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Disc Review

Ullevi, Gothenburg, Sweden July 28, 2012 / Bruce Springsteen & The E Street Band (Live.BruceSpringsteen.net)

ウッレヴィ、イェーテボリ、スウェーデン 2012年7月28日/ブルース・スプリングスティーン&ジ・Eストリート・バンド

ライヴ・コンサートというのは、文字通り生で、その場の空気をともにしながら、パフォーマーとオーディエンスが一体となって楽しむべきものなわけだけれど。

相変わらず未知のウイルスとのゴールが見えない闘いが続く中、そういう機会を持つことができなくなって。しかし、そうした状況にあっても、ライヴという文化だけが持つ熱とか、カタルシスとかをどうにかして生きながらえさせようと奮闘する音楽家たちがいる。

昨夜、ネットを通じて、弾き語りツアーの無観客特別追加公演を有料生配信してみせた田島貴男とかもそう。いろいろ技術的な問題で、ライヴ冒頭、音や絵がカクカクしたり、途切れたり。トラブルはいろいろあったものの、途中でビットレートを落としてからは最後まで快調。

さすが長年独自の弾き語りのノウハウを模索してきた田島だけに、新旧レパートリーを交え、自在なアレンジをほどこしつつ、時にはギターのボディを叩き、足でパーカッションを加え、ともすればしっとりしてしまいがちな単なる弾き語りとはまるで違う、躍動的なソロ・パフォーマンスを届けてくれた。

現在の田島貴男の圧倒的な充実ぶりを存分に伝えてくれる試み。まあ、もう終わっちゃって、ほとんど時間はないけれど。今日、4月6日の14時までにこちらでチケットをオンライン購入すれば、8日の22時まで(現在、10日までの延長を計画中だとか)はアーカイヴ映像が見られるみたいです。

こういうのが増えれば、ライヴハウスなどが否応なく機能できなくなってしまった現状でもミュージシャンにお金を届けられるし、ぼくたちも音楽の生の魅力を、まあ、擬似的にではあるけれど、おうちにいながらにしてリアルタイムで味わえるし。たぶん現在の見えない敵との戦いは長期戦になりそうだから、こういう技術をさらに研ぎ澄まして、新しい形のビジネスモデルみたいなものができあがっていけばいいなぁと思ったものです。

田島、かっこよかった!

で、その流れで、この厳しい時期に届けられたうれしい未発表ライヴ音源をご紹介しましょう。われらがボス、ブルース・スプリングスティーンが盟友Eストリート・バンドを率いて、2012年7月28日、スウェーデンのイェーテボリにあるウッレヴィ・スタジアムで行なったコンサートのフル音源。2012年〜13年の“レッキング・ボール・ワールド・ツアー”の一環だ。

なんでも当夜、雨にたたられたらしく。しかし、ボスは負けない。いきなりクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルの「フール・ストップ・ザ・レイン」のカヴァーでコンサートをスタート。そこから「ザ・タイズ・ザット・バインド」「アウト・イン・ザ・ストリート」「ダウンバウンド・トレイン」「アイム・ゴーイン・ダウン」…と立て続けにぶちかます。痛快!

スプリングスティーンのほか、ロイ・ビタン(キーボード)、チャールズ・ジョルダーノ(キーボード)、ニルス・ロフグレン(ギター)、スティーヴ・ヴァン・ザント(ギター)、スージー・タイレル(フィドル)、ギャリー・タレント(ベース)、マックス・ワインバーグ(ドラム)という基本バンドに、ジェイク・クレモンズ(サックス)を含む5管ホーン・セクションとコーラス4人という編成で、CDだと3枚組、全31曲、3時間半を軽く超えるごついステージの模様だ。

中盤の「ザ・リヴァー」「ビコーズ・ザ・ナイト」「ハングリー・ハート」「ウェイティン・オン・ア・サニー・デイ」とかもいい。そこから「バッドランズ」「涙のサンダー・ロード(Thunder Road)」「ボーン・トゥ・ラン」「ボーン・イン・ザ・USA」「凍てついた十番街(Tenth Avenue Freeze-Out)」などへとなだれ込む後半は興奮のピーク。アンコールでは、クラレンス・クレモンズ他界後、初めて「ジャングルランド」も演奏された。

そうした超おなじみどころ以外にも、『ザ・リヴァー』のアウトテイク「ホエア・ザ・バンズ・アー」とか、『ワーキング・オン・ア・ドリーム』の「マイ・ラッキー・デイ」とか、『ボーン・イン・ザ・USA』期のアウトテイク「フランキー」とか珍しいところも。ホーン・セクションがごきげんな「マイ・シティ・オヴ・ルーインズ」も手応えたっぷり。

「洪水に流されて(Lost in the Flood)」とか「都会で聖者になるのはたいへんだ(It's Hard to Be a Saint in the City)」とか、ファースト・アルバムからの曲もいい。フレッシュさと力強さが同居していて。泣ける。特に「洪水に流されて」。リハーサルなしで突然やることにしたらしく、スプリングスティーンがロイ・ビタンにあれこれイントロの指示をしていて、“キーはEマイナーだ”とか“そうしたら、俺たちがビッグなコードをぶちかます”とか言っていて。で、演奏が始まると、ほんとにEストリート・バンドならではのビッグなコードがぶちかまされて。やばい。バンドの一体感が半端ない。

自身のアーカイヴ音源を公式ライヴ・アーカイヴ・サイト“Live.BruceSpringsteen.net”でのリリース。mp3、ロスレス、ハイレゾ、CDから選んで買える。ぼくはとりあえず13ドルくらいのロスレス(flac)で入手したけど。ブツも欲しいような。ハイレゾも気になるような。非常時でも物欲はおさまりません…。

あまりにもホットすぎて、むしろ、おうちにこもっていなくちゃならないことが悲しく思えたりすらするかもしれないけれど。またこの熱さを生身で受け止められる日ができるだけ早く戻ってきてくれることを祈りながら、目を閉じて、ボスの姿を思い浮かべつつ、ホットなシャウトに身を任せましょう。

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