
イン・ジ・アワー・オヴ・ケイオス/アリソン・ラッセル
新作のリリースをインフォメーションするアリソン・ラッセルのホームページ見ていたら、“このレコードは気分を良くするためのもの。そして今の時代、気分を良くすることこそラディカルな行為”とか書いてあって。
ほんと、そうだよなぁ…と、深々と納得してしまった。
どの曲もポップで、キャッチーで、ソウルフルで。でも、疎外、孤立、恐怖が渦巻くこの時代に、つながりを熱烈に訴えるもので。ぐっときた。
ソロ名義では、これ、まだ彼女にとって3作目のアルバムなのだけれど。ソロ・アルバムというよりも強烈なコラボレーション・アルバムに仕上がっていて。ノラ・ジョーンズ、サラ・ワトキンス、ジョイ・オラドクン、ブリトニー・スペンサー、ルビー・アマンフ、デヴォン・ギルフィリアンなど、ナッシュヴィル系の人脈を中心に28人のアーティストが客演している。アリソンさんによれば、この人たち、みんな“ザ・グレーター・レインボウ・コアリション”の一員だとのこと。
ご存じの通り、レインボウ・コアリション〜虹の連合というのは、人種的,民族的,文化的背景の異なるマイノリティの連合政治勢力みたいなもの。1960年代以降、いくつか有名なレインボウ・コアリションが構成されたりしてきたけど。その中でも“もっとも偉大な…”ものってことか。
アリソンさん、2024年からブロードウェイでミュージカル『ヘイディズタウン』に出演してペルセポネー役を演じているらしいのだけれど。そうした経験と、彼女のフォーク・ルーツみたいなものがうまいこと合体した1作という感じかも。
ドリュー・リンジーとの共同プロデュース。全編を貫くテーマは癒やし、連帯、回復。祝祭的な高揚感に満ちた曲もあれば、憂い漂う切なく内省的な曲も、官能的な曲も、静謐で優美な曲もあって。バランスよし。
メイヴィス・ステイプルズやブランディ・カーライルあたりと同様、ポジティヴに“つながり”をキュレートすることで、無防備な気持ちも、悲しみも、怒りも、慰めも、すべてをある種のプロテストへとさりげなく昇華させるこの感じ。アリソン・ラッセルの大きな魅力のひとつだな。けっしてあからさまに政治的なメッセージを放っているわけではないのに、そこには強い強い意志がくっきりこめられています。かっこいい。

