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Disc Review

A LONG VACATION 40th Anniversary Edition / Eiichi Ohtaki (Sony)

ロング・バケイション 40周年エディション/大滝詠一

久々にお客様を迎えてのCRT&レココレ・イベント、あさってに迫ってまいりました。まだまだ警戒感の抜けない日々ではありますが、ちょっと広さに余裕のある会場で、ディスタンスを保ちつつ、みんなで同じ音楽を共有する、あの楽しみを取り戻しましょう!

再開にあたってのテーマは、かねてから予定されながら延び延びになっていた、われらが“ねやぽん”、祢屋康くんのレコード・コレクターズ誌・新編集長就任お祝いの会。ねやぽんの旧友、双六亭のニシイケタカシくんもギター抱えて駆けつけてくれます。二人の青春時代のサウンドトラック的な洋邦エイティーズ・ポップの雨アラレになる予感。

あと、祢屋編集長の下、今月出たレコード・コレクターズ4月号といえば、やっぱり第一特集の“ロンバケ”を忘れちゃいけません。第二特集のフィル・スペクター追悼も含めて、CRTでもかねてから取り上げ続けてきたこのあたり、久々のいい音でドカーンとかけられたらいいなとも思ってます。まだどうなるかわからないけれど、アナログ盤とかハイレゾ音源とか、そのあたり取りそろえつつ、とにかくポップに、キュートに、グルーヴィに、ラウドに、ぶちかましましょう。

PCでご覧の方は右のサイドバー、スマホの方は下のほうにCRTインフォメーションが掲載してありますので、そちらをご参照のうえ、こぞってご参加ください。お待ちしてます。ぼくも久々に音楽ファンのみなさんと音楽の楽しみを共有することができそうで、なんだかワクワクです。20時終演の目処で、今回は18時半開演。少々慌ただしい感じですが、そこはご容赦ください。緊急事態はとりあえず解除されたものの、まだまだなにかと不安な日々。でも、少しずつ少しずつ、気をつけながらかつての勘を取り戻していきたいものです。

それにしても、“ロンバケ”。以前も本ブログでちらっと書いた通り、今年の3月はこれまでになく各所で再評価の動きがふんだんに展開していて。ここで改めて取り上げるのもくどいよな、と、あまり騒がずにいたんですが。

先日、櫻坂46の小池美波さんと一緒にNHK-FM『サウンドクリエイターズ・ファイル』に出演させていただき、ナイアガラ初心者向けのライトな“ロンバケ”40周年特集を3回にわたってやらせてもらって。そこで“ロンバケ”関連曲をあれこれ聞きながら、やっぱり改めていろいろなことを思い出しました。どの曲も聞き直すたび、いまだに何らかの新発見があるというか。内包されている情報量の深さ/雄大さに相変わらずくらくらするというか…。

そういえば、大滝さんがまだお元気だったころ、んー、いつぐらいだろう、1990年代の終わりごろだったかな、大滝さんをゲストに迎えた番組収録後、一緒に放送局の廊下を歩きながらおしゃべりしていて。前日、家で「恋するカレン」を聞いているとき、コーラス・フレーズに関してちょっとした発見があったことを軽くお伝えしたら、大滝さんは、例のニヤニヤ笑いを軽く浮かべながら、ちょっとうれしそうに目を細めて、「んふふ、ようやくわかったか…」とおっしゃったことがあって。

この“ようやくわかったか”に大滝さんらしさが溢れていた。別に、その謎解きの答えをずっと隠していたとか、そういうわけじゃなく。かといって、あえて自分からこれ見よがしに種明かしすることもなく。しかし、アルバムの発売からその時点で20年近く、楽曲のすみずみに、周到かつステルス的にちりばめた謎解きの答えに聞き手それぞれが自力でたどり着くのを我慢強く待ってくれていた、みたいな。あの独特の感触。

それは別にぼくが個人的に大滝さんとお付き合いがあって、直接、そういうふとした発見をお伝えできたからとか、そういうことではなく。実際にお目にかかる前、まだひとりのリスナーとして大滝さんの音楽に接していたころにもラジオなどを通じて味わえた、あの感触。多くの大滝ファンが広く、同じように受け取ってきたに違いない“あの感じ”だ。

自分が音楽リスナーとして歳月を重ねながらスキルアップするに従って、大滝さんの音楽はさらに深みを増し、より多くのものを聞き手に伝えてくれるようになる。この感じ。それがオリジナル発売から40年を経た今なお、“ロンバケ”のすべての曲にはあって。相変わらず油断ならないな、と(笑)。

ちなみに今回、とてつもない“全部入り”ボックス(VOX)が出て。膨大なデモ音源、セッション音源、プロモ音源など、もうめくるめく未発表音源の蔵出し劇に、たぶんそれを手にした誰もが圧倒され、幸福感を満喫しているに違いない。ぼくもそう。で、そんな幸福な状況を踏まえた上で思ったのは。そこから大滝さんならではの直感と経験の下、的確に選び抜かれ、オリジナル・アルバムにあの曲順で並べられた収録曲10曲こそが、やっぱりとてつもなくすごいものだったんだなということ。

あの10曲の凄みのようなものが、逆説的に浮かび上がってきて。改めて思った。ああ、ぼくは大滝さんの絶対的な“選択”のセンスこそが好きだったんだな、と。それこそが“ナイアガラ流”だったんだな、と。

大滝さんはあらゆるものを揃えて、そこから最善のものをチョイスすることでおなじみだった。古い音源をリマスタリングする際、オリジナル・マスターを再生するためのアナログ・テープレコーダーを複数台揃えて、細かく聞き比べしながら再生機を決定するとか、ケーブルは何十本も購入してそこから使えるものを1本か2本だけチョイスするとか、高価なオーディオ機器を購入する際も、同じ機種を最低3種類比較してチェックするとか。車を買うときも同じ。コンピューターも。でもって、どの場合も納得いくものがなければ一からやり直し、選び直し、みたいな(笑)。いろいろ伝説的なエピソードが多かった。

そういう意味では、今回、様々なフォーマットで再発された40周年企画のうち、もしかしたらいちばん深い感動を伝えてくれたのが、オリジナル・メディアへの回帰という意味合いもこめて、メトロポリス・マスタリングのティム・ヤングによる2021年版最新カッティングが施された重量盤12インチ33回転ヴァイナルでの復刻だった気もする。

今回の1枚ものヴァイナル、完全生産限定盤ということで、例の豪華VOXともども、もう市場から姿を消しちゃっているみたいだけれど。選びに選び抜かれ、詰めに詰め抜かれたこの10曲のこの並びこそが大滝詠一なんだな、ナイアガラなんだな…的な。当たり前っちゃ当たり前の話なんだけど。とにかく、なんとなくそんなことを再確認した40年目の3月だったというぼんやりしたお話でした。だらだらすみません。素敵なアルバムだな、やっぱり。

ちなみに、これはどうでもいい話題なのですが。このアルバムの発売とともに、実はぼくのフリーランス人生も始まっているもんで。今年はぼくにとってふわふわした物書き生活40周年でもありましたとさ。いやいや…。

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