Disc Review

Eagles (Mobile Fidelity Hybrid SACD) / Eagles (Mobile Fidelity Sound Lab)

イーグルス・ファースト(モービル・フィデリティ・ハイブリッドSACD)/イーグルス

以前、雑誌とかにも書いたことなのだけれど。今から15年以上前、2005年に休暇で出かけたハワイでたまたまイーグルスのコンサートを見た。ずばり“ウェストコースト・ツアー”と題された、アメリカ西海岸各地を巡るツアーの締めくくりとして、ホノルルのNBCアリーナで行われた3日連続公演のうちの一夜だった。

イーグルスはその前年、“フェアウェル・ツアー”と銘打って世界を回っていて。日本にもやってきた。ツアー・タイトルからしてこれが最後の再結成ツアーなのだろうと誰もが思ったはず。が、何のことはない。こうして翌年、普通に米国ツアーを敢行。しかもツアー・タイトルに添えられた副題は“フェアウェル2”。“2”って何だよ(笑)。確かに日本公演でも、ラスト、観客に向かって「また会いましょう!」とか言ってたし…。しょうがねぇな、と苦笑しつつも、しっかりチケットをゲットして大いに盛り上がったものだ。

まだグレン・フライも健在だったころ。ドン・フェルダーは離脱していて、スチュアート・スミスが代役をつとめる編成での演奏で。披露された楽曲は前年の日本公演とほぼ同じだった。が、曲順が違った。前年は「ザ・ロング・ラン」で開幕していたけれど、さすが“ウェストコースト・ツアー”と銘打っただけのことはある。ノッケいきなり「テイク・イット・イージー」での開幕だった。

1976年の初来日公演のときと同じ。あのときもドラムのドン・ヘンリーだけ背後に、残る4人がずらりステージ前方に横一列に並び、この曲一発で日本の観客をノックアウトしてくれた。全員がマイクに向かって一斉にサビのコーラスに突入した瞬間の胸の高鳴りは今も忘れない。あれから30年ほど経たホノルルの夜でも、ぼくは当時とまったく同じ興奮を覚えた。

曲は続いて「ウィッチー・ウーマン」、そして「ピースフル・イージー・フィーリング」へ。ファースト・アルバムから3連発。胸のすく思いだった。とともに、やっぱイーグルスはこれだよな、と。今さらながら確信したのだった。

要するにイーグルスは最初の2枚だってこと。もうちょい心を広くすれば、バーニー・レドンが脱退するまでの4枚…あ、いや、やっぱり2枚目までだな。まだグレン・フライ、ドン・ヘンリー、バーニー・レドン、ランディ・マイズナーの4人編成だったころ制作された最初の2枚。全米を代表するスーパー・バンドとしてのイーグルスではなく、ロサンゼルスを本拠とするローカル・カントリー・ロック・バンドとしてのイーグルスだ。これこそが永遠なのだ。少なくとも、彼らのデビューをリアルタイムに体験したぼくのようなおっさんファンにとっては。

と、そんな、おっさんファンにとっての永遠を象徴する1972年のファースト・アルバムを、高音質ディスクでおなじみ、モービル・フィデリティ・サウンド・ラボ社がハイブリッドSACD化してくれましたよー。

実は、これ、おなじみ180グラム重量盤・45回転超高音質LP2枚組“Mobile Fidelity ULTRADISC ONE-STEP”仕様ってやつでも全世界7500セット限定リリースされたのだけれど。値段がSACDの4〜5倍なもんで。どうしようかなぁ…と迷っているうちに、世界中のおっさんファンが殺到したか、一気にソールドアウト。なもんで、ぼくはこっちのSACD版でいい音を満喫します。

もちろんオリジナル・アナログ・マスターテープからのリマスタリング。まあ、基本的にはオリジナル・アナログ盤に忠実な仕上がり。かなりリッチに、ダイナミックに、精密になった感もあるとはいえ、オリジナルLP持っていてそれをいい環境で再生できる人には必要ないっちゃ必要ないし。CDとしてもこれまで、プラジャケ、紙ジャケ取り混ぜて何度もそれなりのリマスターで再発されてきたし。

でも、Mo-Fiが出してくれると、なんか、こう、ありがたみが、ね(笑)。

今振り返ってみると、イーグルスというのは1970年代初頭の米西海岸音楽の要素をかなりテクニカルなやり口で、戦略的にまとめあげたバンドだった気がする。ビーチ・ボーイズからアソシエーションやママス&パパスなどを経てイーグルスへと到達する西海岸ハーモニー・ポップの流れを意識しながら、彼らのデビュー当時の音源に接し直してみると面白い。

ビーチ・ボーイズはサーフィン/ホットロッド。アソシエーションやママス&パパスはフォーク・ロック。時代時代の最先端の音楽スタイルに敏感に対応しながら、そこに不変のコーラス・ハーモニーが舞う、という構造が西海岸ハーモニー・ポップの伝統だ。そんな流れのもと、イーグルスがデビューにあたって選び取ったのは、70年代初頭、もっともいきいきと存在感を放っていたカントリー・ロックという最新音楽フォーマットだった。それをシーンに定着させた名盤としての本作。それだけでもやはり重要な1枚だし。

歌詞もそう。漠然とした喪失感のもと、失われた何かを求めてさまよう…と、そんなイメージ。これはその後のイーグルスも含めて1970年代のアメリカン・ロック全般に漂う感触だったりするのだけれど。こうしたイメージを決定づけたのが本ファースト・アルバム、特に束縛や侮蔑といった世に蔓延する重い苦悩を振り払うためにハイウェイを疾走し、気楽にいこう、思い詰めるなと自らに必死に言い聞かせるジャクソン・ブラウン作のデビュー・シングル「テイク・イット・イージー」だった。

そんなアルバムの魅力を、今の耳で、いい音で、改めて味わいたいものです。セカンド・アルバム『ならず者(Desperado)』も同様に出るらしく。そっちもゲットしなくては。日本の各オンラインCDショップとかでは発売日も値段もむちゃくちゃ混乱しているけど、いろいろ慎重にチェックしてみてください。Mo-FiのWEBショップだと本作は現在品切れ中。『ならず者』はプレオーダー中。45回転2枚組ものは両作ともソールドアウト。いやはや…。

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