Disc Review

Songs for Judy / Neil Young (Shakey Pictures/Reprise)

SongsForJudy

ソングズ・フォー・ジュディ/ニール・ヤング

for Music Magazine (Feb, 2019)

普通に新作アルバムを発表するのと並行して、過去のオリジナル・アルバムのリマスター再発やら、とてつもないスケールのボックスセットのリリースやらでファンのフトコロを次々直撃し続けるニール・ヤング。過去のお蔵入り未発表ライヴ音源を発掘リリースする“アーカイヴズ・パフォーマンス・シリーズ”の最新作として、ブートレッグ・ファンの間では『ザ・バーンスタイン・テープス』としておなじみ、76年のアコースティック弾き語り音源集を公式リリースした。

76年というと、日本のファンとしては3月に実現した再結成クレイジー・ホースを従えての初来日公演がもっとも印象深い。6月から7月にかけては途中で終わってしまったスティルス=ヤング・バンドでのツアーもあった。その後、改めてクレイジー・ホースと全米各地を巡るツアー。1部がギター、バンジョー、あるいはピアノによるヤングの弾き語りパート。2部がクレイジー・ホースとのバンド・パート。今回出た『ソングズ・フォー・ジュディ』は、そのうちソロ・パートのほうの音源から選りすぐられた楽曲集だ。このツアーで楽器関係のローディを手伝っていたという若きカメラマン/テープ・アーカイヴァーのジョエル・バーンスタインが毎回PA卓からカセット・テープへダイレクトに記録していた音源を元に、やはり当時若き音楽ジャーナリストとしてツアーに同行していたキャメロン・クロウとともに厳選した22曲。ニューヨーク、ボストン、ヒューストン、シカゴ、ボルダー、マディソンなど全米各地でのパフォーマンスが収められているが、ジュディ・ガーランドに言及したアトランタでの有名なラリったMCが冒頭に収められていることから、このアルバム・タイトルが採用された。バッファロー・スプリングフィールド時代のものも含め、すでにおなじみだった初期代表曲も少なからず取り上げられているが、むしろ聞き物はこの年の8月に録音されながらも当初お蔵入りしていたアコースティック・アルバム『ヒッチハイカー』の収録曲をはじめとする当時の新曲群。既発曲であっても「男は女が必要」のイントロに、まだ音盤化前だった「ライク・ア・ハリケーン」のフレーズが顔を出す瞬間があったりして興味深い。この時期のヤングがいかに創造力に満ちていたか改めて思い知る。ピアノで弾き語られる「ノー・ワン・シーム・トゥ・ノウ」は今回がオフィシャル初リリースだ。

ちなみにこれが“アーカイヴズ・パフォーマンス・シリーズ”としては10作目のリリース。発売は順不同ながら一応年代順に通し番号が振られていて、本作はVOL7だ。とりあえずVOL12まで…って計画になっているようだけれど、でも、ご存知の通りVOL0とかVOL2・5とか、そんなのが突然出てきたりもするので最終的にどこまでいくのかわかりません。長年苦楽をともにした奥様ペギーとの間に最近起こった突然の離別劇にはファンの誰もが納得できていなかったうえ、そのペギーさんがつい先日癌で他界してしまったこともあり、なんとなく男を下げ続けている感なきにしもあらずのヤングさんですが。音楽家としては、今も昔も、どうにも抗いがたい魔力を持っていることを思い知らせてくれる貴重な1枚だ。

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