Disc Review

Live at Montreux 1973 (DVD+CD) / Carole King (Eagle Rock/Yamaha)

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ライヴ・アット・モントルー 1973 (DVD+CD)/キャロル・キング

キャロル・キングが1971年にリリースした『タペストリー』は大いに売れた。まじ、とんでもなくヒットした。全米1位の座に15週間とどまり続け、翌72年に発表されたグラミー賞では最優秀アルバム賞をはじめ4部門を制覇。『タペストリー』はキャロル・キングにとってだけでなく71年の米音楽シーン全体を象徴する名盤となった。

けど、あまりにも売れすぎたこともあって、キャロル・キングがその後リリースしたアルバム群の影がとてつもなく薄くなってしまったことも事実。いや、もちろん売れていなかったわけではなく、71年の暮れに出た『ミュージック』も全米1位。72年末の『喜びは哀しみの後に(ライムズ&リーズンズ)』も全米2位。売れたことは売れたのだけれど、『タペストリー』が怪物すぎて、今いち話題にあがることが少ないというか…。

でも、当たり前のことながら、それら『タペストリー』以降の諸作も素晴らしいのだ。『ミュージック』では、それまでのシンプルでアコースティカルなアプローチから一歩踏み込み、当時“ニュー・ソウル”などと呼ばれた類の新感覚のソウル・ミュージックからの影響も露わにするようになった。『ライムズ&リーズンズ』では、歌詞面でそれまで以上に個的/内省的な物語を聞かせるようになったと同時に、音楽面では『ミュージック』での試行錯誤をより深め、厚く緻密なアンサンブルを聞かせるようになった。

参加ミュージシャンとしては、当時の夫であるチャールズ・ラーキー(ベース)のほか、ダニー・コーチマー(ギター)、ミズ・ボビー・ホール(パーカッション)ら以前からの音楽仲間に加え、ハーヴィ・メイソン(ドラム)、デヴィッド・T・ウォーカー(ギター)、ジョージ・ボハノン(トロンボーン)らジャズ/フュージョン寄りの名手が名を連ねるようになった。

そんな流れを受けて、73年にリリースされたのが、キャロルにとって最大の冒険作『ファンタジー』だった。性別/人種など様々な差別に反対するメッセージが託された歌詞も強烈だったが、それ以上に、前作の参加メンバーが引き続きサポートする形で一層R&Bやジャズに接近したサウンドが最高だった。そうした、ある種過剰な方向性ゆえ、当時は評論家筋から酷評されたりもした。ファンも戸惑った。全米チャートでの戦績は最高6位。微妙な順位だが、それまでのアルバムが1位か2位にランクしていたことを思うと、やはりこれはセールス的には失敗作だったということになるのだろう。

とはいえ、少なくともミュージシャン仲間は当時から絶賛していた。この時期のキャロルの試行錯誤に影響されるようにしてジョニ・ミッチェル、ジェイムス・テイラー、エリック・アンダースンなど多くの白人シンガー・ソングライターたちが自分の作品でも同様のジャズ/フュージョン系プレイヤーたちを起用し、ブルー・アイド・ソウル的な音作りを聞かせるようになっていった。こうした史実に思いを馳せると、当時のキャロルのチャレンジ精神に満ちたアプローチがその後のシーンに与えた影響の大きさを改めて思い知る。

と、そんな意欲作をお披露目するために行なわれた貴重なライヴの模様を記録したのが本作『ライヴ・アット・モントルー1973』だ。海外では5月になってからのリリースらしいけど、日本でめでたく先行発売。光栄にもライナーノーツを書かせていただいたこともあり、いち早く全貌を体験できた。もちろん、ごきげんに盛り上がった。まず冒頭、キャロルのピアノのみをバックに『タペストリー』の収録曲中心の弾き語りセットでコンサートがスタート。それら弾き語り曲に続いて、コンサートの目玉、当時の新作アルバム『ファンタジー』のお披露目セットに突入する。

チャールズ・ラーキー、ミズ・ボビー・ホール、ハーヴィ・メイソン、デヴィッド・T・ウォーカーというレコーディングへの参加メンバーに、クラレンス・マクドナルド(キーボード)が加わった豪華なリズム・セクションがステージに登場。アルバム冒頭を飾っていた「ファンタジー・ビギニング」からラストの「ファンタジー・エンド」まで、アルバムの収録曲13曲のうち10曲をほぼ曲順通りに生演奏で聞かせてくれる。スタジオ・ヴァージョン以上にスリリングで躍動的な演奏が素晴らしい。途中からトム・スコット(サックス)らホーン・セクションも参加。彼ら名うてのセッション・プレイヤーと張り合いながら見事なアンサンブルを構築するキャロル自身のアコースティック・ピアノ演奏も聞き逃せない。

ワン・アンド・オンリーだな、ほんと。改めて思い知る。

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