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Disc Review

Beatin' The Heat / Dan Hicks & The Hot Licks (Surfdog)

ビーティン・ザ・ヒート/ダン・ヒックス&ザ・ホット・リックス

94年に出たアコースティック・ウォリアーズ名義の『シューティン・ザ・ストレイト』以来の新作だ。“ヒズ”が抜けたとはいえ、ホット・リックス名義の新作ということになると、73年の『ラスト・トレイン・トゥ・ヒックスヴィル』以来だし、まあ、そのあと78年に出たソロ名義の『イット・ハプンド・ワン・バイト』も実質的にはホット・リックスによるアルバムだったとして、それにしても20年以上のごぶさた。ファンにとってはたまらない、待望も待望、むしろ“まさか出るとは思わなかった”的1枚だろう。

もちろん、往年のホット・リックスのメンバーとはがらりと顔ぶれが替わっているものの、唯一、シド・ペイジがラインアップに復帰。ダンとシドに関しては様々な確執が噂されていたから、まさかもう一緒にやることはないだろうと思っていただけに、びっくり&感激。アコースティック・ウォリアーズでは聞かれなかった女性コーラス隊も新生メンバーで復活して。黄金のダン・ヒックス・サウンドが見事、ミレニアム・ヴァージョンで登場といった感じだ。

フォーク、ジャズ、カントリー、R&Bなど、様々な音楽性を刺激的に交錯させ、そこにダン・ヒックスならではの屈折したユーモアをまぶしたホット・リックス・ワールドは健在。ところどころでサンプリングを使ったりしつつ、充実した音作りを聞かせている。メンバーを一新したことで、コンセプトだけはそのまま、しっかり現在のシーンに通用する強いグルーヴを導入できているのがポイントか。

ブライアン・セッツァー、ベット・ミドラー、リッキー・リー・ジョーンズ、エルヴィス・コステロ、トム・ウェイツなど、曲ごとに迎えられたゲストも一筋縄ではいかない。トム・ウェイツがゲスト・ヴォーカルで参加しているお返しに、トムの初期の名曲「ザ・ピアノ・ハズ・ビーン・ドリンキン」をダンがカヴァーしていたり。リッキー・リーを迎えて往年の当たり曲「アイ・スケア・マイセルフ」を再演していたり。楽しい楽しい。

「ヒー・ドント・ケア」「アイヴ・ガット・ア・カポ・オン・マイ・ブレイン」のようなけっこうぶっとんだ初期レパートリーの復活曲や、アコースティック・ウォリアーズでお披露目ずみの「ヘル・アイド・ゴー」のような曲も含めて大半がダンのオリジナル。もちろん、カヴァーも入っていて、今回はそのトム・ウェイツ作品と、ビング・クロスビーでおなじみ「チャタヌガ・シューシャイン・ボーイ」、そしてウォシュボード・リズム・キングズの30年代曲「ハミン・トゥ・マイセルフ」というラインアンプだ。まあ、能書き抜きにごきげんですよ。国内盤も出るようなので、ぜひ。これがダンの最高傑作だとは思わないけれど、これをきっかけに素朴さと洗練が他の誰にも再現しえないバランスで渦巻く彼独自の世界に、より多くのリスナーが深く足を踏み入れてくれるような気がする。

リッキー・リーとのデュエットによるもう1曲「ドリフティン」もいいです。個人的には最高のお気に入り。

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