Disc Review

Pinky’s Blues / Sue Foley (Stony Plain Records)

ピンキーズ・ブルース/スー・フォーリー

“ピンキー”ことピンク・ペイズリーのテレキャスターがトレードマーク。えぐいギター・プレイとキュートなヴォーカルでごきげんなブルースをぶちかます赤毛のブルース・レディ、スー・フォーリー、2年ぶりの新作だ。その名も、愛器にちなんでずばり『ピンキーズ・ブルース』。もう、この段階でむちゃくちゃかっこいい。

カナダ出身ながら、1992年、まだ20代前半だったころテキサス州オースティンに本拠を移してデビュー。あれからもう30年かぁ…。ある時期までは着実にアルバム・リリースを重ねてきたものの、10年くらい前、ピーター・カープとの連名で2枚出したあたりでしばしリーダー・アルバムの発表は中断。コンピレーションとかでちょいちょい名前を見たりしていたとはいえ、どうしたのかなと思っていた。

沈黙が破られたのは、2018年。久々にソロ名義のアルバム『ジ・アイス・クイーン』が出て。これがメンフィスのブルース・ミュージック・アワーズで最優秀トラディショナル・ブルース女性部門にあたる“ココ・テイラー賞”を受賞。カナダのトロント・メイプル・ブルース・アワーズでも最優秀ギター・プレイヤー賞に輝き、さらにカナダのグラミー賞と言われるジュノ賞にもノミネートされるなど、いよいよ本格復活。

そして今、勢いもそのままに、さらなる新作を届けてくれた、と。そういうわけだ。新型コロナ禍によるロックダウン明け、音楽仲間と集って3日で完成させた1枚だとか。それでOK。それだからこそOK。今回も迷いなし。直球ど真ん中。ブルース・スピリット全開の仕上がりだ。

スティーヴィー・レイ・ヴォーン&ダブル・トラブルのクリス“ホイッパー”レイトンがドラム、スー姐がカナダからオースティンに出てきたころからの古い付き合いとなるジョン・ペナーがベース。もちろんスー・フォーリー自身がギター&ヴォーカル。この3人編成での演奏が基本だ。プロデュースはハモンドB3のマスター、マイク“ザ・ドリフター”フラニジン。フラニジンはレナード・アレン作「サザン・メン」とジミー・ドンリーをカヴァーした「シンク・イット・オーヴァー」でオルガンも担当。さらに「ハリケーン・ガール」にはスティーヴィー・レイのお兄ちゃん、元ファビュラス・サンダーバーズのジミー・ヴォーンもゲスト参加して、なんとリズム・ギターで姐さんをバックアップしている。

ピンキーがうなりをあげるインスト・ナンバー「ピンキーズ・ブルース」で幕開け。以降、スー姐自らのオリジナル曲を中心に、アンジェラ・ストレーリの「トゥー・ビット・テキサス・タウン」や「セイ・イッツ・ノット・ソー」、ミス・ラヴェル・ホワイトの「ストップ・ジーズ・ティアドロップス」、フランキー・リー・シムズの「シー・ライクス・トゥ・ブギー・リアル・ロウ」、先述ジミー・ドンリーの「シンク・イット・オーヴァー」、ゲイトマウス・ブラウンの「オーキー・ドーキー・ストンプ」などのカヴァーを交えて展開する。

けっしてこれ見よがしな早弾きに流れることなく、もはや積み重ねた年輪すら感じさせるフレーズを連発。さまざまなスタイルのブルースが次々登場してくるのだけれど、やはり基本的な手触りはテキサス! すでに本拠を故国カナダのヴァンクーヴァーに戻しているスー姐さんながら、第二の故郷、テキサスの味はもう身体に存分にしみこんでいるってことか。ごりごりのブルースももちろん痛快だけれど、キュートな歌声が活かされたティアドロッパー「シンク・イット・オーヴァー」みたいなやつにもしびれます。

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