Disc Review

At The Royal Albert Hall (April 14, 1970) / Creedence Clearwater Revival (Craft Recordings/Concord Records)

ライヴ・アット・ロイヤル・アルバート・ホール/クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル

1969年から70年にかけて、われらがCCR、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルは、まじ無敵状態だった。

20年近く前、ブログに書いたことの…というか、雑誌に書いたことの繰り返しになるのだけれど。1960年代末、世の大方のロック・ミュージシャン群がサイケだ、アシッドだ、ラヴだ、ピースだ…とうわ言のように唱えながら、ジャズやら現代音楽やらインド音楽やらとごり押しの融合をはかった“新しい”ロック熱に浮かれまくっていたころ。しかし、そんなんじゃいかん、と。そうした時代の空気の中で誰もがふと忘れかけていた米ルーツ音楽本来の太さとか、強さとか、シンプルな躍動感に着目し、自分たちの足元を見つめ直そうと主張した偉人が何組かいて。

カントリー・ロックという新しいコンセプトをシーンにもたらした始祖のひとり、グラム・パーソンズとか、一時期のハリウッド映画漬け状況から脱し地元メンフィスへでブルース、ゴスペル、R&B、カントリーなど自らのルーツ音楽へと立ち返った力強い歌声を再び繰り出してみせたエルヴィス・プレスリーとか、聖地ウッドストックでのプライヴェートな試行錯誤の中で、真の伝承音楽の持つ力を現代に甦らせようとしたボブ・ディラン&ザ・バンドとか…。

それと同じ偉業を、ぐっとヒットチャート寄りの位置で堂々とやってのけた連中。それこそがCCR、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルだった。カリフォルニア出身ながら、ベイエリアから南部を幻視する形で、彼らはブルース、R&B、スワンプ、カントリー、ロックンロールといった米ルーツ音楽の魅力を掘り起こしてみせた。

前述した通り、活動のピークは1969年から70年にかけて。この時期にリリースされた『バイユー・カントリー』、『グリーン・リヴァー』、『ウィリー・アンド・ザ・プア・ボーイズ』、『コスモズ・ファクトリー』という4枚のオリジナル・アルバムは本当にすごい。1年ちょっとで4枚出した勢い自体すごいが、中身も強力。エルヴィス・プレスリー、チャック・ベリー、リトル・リチャード、ハンク・ウィリアムス、ボ・ディドリー、ジェイムス・バートンといった偉大な先達からの影響を自分たちなりに昇華したシンプルでタイトなCCRロックンロールが堪能できる。

さらにすごいのは、こうしたCCRの一連のロックンロールがヒットチャートでも大受けしたってこと。この時期、彼らが全米チャートに送り込んだシングルは「プラウド・メアリー」「バッド・ムーン・ライジング」「グリーン・リヴァー」「ダウン・オン・ザ・コーナー」「トラヴェリン・バンド」「アップ・アラウンド・ザ・ベンド」「ルッキン・アウト・マイ・バック・ドア」の7枚。すべてがトップ10入り。しかも、「ダウン・オン・ザ・コーナー」以降はすべて両面ヒットということで、それぞれのB面に収められていた「フォーチュネイト・サン」「フール・ストップ・ザ・レイン」「ジャングル越えて(Run Through the Jungle)」「光ある限り(Long as I Can See the Light)」も含めてトップ10入り楽曲は11曲ってことになる。さらに細かく言えば「バッド・ムーン・ライジング」のB面曲「ローダイ」も、「グリーン・リヴァー」のB面曲「コモーション」もチャート下位にランクしているので、厳密にはこの時期のCCRのチャート・ヒットは13曲だ。凄まじい。

と、そんな無敵時代の幻のライヴ音源を完全収録したのが今朝紹介するこのアルバム『ライヴ・アット・ロイヤル・アルバート・ホール』。1970年4月14日、文字通り、英ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行なわれた彼らのコンサートの模様だ。昨日のエリザベス女王の葬列もその前を静かに通り過ぎていたおなじみのランドマークであります。

ちなみに、彼らの解散からずいぶん経った1980年に『The Royal Albert Hall Concert.』なるアルバムが突然オフィシャル・リリースされて驚いたことがあったのだけれど(邦題は『CCR・ライヴ・イン・ロンドン'70』)、その後、実際にはそのライヴ音源、1970年1月に米カリフォルニア州のオークランド・コロシアムでのパフォーマンスだったことが判明し、アルバム・タイトルが『ザ・コンサート』に変更された。

というわけで、その伝説のロイヤル・アルバート・ホール音源の全貌がオフィシャルに世に出るのは今回が初ということになる。いやいや、うれしいじゃありませんか。ご存じの通り、CCRはオリジナル楽曲をほぼすべて手がけた中心メンバーであり、リード・ギタリスト、ヴォーカリストのジョン・フォガティを中心に、彼の実兄でステディなリズム・ギターを聞かせていたトム・フォガティ、余計な装飾いっさいなしに屈強のグルーヴを繰り出すリズム隊、ベーシストのステュ・クックとドラマーのダグ・クリフォードという4人組。この4人ががっちりタッグを組んで有機的に機能していた時期の音は、本当にかっこいい。

1972年に来日してくれたとき、CCRからはすでにトム・フォガティが脱退。3人組になっていた。もちろん、それでもむちゃくちゃかっこいいロックンロールを聞かせてくれはしたのだけれど。でも、やっぱりこの人たちは4人組時代だよなぁ…と。そんなことを改めて思い知らせてくれる強力な記録です。オリジナルのマルチ・トラック・テープを引っ張り出してていねいなリストア作業およびリミックスを行なったのは、ビートルズの一連のプロジェクトでおなじみ、ジャイルズ・マーティンとエンジニアのサム・オーケルだ。

なんでも近々、1970年のこのコンサートをクライマックスに据えたドキュメンタリー映画『Travelin’ Band: Creedence Clearwater Revival at the Royal Albert Hall』ってのも、北米、南米、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、アフリカなどでNetflixを通して配信開始! 日本での配信はいつかなぁ。監督は音楽ドキュメンタリー映画ではおなじみ、ボブ・スミートンです。11月には2CD+ブルーレイのボックスが出るとかいう噂もあり。まじか? やばい。

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