Disc Review

Who Cares? / Rex Orange County (Rex Orange County/Sony Music Entertainment)

フー・ケアズ?/レックス・オレンジ・カウンティ

Z世代、とか?

よくわかりませんが。とりあえず、そのZ世代とやらを代表するポップ・ソング・メイカーとか言われてます。英国の若きシンガー・ソングライター、レックス・オレンジ・カウンティことアレクサンダー・オコナー。2019年の『ポニー』以来、またまた久々、2年半ぶりの新作が届きましたー!

通算4作目、メジャー移籍後の2作目。今回はオランダに渡って、当地で同趣向の活動を展開している音楽仲間、ベニー・シングスとタッグを組んだ1枚だ。ベニー・シングスとは2017年のシングル「ラヴィング・イズ・イージー」以来の共演になる。“1970年代AMポップ系”とか言われるタイプの音楽をこよなく愛する2人のコラボだけに、もう全編そうした手触りが横溢。

基本路線はこれまで通り。スティーヴィー・ワンダー、エルトン・ジョン、ハリー・ニルソン、コリン・ブランストーン、ランディ・ニューマンといった往年のポップ・クリエイターたちの味と、ウィーザーやベック以降の一周ねじれたポップ感覚と、現在23歳という世代ならではのヒップホップ的編集感覚と…。そうしたもろもろが絡まり合いながら織りなすポップでキュートな独特の世界観。

ただ、今回はこれまでよりぐっと外向きになった手触りもあって。メロディのわかりやすさも増したし。室内楽っぽいストリングス・セクションのフィーチャー仕方とかもキャッチーだし。なんだかとても魅力的。ソングライターとして、サウンド・クリエイターとして、成熟ぶりを無理なく自然体でアピールしてくれている。

ストリングスによるイントロの旋律に、げ、小林明子か? と一瞬たじろいだ後、軽快な展開へと突入する先行シングル「キープ・イット・アップ」で幕開け。ニルソンとスティーヴィーが融合したみたいな「オープン・ザ・ウィンドウ」にはレックス・オレンジ・カウンティの存在を世に知らしめる上で大きな役割を果たしたタイラー・ザ・クリエイターが客演し、ゆるいヒップホップ感覚を提供。さらに、ストリングス・アンサンブルがバックアップするチェンバーっぽいパートとホットなビートを伴ったパートとがくるくる交錯する「ワース・イット」へと続いて。冒頭だけでいきなり惹きつけられる。

その後も、思いのほかストレートなラヴ・ソング「アメイジング」とか、メロウなメロとファンキーなビートがいい塩梅に交じり合う「ワン・イン・ア・ミリオン」とか、ロジャー・ニコルスとアンドリュー・ゴールドが合体したみたいな「7AM」とか、後期フリートウッド・マックみたいな「ザ・シェイド」とか、ちょいジャジーな「メイキング・タイム」とか、いい曲ぞろい。

いきなりやってきた春にぴったりの1枚かも。国内盤(Amazon / Tower)は3月30日に発売だそうです。そちらにはアコースティック・スタイルで新録した「メイキング・タイム」の別ヴァージョンがボーナス収録されるとか。

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