Disc Review

Dandelion Breeze / The Clements Brothers (Plow Man Records)

ダンデライオン・ブリーズ/ザ・クレメンツ・ブラザーズ

元ザ・ロンリー・ハートストリング・バンド。双子のジョージとチャールズのクレメンツ兄弟が“ザ・クレメンツ・ブラザーズ”名義でリリースしたファースト・アルバムが出た。現代のエヴァリー・ブラザーズというか、ルーヴィン・ブラザーズというか。兄弟ならではの絶妙に溶け合うヴォーカル・ハーモニーをフィーチャーした1作だ。

ラストに収められているニルヴァーナ「オール・アポロジーズ」のカヴァー以外は兄弟の自作曲。曲ごとに代わる代わるリード・ヴォーカルを分け合ったり、ユニゾンしたり、ハモったり。心地よくブリージーなコーラス・ハーモニーとアコースティック基調のサウンド。ということで、もう超ど直球、1970年代をストレートに想起させるマイルドな音世界を届けてくれる。イングランド・ダン&ジョン・フォード・コリーとか、シールズ&クロフツとか、ルブラン&カーとか、ポコとか、ファイアフォールとか、ブレッドとか、アート・ガーファンクルとか、なんだかいろんなものに思いを馳せました。

で、まあ、それを捉えて、なんだよ、新しさ皆無じゃねーか、意味ねーだろ…とか短絡的にディスる人もいるのかもしれないけれど。だからどうした的な?(笑) ニルヴァーナのカヴァーも含めて、最近こういうマイルドなデュエット・ハーモニーをフィーチャーしたニュー・リリースにあまり出会えなくなっていたもんで。ぼくのような古い世代のリスナーとしてはうれしい。大歓迎。

ヴォーカル以外、ジョージがギター、チャールズがウッド・ベース。プレイヤーとしてもかなりの腕前で。ふたりのコーラス・ハーモニーと演奏だけでもきっちり世界観を構築できている感じ。そこにマイク・ハーモン(ドラム)が加わったトリオが基本バンドらしい。さらに、ブルックス・ミルゲイト(キーボード)、ジェナ・モイニハン(フィドル)、アビゲイル・レイズマン(ヴァイオリン)らも的確にサポート。

ラス前の「アズ・ザ・クロウ・フライズ」って曲だけアイリッシュ風味とジャズ風味を交錯させたインストで。フィドルやブズーキなどのバックアップも受けつつ、兄弟がプレイヤーとしての腕前もがっつり披露している。「コール・イット・ア・ナイト」って曲では兄弟がフルーゲルホーンとかテナー・サックスもダビングしていたり。なかなかに多芸です。

まだきっちり世に認知されていないってことか、サブスクのストリーミングもあまりたくさんされていなくて。当然、フィジカルを扱っているところも少ない。リリース元のプロウ・マン・レコードではもちろんCDもLPも売ってはいるけれど、他ではまだ見かけていません。今日もまた応援買いかなぁ。

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