Disc Review

Forever Changing: The Golden Age Of Elektra Records (1963-1973) / Various Artists (Rhino)

フォーエヴァー・チェンジング〜ザ・ゴールデン・エイジ・オヴ・エレクトラ・レコーズ(1963〜1973)

アトランティックの創始者、アーメット・アーティガンの歩みを綴ったノンフィクション書『ミュージック・マン』の中に、印象的なシーンがある。1967年ごろ、アトランティック社でエレベーターを待ちながら、アーティガンが当時まだ若手ばりばりのエンジニア/プロデューサーだったトム・ダウドに向かって、「アトランティックも変わるね…」とつぶやくシーン。

泣けるなぁ。ご存じの通り、アトランティックは、もともとブルースやR&Bなど黒人音楽を専門とする強い個性を持ったマイナー・レーベルとしてスタートしたのだけれど。やがてより大きな企業へと成長していくため時流を意識した白人アーティストの獲得に着手。その転換期がまさに67年だったわけだ。

子会社のアトコには60年代初頭からボビー・ダーリン、ニノ・テンポ&エイプリル・スティーヴンス、ソニー&シェールといった白人アーティストも在籍していたものの、親レーベルであるアトランティックもこの時期を境に白人アーティストと次々契約を開始。ラスカルズ、バッファロー・スプリングフィールド、ヴァニラ・ファッジらを皮切りに、やがてレッド・ツェッペリン、J・ガイルズ・バンド、ローリング・ストーンズ、イエス……と。こうしたアーティストの大活躍によって、アトランティックは幅広く強大な総合メジャー・レーベルへと移行し、栄華を築くことになるわけだけれど。

まあ、どんなレーベルも、多かれ少なかれ同じような道をたどるものだ。アサイラムもそうだし、ヴァージンもそうだし、サイアーもそうだし、モータウンもそうだし、A&Mもそうだし。業績右肩上がり以外の目標がありえない“会社”という形態でレコード・レーベルが存在している限り、みんなそんなふうに、何でもありの総合レーベルを目指すしかないのだろう。

でも、音楽ファンとしては、このありがちな変化、つまんないんだよね。淋しい。総合レーベルになる直前ぐらいまで、まだ「このレーベルが出す盤なら間違いないよ」と、いわゆるレーベル買いができるころまでが“おいしい”時期で。そのあとは一気に興味がなくなるというか。どうでもよくなるというか。

エレクトラってレーベルもそんな感じ。1950年にジャック・ホルツマンが設立して。60年代にかけて、当時のモダン・フォーク・リヴァイヴァルの気運をすくい上げながら独自のレーベル・カラーを確立して。ジュディ・コリンズ、トム・パクストン、フレッド・ニール、フィル・オクスなどのレコードを世に送り出して。やがて60年代半ば以降はドアーズとかラヴのような、どこか文学的な香りもたたえたロックにも触手を伸ばして時代の空気感をキャッチ。もちろんティム・バックリーとかデイヴィッド・ブルーとかステーヴ・ヌーナンとか、設立以来のカラーを引き継ぐ個性も紹介し続けて。シンガー・ソングライターの時代がやってくると、カーリー・サイモン、ハリー・チェイピン、ブレッドなどをデビューさせて。同時にストゥージズやMC5のような、のちのパンク~グランジへと連なるデトロイト・ロックも紹介して……。

レーベル・カラーがくっきりしていたのは、結局この辺までだった。ジャック・ホルツマン自身、73年にレーベルから離脱。当時、親会社になっていたワーナーがアサイラムと合体させてエレクトラ・アサイラムへ。デイヴィッド・ゲフィンがトップに就任して。以降は総合レーベルへの道、まっしぐらだ。でもって、04年、ワーナーの経営が変わったのを機にレーベルも閉鎖、と。

そんなエレクトラがもっともエレクトラらしかった時期、63年から73年までの歩みを米ライノ・レコードが編纂したのがこのボックスセットだ。メインのCD4枚に代表的な音源を満載。エクストラCD1枚に裏面史とも言うべき、ちょっとヤバめな音源を詰め込んで。さらにCD-ROMにディスコグラフィのPDF。おまけとして、ジュディ・コリンズやラヴ、ドアーズ、ブレッドらのLPジャケットのレプリカ(ぺらぺらの1枚紙だけど)、アーティスト写真、ポストカード、ピンバッヂ、超豪華仕様のブックレット。音だけの安価な箱も出ているけれど、どうせ入手するなら、やっぱこっちのデラックス・セットのほうが楽しいかなぁ。米盤はライノ・ハンドメイドでの通販みたいだけど、ヨーロッパ盤は普通に売ってます。アマゾンで普通に買えます。ただ、ハンドメイド盤だと通し番号入りのカードみたいなのが入ってます。

本編とも言うべきCDの1枚目はジュディ・コリンズでスタート。で、4枚目は、当時、エレクトラがアメリカでの配給を手がけたクイーンで終わる。クイーンまで売るんだから、もうレーベル・カラーも何もあったもんじゃないってことっすね。あ、クイーンが悪いって言ってるわけじゃないっすよ。ジュディ・コリンズを振り出しに、ドアーズとか、ストゥージズとか、その辺まではなんとか、こじつけも含めて脈絡が感じられるけど、クイーンとなるとね。どうしたってたどり着けない、と。そういうことです。

デニス・リンドの「バーニング・ラヴ」自演ヴァージョンがCD化されたのが個人的にはうれしい。これまではカーネーションの直枝さんに焼いてもらったCD-Rで楽しんでました。今回は1曲のみだけど、ライノ・ハンドメイドあたりで復刻、どうすかね? まあ、直枝さん謹製のCD-Rがあるから、ぼくはいいんだけど(笑)。ほら、ライノならボーナス音源、いろいろ見つけてくれそうだし……。

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