Disc Review

Box Set / Creedence Clearwater Revival (Fantasy)

クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルBOXセット/クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル

えー、ヘタの横好きって感じで、ぼくはエレキ・インスト・バンド、ダディ&ザ・サーフビーツってのをやってるわけですが。ぼくは普段、リズム・ギターというか、セカンド・ギターというか、まあ、わがバンドが誇るリード・ギタリスト、ダディ高橋をサポートする立場に立っていて。もともと、このバンドはダディ高橋のかっこいいリード・ギターを聞きたいからってことで、ぼくが言い出しっぺになりつつ結成されたものだから、当然と言えば当然。

ところが、さすがは年末、普段はカタギの勤め人であるところのダディ高橋が、なんと次回のライヴに参加できないことになっちゃって(笑)。てことは、なにか? ワタクシ、ケニー萩原が全曲リード・ギターをつとめなきゃならないってことになってしまう、と。うひゃー、全編リード・ギターなんて20年ぶりくらいだぞ。

というわけで、久々の緊張感とともに次回ライヴに向けて心構えをするハギワラなのでありました。今回は、元ブルージーンズ、現SOSバンド、加山雄三さんのバッキングでもおなじみの宮澤謙さんがキーボードでお手伝いしてくださるので、ちょっとだけ気分も楽ですが。年末の忙しい時期だとは思いますが、みなさんひとつ、おヒマがありましたら忘年会気分でぼくの久々のリード・ギターを励ましに来てください(笑)。チャージなし、飲み代だけでOKな店ですので。左の告知バーをご参照くださいませ。

で、アルバム・ピック。60年代末、アメリカン・ロックンロールが大好きなぼくにとってエルヴィス・プレスリーとともに、唯一の救いのような存在だったCCRのボックス・セット。国内盤も出たタイミングでのピックです。

60年代末、世の大方のロック・ミュージシャン群がサイケだ、アシッドだ、ラヴだ、ピースだ…とうわ言のように唱えながら、ジャズやら現代音楽やらインド音楽やらとごり押しの融合をはかった“新しい”ロック熱に浮かれまくっていたころ。しかし、そんなんじゃいかん、と。そうした時代の空気の中で誰もがふと忘れかけていた米ルーツ音楽本来の太さとか、強さとか、シンプルな躍動感に着目し、自分たちの足元を見つめ直そうと主張した偉人が何組かいた。よく名前が挙がるところとしては、ザ・バーズ~フライング・ブリトー・ブラザーズでの活動でカントリー・ロックという新しいコンセプトをシーンにもたらしたグラム・パーソンズ、一時のハリウッド映画漬けの腑抜けた活動から脱し故郷メンフィスへでブルース、ゴスペル、R&B、カントリーなど自らのルーツ音楽へと立ち返った力強い歌声を再び繰り出してみせたエルヴィス・プレスリー、聖地ウッドストックでのプライヴェートな試行錯誤の中で、真の伝承音楽の持つ力を現代に甦らせようとしたボブ・ディラン&ザ・バンド…など。

それと同じ偉業を、よりヒットチャート寄りの位置で堂々とやってのけた連中がいた。そう。CCR。クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル。カリフォルニア出身ながら、ベイエリアから南部を幻視する形で、ブルース、R&B、スワンプ、カントリー、ロックンロールといった米ルーツ音楽の魅力を掘り起こしてみせた頼もしいやつらだ。そんな彼らの公式音源すべてを詰め込んだ6枚組ボックス・セットが出た。ライヴ盤2枚を含むオリジナル・アルバム全9枚の音源がすべて聞けるうえ、68年にCCRと改名して本格デビューを飾る前、別バンド名で活動していたころの音源も未発表もの含めてたっぷり。初期音源集『プリ・クリーデンス』も廃盤になって久しい今、これはうれしい。無骨にルーツを探求する感じの彼らも、実は最初英ビート・グループのパチものみたいな曲をやっていたり、ナゲッツ系の西海岸ガレージ・ロックに挑んでいたり。けど、そんなふうに時代にへつらった試行錯誤の果て、結局何ひとつうまくいかず、だったら好きな音楽をストレートにやったろうじゃねーかと無敵モードのCCR時代へ突入した感じがよく伝わってきて。胸が躍る。

彼らのピークは69年から70年にかけて。この時期にリリースされた『バイユー・カントリー』、『グリーン・リバー』、『ウィリー・アンド・ザ・プア・ボーイズ』、『コスモズ・ファクトリー』という4枚のオリジナル・アルバムは本当にすごい。1年ちょっとで4枚出した勢い自体すごいが、中身も強力。エルヴィス・プレスリー、チャック・ベリー、リトル・リチャード、ハンク・ウィリアムス、ボ・ディドリー、ジェームス・バートンといった偉大な先達からの影響を自分たちなりに昇華したシンプルでタイトなCCRロックンロールが堪能できる。さらにすごいのは、こうしたCCRの一連のロックンロールがヒットチャートでも大受けしたってこと。というわけで、その時期の鉄壁のCCRサウンドがずらり居並ぶディスク2から4の途中くらいを核に、前後に思いをはせるってのが本ボックスの正しい楽しみ方だろう。今のロック・シーンに必要なものはCCR的なるものなんじゃないか、と。この箱を聞きながらぼくはまじにそう思いましたよ。

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