Disc Review

Release Me 2 / Barbra Streisand (Columbia/Legacy)

リリース・ミー 2/バーブラ・ストライサンド

バーブラ・ストライサンドのニュー・リリース。この8月アタマに米国で出て。ちょっと遅れて下旬、めでたく日本盤(Amazon / Tower)も登場。ということで、紹介しておきましょう。

ニュー・リリースとはいえ過去の音源集だ。でも、ただの過去音源じゃない。貴重な未発表音源集。2012年、バーブラ本人が半世紀に及ぶ活動歴を振り返りつつ1年がかりで選曲したという貴重な未発表音源集『リリース・ミー』が出て、ファンを大いに喜ばせたものだけれど。今回のアルバムは、タイトルからもわかる通り、その続編です。

1962年から2020年にかけて録音されながら、アルバムのコンセプトに合わないとか、タイミングが今いちとか、様々な理由からあえなくお蔵入りしてしまった音源10曲に改めてスポットを当てた興味津々な1枚。

もっとも古い録音は1962年、歌手として本格デビューを飾る前に録音された「ライト・アズ・レイン」だ。1963年のセカンド・アルバムにも収録されていたハロルド・アーレン作品だけれど、こちらがオリジナル・レコーディングだとのこと。

で、逆にもっとも新しいのが、もともと2014年のアルバム『パートナーズ』に収める予定で録音に挑んだものの、そのときはなぜかうまくいかなかったというウィリー・ネルソンとのデュエット曲「アイド・ウォント・イット・トゥ・ビー・ユー」だ。仕方なくそのときはブレイク・シェルトンとのデュエットで乗り切ったが、いろいろ心残りだったため、2020年になって改めてウィリー・ネルソンと再録音したヴァージョンが今回収められている。歌詞に“ファニー・ガール”とか“オールウェイズ・オン・マイ・マインド”とか、そういうフレーズも盛り込まれていたり…。

他にも、1969年のアルバム『ホワット・アバウト・トゥデイ?』のアウトテイク「ワン・デイ(ア・プレイヤー)」とか、1971年に放送されたバート・バカラックのTVスペシャルにゲスト出演する際、バカラックに書き下ろしてもらった「ビー・アウェア」とか、1973年にミシェル・ルグランとともに制作に着手しながら途上で躓いてしまった幻のアルバム『ライフ・サイクル・オヴ・ア・ウーマン』に収録予定だった「ワンス・ユーヴ・ビーン・イン・ラヴ」とか、コンサート・ツアーを久々に再会した1993年、ウォルター・アファナシエフに依頼して書き下ろしてもらった「スウィート・フォーギヴネス」とか、ビー・ジーズのバリー・ギヴとのデュエットで制作された2005年のアルバム『ギルティ・プレジャーズ』からのアウトテイク「イフ・オンリー・ユー・ワー・マイン」とか…。

中でも、個人的に特にぐっと来たのは、ランディ・ニューマン作の「リヴィング・ウィズアウト・ユー」だ。

バーブラは1971年、リチャード・ペリーのプロデュースの下、キャロル・キングやローラ・ニーロなど、当時“旬”だったシンガー・ソングライターの楽曲ばかりを取り上げたアルバム『ストーニィ・エンド』をリリースしていて。なんでも、バーブラはかなりいやいやこの企画に臨んだらしい。確かにファンの間でも賛否分かれる1枚だ。が、ぼくのような、当時シンガー・ソングライター系の音楽に深くハマっていたファンにとってはバーブラの歌声を初めて真っ向から受け止めるきっかけとなった思い出深い1枚でもある。

と、そんなアルバムに、バーブラはランディ・ニューマンの作品2曲、「レット・ミー・ゴー」と「アイル・ビー・ホーム」を収めていた。実際には4曲のニューマン作品が録音されており、残る2曲のうち「アイ・シンク・イッツ・ゴーイング・トゥ・レイン・トゥデイ」は2012年の『リリース・ミー』で発掘ずみ。で、最後の1曲「リヴィング・ウィズアウト・ユー」が今回こうして世にお披露目されることになったわけだ。うれしい。バーブラのヴォーカルは『ストーニィ・エンド』セッションで録音されたオリジナルのまま。ただし、アレンジだけは2020年にウォルター・アファナシエフによって一新されている。バーブラらしさもランディ・ニューマンらしさも壊さず盛り込まれた、素敵なアレンジだと思う。

1974年、デヴィッド・ボウイやボブ・マーリー、グレアム・ナッシュ、ビル・ウィザーズらの曲に挑んだアルバム『バタフライ』からのアウトテイク、キャロル・キング作の「ユー・ライト・アップ・マイ・ライフ」もよかった。アレンジもナチュラルで。泣けた。

1979年、“水”絡みの曲ばかり収めたコンセプト・アルバム『ウェット』のために録音されながらお蔵入りしていたポール・ウィリアムス&ケニー・アッシャー作品「レインボウ・コネクション」あたりも、シンガー・ソングライター・ファンとしては必殺の選曲だ。もちろん、1979年の映画『ザ・マペット・ムーヴィー』に使われたオリジナル・ヒット・ヴァージョンを歌っていたジム・ヘンソン扮するカエルのカーミットとのデュエット。

他にもローラ・ニーロ作の「ヒーズ・ア・ランナー」とか、レオン・ラッセルとのゴスペル・セッションとか、バーブラにはまだまだ未発表録音がたくさんあるはず。これからも同趣向の企画、どんどん続けてほしいです。

ちなみに、アメリカのディスカウント・ストア・チェーン“ターゲット”のためのスペシャル・エディションにはもう1曲、レイ、グッドマン&ブラウンの「ホエン・ザ・ラヴィン・ゴーズ・アウト・オヴ・ザ・ラヴィン」のカヴァーが追加されている。これはバーブラが1984年のアルバム『エモーション』のために録音した未発表音源。なかなかブツを日本から手に入れるのは面倒かもしれないけど、ご興味ある方はがんばって(笑)。“+1”とか書いてあるこれとか、もしかしたらそれかな。ずいぶんと高いけど…。YouTubeには誰かが(たぶん無断で)曲をアップしてくれてますが、消されちゃうかも。

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