アナザー・イヤー/テイクン・バイ・ツリーズ
スウェーデンのポップ・アクトは、ほんと油断ならないというか。ツボを押さえた作品をここぞのタイミングでさらっとぶちこんでくるから。見逃せない。
この人、ヴィクトリア・バーグスマンもそう。スウェーデンのシンガー・ソングライター。元ザ・コンクリーツのメイン・ヴォーカルだったこととか、ピーター、ビョルン&ジョンの「ヤング・フォークス」で歌ったりしていたことでもおなじみ。そんな彼女のソロ・プロジェクト、テイクン・バイ・ツリーズ名義の新作EPが出ました。ひとつ前のアルバム『イエロー・トゥ・ブルー』が出たのは2018年だから、4年ぶりのリリースということになる。
タイトルとか、ジャケット写真のポーズとかでわかっちゃうだろうけど。そうです。ゾンビーズのフロント・マンであるコリン・ブランストーンへのオマージュ盤。5曲入りEPで。コリンさんがソロ名義で1971年にリリースした傑作アルバム『一年間(One Year)』から「構わないと言って(Say You Don't Mind)」「彼女はみんなの愛し方が好き(She Loves The Way They Love Her)」「さよならキャロライン(Caroline Goodbye)」の3曲、1972年に出た次作『エニスモア』から「タイム・イズ・ランニング・アウト」「アイ・ドント・ビリーヴ・イン・ミラクル」の2曲をピックアップしてカヴァーしている。
アナログEPを予約しそびれて、あわてて頼んではみたもののお取り寄せ状態。なもんで現状ブツがなくサブスク頼みゆえ、クレジットを確認できていないのだけれど。なんでも5作目のフル・アルバムを制作中に思いついて、この50年前の作品群へのトリビュートをすることにしたのだとか。現在、米ロスアンゼルスを本拠にしているヴィクトリアさんながら、今回は里帰り。というわけで、バックアップしているのはストックホルム仲間。ピーター、ビョルン&ジョンがエグゼクティヴ・プロデューサーを務め、演奏も担当。彼らやファースト・エイド・キットなどともつながりのあるフリージャ・ザ・ドラゴンことフリージャ・ドレイケンバーグがヴィクトリアさんと共同プロデュース。
らしいです(笑)。まだよくわかんない。
選曲よし。アレンジよし。印象的に取り上げられているデニー・レイン作の「構わないと言って」とか、コリン・ブランストーンの盤ではストリングス・カルテットがメランコリックな音世界を作り上げていたけれど、こちらでは的確にハーモナイズされたコーラスとか、ヴァイブラフォンとか、不思議なパーカッション群とか、1960年代半ばのビーチ・ボーイズを想起させるバス・ハーモニカとか、面白いアンサンブルに置き換えながら独特の世界観を構築してみせる。「さよならキャロライン」とかでは、タイトルが想起させる『ペット・サウンズ』的な楽器を導入したアレンジにしていたり。頬がゆるむ。ヴィクトリアさんのささやきヴォーカルも相変わらず素敵です。
コリン・ブランストーン本人が本作に対してコメントしていて。「自分の曲が50年の時を経てこのような形で蘇ることに興奮しています。ヴィクトリアの一聴してわかる歌声はメランコリックで現代的で本当に素晴らしい」とのこと。
マジカルなポップ・ドリームふたたび、みたいな?