Disc Review

The Complete Budokan 1978 / Bob Dylan (Columbia/Legacy)

コンプリート武道館/ボブ・ディラン

いよいよ来週月曜日に迫ってまいりましたCRT“ボブ・ディラン『武道館』Night”。おかげさまで予約で満席ということになりました。2階席へのご案内にはなりますが、もちろん当日券もあります。予約キャンセルが出る場合もあります。ということで、ご興味ある方、そのあたりお店のほうに電話でお問い合わせください。ご予約キャンセルされる場合も、ぜひお店に電話でご一報お願いします。狭いお店ゆえ、ひとりでも多くの方にご来場いただけるようご協力よろしくお願いします。

ということで、そのCRT“ボブ・ディラン『武道館』Night”開催のきっかけでもある最新リリース、強烈なCD4枚組/LP8枚組ボックス『コンプリート武道館』の国内盤がいよいよ本日先行発売とあいなりましたー!

ご存じの通り、ディランは1978年2月から3月にかけて初来日ツアーを行なっていて。2月20日、東京・九段の日本武道館での初日も含め東京で8回、大阪で3回、コンサートを披露。あのとき、ぼくたち日本の音楽ファンはついに伝説のスーパースターのライヴを生で体験することができたのでした。ちなみにこの時期、ぼくは九段下に通い詰め。2月22日、ディラン公演の合間を縫うように武道館で行なわれたエレクトリック・ライト・オーケストラを見て、24日にレオン・レッドボーン(オープニング・アクトは細野晴臣!)をすぐ近所の九段会館で見て、その後、3月2日に再び武道館へ。ディランの日本ツアー9夜目を見たのでありました。めくるめく日々だった。

そんなディランのツアー、東京での4回目と5回目にあたる2月28日と3月1日の公演で収録された音源を使って再構築されたのが同年11月発売の2枚組ライヴ『武道館(Bob Dylan At Budokan)』。当初は日本のみでの“置き土産”的リリースだったけれど、海外のファンからの強い要望に応え翌1979年に世界発売も実現している。その素材となった2夜のライヴ音源を文字通りコンプリートで、すべて盛り込んだ全部乗せ豪華箱が『コンプリート武道館』だ。その内容については『レコード・コレクターズ』誌の最新12月号で6ページにわたり詳細に紹介させていただいたので、ぜひそちらをご参照いただきたいのだけれど。

4CD版を元にざっくり全体の構成のおさらいだけしておくと、CD1に2月28日のファースト・セット、CD2にセカンド・セット、CD3に3月1日のファースト・セット、CD4にセカンド・セット、それぞれを当夜の演奏順のまままるごと収録。なので、もちろん両日で曲のダブリはあるけれど、トラック数としてはメンバー紹介パートも含めて全58トラック。1978年版『武道館』が22曲入りだから今回36トラックが初出音源ということになる。

それだけに今回最大の興味は、当然1978年版に収録されなかった音源がどんなだったかという一点についつい向かいがちになるわけだが。いやいや、油断は大敵。今回は当時24チャンのマルチ・レコーダー2台を駆使して収録したオリジナル・アナログ・マルチ・テープをデジタルにトランスファーしたうえでの最新トラックダウンおよびマスタリングがほどこされており、未発表音源だけでなく既発音源に関してもリミックスで音質が大いに向上している。聞き慣れたはずのライヴ・ヴァージョンがまったく違う印象を届けてくれたりもする。やばい。

このディランの1978年ツアーはロブ・ストーナー(ベース)、スティーヴン・ソールズ(ギター)、デヴィッド・マンスフィールド(マンドリン、フィドルなど)らローリング・サンダー・レヴューから居残り組に、イアン・ウォーレス(ドラム)、ビリー・クロス(ギター)、ミス・ボビー・ホール(パーカッション)、アラン・パスクァ(キーボード)、そしてなんとスティーヴ・ダグラス(サックス)、さらにヘレナ・スプリングスをはじめとする3人の女性コーラスも加わった総勢11人編成のラージ・アンサンブルがバックアップしていた。

それまで聞き込んできた『偉大なる復活(Before the Flood )』、『激しい雨(Hard Rain)』のようなライヴ盤が届けてくれたハード・エッジな音とはがらり印象の違う、どこかアダルトな味すら漂うかっちりしたアレンジに、当時、正直ちょっと面食らったものだ。加えて、来日前には女性週刊誌やスポーツ紙まで巻き込みつつ、ディランが離婚や映画の失敗で金欠状態にある…的な雑音もいっぱい渦巻いていたし。

そんなもろもろのせいで、ぼくはこのときの初来日ツアーと1978年版『武道館』に対してあまり素直に接してこれなかった。初めて生で動くディランを見ることができたというこの上ない高揚感はもちろん大いに感じていたけれど、同時になんだか過剰にお金儲け的ショービズ感も強く、あれこれ戸惑ってしまっていた。

ところが、今回のリミックスや未発表音源群が様々な新発見をもたらしてくれた。思いきり気ままに、ラフに、浮遊しながら歌うディランの奔放なグルーヴに動じることなく、きっちり食いついていくバンドの手腕を再確認したり。その一方で、けっこう緻密に編まれた楽曲の新アレンジに則りながら、ちゃんとキメのフレーズを外さずパフォームするディランの素直さに頬が緩んだり。なんだか楽しい。『武道館』に対するイメージもちょっとだけ変わりました。

どんなアレンジがほどこされようと揺るがぬディランの楽曲そのものの底力というか、太さというか、キャッチーさというか、ポップさというか、そういったものも改めて確認できたかも。ありがたい限りです。

当時のチケット、ツアー・パンフ、ポスター、チラシなどメモラビリアのレプリカも同梱。60ページに及ぶ未発表写真満載のカラー・ブックレットも充実。SNSなどなかった当時、ぼくは『ニューミュージック・マガジン』誌に掲載された小倉エージさんによる全公演レポートを何度も何度も読み返したものだけれど、その再録をはじめ、天辰保文さんらによる書き下ろし解説、日本側の関係者へのインタビューなども含む日本版ブックレットもうれしい。今のところ出ているのは国内盤のみ。ストリーミング開始とか輸入盤発売は今週末みたいです。

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