Disc Review

Africa Speaks / Santana (Concord)

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アフリカ・スピークス/サンタナ

以前も本ホームページでお知らせしましたが。現在、鋭意全国ツアー中の鈴木雅之の新作アルバム『Funky Flag』で1曲プロデュース。いとうせいこうとフラッシュ金子に協力してもらって「どんすた」って曲を完成させた。目指したのはラテン・ロック! サンタナ! マーチンのファンキーな歌声と強烈なラテン・グルーヴとが合体したら、そうとう面白そうなことになるなと思った。ちょうどサンタナとアイズレー・ブラザーズの共演盤なんてやつもあったことだし。そういうのにも刺激されて、実際にやってみたら、当たり! そうとう面白かった(笑)。

マーチンもぼくも、今、60代に突入した世代で。最近の若い人たちにとってどうなのかは全然わからないけれど、われわれの世代にとって、ラテンとかラテン・ロックというのは、もうなんだか抗えないというか。日本でラテンやハワイアンが最先端の洋楽として機能していた時代のムードが、小学生のころまで、まだちょこっと歌謡界とかにも残っていて。中学生になると“魂のギタリスト”カルロス・サンタナ率いるバンド、サンタナがデビューして、ラテン・ロックという新たなジャンル融合音楽の人気が爆発して…。

そういうわけで、ラテン・ロック。ラテンの情熱とロックのパワーとの強引な合体。世代的にも大好きなのだ。サンタナの他にも、カルロス・サンタナの弟ホルヘが率いていたマロをはじめ、エル・チカーノ、アステカ、ハーレム・リヴァー・ドライヴ、サポ、マンドリルなど多くのラテン・ロック・バンドが当時人気を博したものだ。アニマルズを解散後、エリック・バードンが結成したウォーもラテン・パーカッションを大胆に導入し、独自のラテン・ロック・グルーヴを売り物にしていた時期があった。

けど、やっぱりサンタナには誰もかなわなかった。無敵だった。他のラテン・ロック・バンドがどちらかというとラテン・フュージョン寄りのアプローチを仕掛けることが多い中、サンタナは違った。えぐい。粘っこい。だから、いい。カルロス・サンタナのリード・ギターにしても、ラテンっぽい軽快さよりも、扇情的にギュイ~ンと粘る印象のほうが強かった。たぶん、カルロス・サンタナがもともとブルースの人だからだろう。

1947年にメキシコで生まれて、62年にアメリカに移住。サンフランシスコの“フィルモア”でポール・バタフィールド・ブルース・バンドのステージを見て刺激を受け、自らも66年、サンタナ・ブルース・バンドを結成。ブルース・ロック的な音楽に挑み始めた。が、その後、フィルモアのオーナーだったビル・グレアムから、こういうブルース・ロック・バンドは他にもいる、もっと自分の色を出せ、と助言されたのをきっかけに、自らのルーツであるラテンに対して後追い的なアプローチを開始。

で、69年、バンド名をシンプルに“サンタナ”と改め、本格デビュー。ラテンにロックやブルースを導入する形でのラテン・ロックではなく、ブルース・ロックにラテンの要素を持ち込む形でのラテン・ロックだったのが功を奏したか、躍動的なラテン・ビートをバックに思う存分、自らのブルース・フィーリングを炸裂させるカルロス・サンタナのギターが評判を呼び、一気にスターの座を手に入れた。ちょうど半世紀前に行なわれたウッドストック・フェスでの圧倒的なパフォーマンスも忘れられない。

以降の活躍ぶりはおなじみだろう。73年ごろからはスリ・チンモイやジョン・マクラフリンらと親交を深め、宗教色、ジャズ色を強めつつ、一般のロック・ファンから徐々に遊離していってしまったように見えた時期もあったが、基本的には豪快かつ扇情的なラテン・ロック的持ち味を失うことなく、世紀を超えた今なお現役ばりばりで活躍中だ。今回リリースされた新作では、アルバム・タイトル通り、なんとついに本格的にアフリカのグルーヴにアプローチしてみせた。70代を迎えて、ますますお盛んです。

去年、シェウン・クティ&エジプト80のアルバムにゲスト参加していたのが予兆だったのか。まあ、もともとラテンとアフリカものは根っこが同じというか。考えてみれば、ウッドストック出演時にも圧倒的な勢いで披露していた「ジンゴ」とか。初期サンタナの代表曲のひとつだけど。これだって、もともとはナイジェリア出身のパーカッショニスト、ババトゥンデ・オラトゥンジのレパートリーをカヴァーしたものだったわけだし。

ということで、リック・ルービンのプロデュースの下、マヨルカ出身のスペイン人シンガー・ソングライター、ブイカをヴォーカルに迎え、カルロス・サンタナはたぶん彼にとって積年のものであったはずのアフリカへの熱い思いを炸裂させた。ほんの10日間ほどの間に全部で49曲をほぼ一発録りしてしまったというからすごい。そこからルービンが11曲を厳選したのが本作『アフリカ・スピークス』だ。アルバム冒頭を飾る表題曲には「ジンゴ」っぽいリフが顔を覗かせたりもするけれど、これ、たぶん意図的だと思う。

曲ごとに南米っぽかったり、スペインっぽかったり、カリブっぽかったり、多彩なビート感を取り込みながら、それらの背景には必ずアフリカが存在するんだというメッセージをこめて、しかし結局はカルロス・サンタナが誰の制止も受けず魂のラテン・ブルース・ギターを弾きまくっている、みたいな…。そんな本作の、熱さと艶めかしさが交錯する音世界が、学究的にアフリカ音楽に向き合っているような方の耳にどう届くのかは、ぼくはそっち方面に関してまったく門外漢なのでわからないのだけれど。

ただ、きっちり伝統を受け継いでいるにせよ、まったく伝統無視の狼藉を働いているにせよ、強烈な2拍3連渦巻くパーカッション群に煽られながら暴れまくる本作でのサンタナは、何はともあれロックとしてむちゃくちゃかっこいいと思う。シングル・ヒット向きのトラックはない気がするものの、かっこいいラテン・ブルースじいちゃんギタリストがワウ踏みまくりながらその健在ぶりを高らかに宣言する1枚という感じだ。うれしいことです。

あと、ブイカさんがいいわ。まじ。

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