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Disc Review

Amazing Grace: The Complete Recordings / Aretha Franklin (Warner Music Japan)

至上の愛 ~チャーチ・コンサート~ 完全版/アレサ・フランクリン

ライヴハウスとか、劇場とか、演芸場とか、映画館とか、営業どうなるのかなぁ…。

未曾有の闘いの日々ってこともあって、いろんな立場の人がいろんなところでそれぞれ手探りでいろんなことを決めるもんだから、なんだかややこしいことになってきちゃって。誰ひとり確信が持てないまま、この興業はやっていいとか、この施設は閉鎖しろとか、ぐしゃぐしゃ。

1年もこんな日々を続けているのに、何ひとつ打開策すらない感じ。覚えるのは無力感ばかり。いやになる。なっちゃいけないと思いつつも、なる。

ぼくにとっていちばん気になるのはやはりライヴハウスとかコンサートホールとかで。でも、今、映画館も気になる。公開延期になっちゃったデヴィッド・バーンの『アメリカン・ユートピア』のこともあるけれど、それよりも何よりも、こっち。アレサ・フランクリンの『アメイジング・グレイス』。いちばん近いところで5月28日から公開スタート予定だけれど。これをちゃんと映画館で見られるのかどうか…。

いちおう東京での上映館、Bunkamura ル・シネマのホームページを見ると、14日から営業再開ってことになっている。けど、緊急事態宣言下だけに、21日以降のスケジュールは未定だとも。んー。

まあ、実際のところ、もう輸入盤のブルーレイとか買って、作品自体は自宅で存分に楽しみ尽くしているわけですが。でも、映画館のでかいスクリーンで、自宅では出せないくらいの大音量で、あの必殺の教会コンサートの映像を味わうことができたら、まじ最高だろうから。やっぱり映画館で楽しみたい。

コンサートの配信も気軽で楽しいけど、やっぱり同じ空間で同じ空気を震わせながら音を共有する真のライヴ・コンサートの楽しさには代えられない、あれと同様。だから、人それぞれだろうし、なかなかわかってもらえないことかもしれないけれど、誤解を恐れずに言っちゃえば、少なくともぼくにとって、今、『アメイジング・グレイス』を映画館で見られるかどうかのほうが、東京でオリンピックやれるかどうか以上に重要だったりするのでした。詳しい上映スケジュールなどは公式サイトへ。

ちなみに、本ブログではアレサ・フランクリンのことを過去3回ほど取り上げていて。


Amazing Grace: The Complete Recordings (4LP) / Aretha Franklin (Rhino/Atlantic) 2019.03.26

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Amazing Grace: The Complete Recordings (2CD) / Aretha Franklin (Rhino/Atlantic) 1999.08.06

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そのうち、2回がこの『アメイジング・グレイス』という映画が撮影された1972年1月13日、14日の教会コンサートの模様を収めたライヴ盤の話。よほど好きなんだなと言われそうだけど。そうです。よほど好きなんです(笑)。仕方ない。この上なく最高のライヴなのだから。

このコンサートの音が世に出たのはコンサートが催された半年後、1972年半ば、アナログLP2枚組のライヴ・アルバムとして。ぼく個人的には、『至上の愛〜チャーチ・コンサート〜』という邦題が付けられた国内盤を、ずいぶんと遅れて、確か1974年とか75年とかになってから手に入れて。でもって、大いにショックを受けたのでした。

以前のエントリーにも書いた通り、米ロサンゼルスのワッツ地区にあるニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会で行なわれたゴスペル・コンサートの模様。2日間の録音から出来のいいパフォーマンスをセレクトして、曲によっては後日スタジオでオーヴァーダビングなどもほどこしたうえで、曲順も大きく入れ替えながらLP2枚に凝縮した盤で。

大編成の聖歌隊とともに、コーネル・デュプリー、バーナード・パーディ、チャック・レイニーらがバックアップ。ジェイムズ・クリーヴランド牧師が説教に、ピアノに活躍。もちろんアレサも曲によってピアノを演奏。牧師が説教するときのように説教台を前にして教会に集まったオーディエンスに溢れんばかりのゴスペル愛をぶちまけていく。まさに神々しい歌声が全編を貫いていた。

表題曲「至上の愛(Amazing Grace)」で、ピアノとハミングとコーラスによる思わせぶりなイントロを経て、ようやく“Amazing Grace…”という冒頭の歌詞のアタマ、アレサが“ア〜…”と歌い出す瞬間の最初のロング・トーンだけでもう感動的。“Amazing”の“m”にまでまだ至らない段階で、何の曲だか感知した観客がすでに盛り上がり始める空気感にも、いまだぞくぞくする。

生粋のゴスペル・ナンバーの他、キャロル・キング作の「きみの友だち(You've Got a Friend)」やブロードウェイ・ミュージカル『回転木馬』のためにオスカー・ハマースタイン二世とリチャート・ロジャースが共作した「ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン」、そしてマーヴィン・ゲイの「ホウリー・ホリー」なども含まれているが、それらもすべて見事なゴスペル・ナンバーへと昇華している。ソウル・ミュージックというものがどんな土壌の上に成り立っているのか、その一端を力強く垣間見せてくれるアルバムとして、本当にかけがえのないものだった。

その傑作ライヴ盤のもとになった2日間の録音を未編集の形ですべてぶちまけたのが1999年に米ライノ・レコードから出たCD2枚組『Amazing Grace: The Complete Recordings』で。これを本ブログで紹介したのが、前述、1999年のこのエントリー。それをアナログLP化したものを紹介したのが2019年のこのエントリー。でもって、今回、映画『アメイジング・グレイス』の日本初公開に合わせ、そのCD版のほうを改めて昨日、5月12日に日本独自に再発したのが、本エントリーで紹介する『至上の愛 ~チャーチ・コンサート~ 完全版』なのでありました。

同じ音源を3度もブログで紹介して、まことにキョーシュクですが(笑)。映画への予習として、未体験の方はこの機会にぜひ。

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