Verve/Universal Music Japan)

エイプリル・イン・パリ〜チャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングス+4/チャーリー・パーカー

昨日、ジャイアンツが川上哲治生誕100周年記念試合みたいなやつをやっていたけれど。音楽の世界だとこの人も生誕100年です。チャーリー・パーカー。1920年生まれ。ビ・バップの創造主と打撃の神様とが同い年だなんて。ちょっと面白いっすね。

で、そんなこんなを祝してヴァーヴ・レコードに残された“ザ・ジーニアス・オヴ・チャーリー・パーカー”のシリーズが#1から#8まで、全8タイトル、初UHQCD化という形で本日再発になった。まあ、これまでも機会があるたび数え切れないほど再発が繰り返されてきた盤ばかりなので、何を今さら…ではあるものの。万が一、まだチャーリー・パーカー未体験なんて方がいらっしゃるようならば、これがいい機会。改めてパーカーがジャズの世界で成し遂げた偉業を噛みしめるには絶好かも。

出るのは、ジョー・リップマン編曲/指揮によるビッグ・バンドやストリングスを従えてパーカーが躍動する1950〜52年の『ナイト・アンド・デイ』。

1949〜50年に録音されたいわゆる“ウィズ・ストリングスもの”のハシリ的な名演集『エイプリル・イン・パリ~チャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングス+4』。

パーカーのアルト・サックスのみをフロントに据えた1952〜53年のワン・ホーン・セッションの記録『ナウズ・ザ・タイム+1』。

ディジー・ガレスピー(tp)、セロニアス・モンク(p)、カーリー・ラッセル(b)、バディ・リッチ(ds)という興味深い顔ぶれを迎えた1950年のセッション『バード・アンド・ディズ+3』。

ギターを含む変則クインテット編成でコール・ポーターの楽曲群を演奏した1954年、パーカーにとって最後のスタジオ・セッションの記録『チャーリー・パーカー・プレイズ・コール・ポーター』。

パーカッションを交えて行なわれた1951〜52年のラテン・セッションを収めた『フィエスタ』。

1953年にギル・エヴァンス編曲/指揮のオーケストラとデイヴ・ランバート・シンガーズと共演した異色音源のほか、1949年、50年のセッションからの音源で構成された『ジャズ・パレニアル』。

そして、愛弟子マイルス・デイヴィス(tp)との1951年の再会セッションを含む『スウェディッシュ・シュナップス+4』。

タワー・レコードのサイトにシリーズの特集ページ、ありました。

ヴァーヴと契約する前、ダイアル・レコードとかサヴォイ・レコードとかに残したレコーディングも含めてチャーリー・パーカーの音源はすべて必携なのだけれど。今回再発されたものの中でどれか1枚…ということであれば、ちょっと本筋からは外れるかもしれないけれど、ぼくは“ウィズ・ストリングスもの”をおすすめしたいです。ザ・ジーニアス・オヴ・チャーリー・パーカーの#2にあたる『エイプリル・イン・パリ~チャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングス』。

今はどうだか知らないけれど、かつて、ぼくが大学生だった1970年代半ばあたりには、アレンジがチープだとか、革新性に欠けるとか、売れ線すぎるとか、当時のクロート筋というか、ジャズのうるさ方というか、そういう人たちからけっこうディスられがちな盤だった。けど、溢れんばかりに豊かすぎるパーカーのメロディ感覚と尽きぬアイディアに満ちた滑らかなインプロヴィゼーション感覚を存分に堪能できる1枚として、ぼくにとっては長年の愛聴盤。

むしろ、うるさ方からディスられがちなこの種のアルバムにこそ、そのアーティストの本質なり本音なりが刻み込まれていたりもするわけで。まあ、本ブログを読んでくださっているようなマニアックな方ならばたぶんそのあたりのことはよくおわかりだろうと思うので、今さらながらの話ではありますが。

シーンにおける歴史的意義とかじゃなく、パフォーマーの個人史における癒しのポイントというか。長く音楽を聴き続けてくると、そういうもののほうにこそ心が奮えるようになってきたりするものだ。そしてそういうときこそ、若いことが美徳のように語られがちなポップ音楽の世界にあって、トシをとることも悪くないなと実感できる瞬間だったりして…。

残暑をやり過ごすためにも最適の1枚です。ぜひ。

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© 2020 Kenta Hagiwara