Disc Review

Where the Willow and the Dogwood Grow: Words and Music by Tom Waits and Kathleen Brennan / Various Artists (Ace Records)

ホエア・ザ・ウィロウ・アンド・ザ・ドッグウッド・グロウ:ワーズ・アンド・ミュージック・バイ・トム・ウェイツ・アンド・キャスリーン・ブレナン/ヴァリアス・アーティスツ

1983年に古巣アサイラム・レコードからアイランドへと移籍後のトム・ウェイツ作品が再発された際、本ブログでもいろいろ取り上げましたが。

そのときも書いた通り、アサイラム期の酔いどれビートニク詩人のやさぐれジャジー・ワールド…みたいな世界観から、アイランド移籍後の、スプーキーでノイジーでハイパーでスペイシーなアプローチへの転換にくらくらしながらさらなる深沼へ…。

と、そんなトム・ウェイツの方向転換に関して大きな影響を与えたのが当時結婚したばかりだった奥さま、キャスリーン・ブレナンの存在。それまで自分の音楽以外ほとんど聞くことがなかったというトムさんと違って、コッポラ監督のスタッフを務めていたキャスリーンさんのほうはかなりマニアックな音楽ファンでもあったようで。実に興味深いラインアップのレコード・コレクションを所有していたみたい。おかげでウェイツはそれまで以上に幅広い音楽に接するようになった、と。

1オクターブに43の音が存在する43微分音階による音律理論を1930年代に確立した現代音楽家/理論学者、ハリー・パーチの独創性や、ローリング・ストーンズの『メイン・ストリートのならず者(Exile on Main St.) 』の収録曲「アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・シー・ヒズ・フェイス」に渦巻くスリリングな混沌、ドクター・ジョンのアルバム『グリ・グリ』に詰め込まれた粘り着くような呪術的グルーヴなど、キャスリーンのレコード棚に並んでいた多彩な音楽に接して衝撃を受けたトムさんは、自らの心の奥底のどす黒い部分にまで深く分け入ったかのような、圧倒的な音楽を構築し始めて。

以降、『ソードフィッシュ・トロンボーン』とか『レイン・ドッグズ』とか『フランクズ・ワイルド・イヤーズ』とか、ハウリン・ウルフのように吼えるクルト・ワイルといった佇まいの傑作アルバムを次々リリースしていくようになったわけだけれど。

英エイス・レコードが編纂する人気企画“ソングライター・シリーズ”の最新作は、そんなトム・ウェイツ&キャスリーン・ブレナンの作品集。ブルース・スプリングスティーン、ボブ・シーガー、サウスサイド・ジョニー、ロス・ロボス、ルシンダ・ウィリアムズ、ダイアナ・クラール、ベティ・ラヴェット、ザ・ブラインド・ボーイズ・オヴ・アラバマ、マリアンヌ・フェイスフル、ラモーンズ、ジョニー・キャッシュ、キング・アーネスト、ウィリー・ネルソン、マディソン・カニンガム、ノラ・ジョーンズ、ジョン・ハモンド、ソロモン・バーク、アリソウ・クラウス&ロバート・パーマー、ジョーン・バエズら19組のアーティストがカヴァーするトム・ウェイツ・ワールドだ。

全19曲中6曲がトム・ウェイツ単独で書いた作品。残りがすべてトム・ウェイツ&キャスリーン・ブレナンの共作曲。カヴァーされた順ではなく、トム・ウェイツが元の楽曲を発表した順に並んでいる。トム・ウェイツの作風の変遷を別角度からたどることができる構成になっているわけだ。

独自の立ち位置から、ヴォードヴィル、ブルース、ジャズ、フォーク、演劇、映画、文学など多彩なものからのインスピレーションを吼えるようにぶちまけ続け、“歌”という概念を大きく解体し続けるトムさんとキャスリーンさんの世界観を、より多様な形で体験できる強力なコンピレーションです。

以前、やはり本ブログで女性アーティストたちがカヴァーしたトム・ウェイツ作品集『カム・オン・アップ・トゥ・ザ・ハウス〜ウィメン・シング・ウェイツ』を紹介したことがあったけれど。

それとともに揃えておきたい良コンピかな。英エイスの常で、ストリーミングはないので曲目だけ載せておきますね。

  1. Jersey Girl - Bruce Springsteen & The E Street Band
  2. 16 Shells From A Thirty-Ought-Six - Bob Seger & The Silver Bullet Band
  3. Gin-Soaked Boy - Southside Johnny & The Asbury Jukes
  4. Jockey Full Of Bourbon - Los Lobos
  5. Hang Down Your Head - Lucinda Williams
  6. Temptation - Diana Krall
  7. Yesterday Is Here - Bettye LaVette
  8. Way Down In The Hole - The Blind Boys Of Alabama
  9. Strange Weather - Marianne Faithfull
  10. I Don't Wanna Grow Up - Ramones
  11. Down There By The Train - Johnny Cash
  12. House Where Nobody Lives - King Ernest
  13. Picture In A Frame - Willie Nelson
  14. Hold On - Madison Cunningham
  15. The Long Way Home - Norah Jones
  16. 2:19 - John Hammond
  17. Diamond In Your Mind - Solomon Burke
  18. Trampled Rose - Alison Krauss / Robert Plant
  19. Day After Tomorrow - Joan Baez

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