Disc Review

The Early Years (1970-1977) + The Middle Years (1978-1996) / Livingston Taylor (Whistling Dog Music/Wienerworld)

ジ・アーリー・イヤーズ(1970-1977)+ザ・ミドル・イヤーズ(1978-1996)/リヴィングストン・テイラー

ポール・マッカートニーの弟、マイク・マクギア。ミック・ジャガーの弟、クリス・ジャガーなど。多くの弟くんがポップス界にはいるわけですが。偉大な同業の兄を持つと、何かと苦労が多いみたい。

この人もそう。リヴィングストン・テイラー。説明は不要だろうけど、兄は今なお絶大な人気を誇るベテラン・シンガー・ソングライター、ジェイムス・テイラーで。さすが兄弟だけあって、声も似ているし、ギター・スタイルも近いし。そのせいもあってか、リヴへの注目度は地味め。同じ時期にデビューを果たしながらも、兄の影に隠れながらの活動になってしまうことが多かった。弟はつらいね。

が、もともと鋭い感受性に関しては兄以上と評価の高かったリヴ。アルバムを重ねるごとに、ジェイムスとはひと味違う、より内省的かつメロウな感性を独自の魅力として育み、時間をかけて自らの“色”を確立してみせた。いまだセールス的にはけっして兄を凌駕することはないものの、そのぶん熱心なファンを着実に獲得している。

そんなリヴのベスト盤が2種。まず、先月出たのが『ジ・アーリー・イヤーズ(1970〜1977)』。これは文字通り初期、カプリコーン・レコード在籍時のアルバム3作、つまり1970年の『リヴィングストン・テイラー』、1971年の『LIV』、1973年の『虹の彼方に(Over The Rainbow)』から19曲をピックアップしたコンピレーションだ。

トラック1から8までが『リヴィングストン・テイラー』の収録曲。トラック9から13までが『LIV』。トラック14から19までが『虹の彼方に』。ピート・カーやロバート・ポップウェル、ジョニー・サンドリン、トミー・タルトンらがバックアップしていた、ちょいアーシーっぽい時期のリヴが楽しめる。

続いて早くも今月出た続編が『ザ・ミドル・イヤーズ(1978〜1996)』。中期、1978年から1990年代にかけての諸作から選曲されたコンピレーションだ。この時期、エピックに移籍して以降のアダルト・コンテンポラリー寄りの音作りも大好きだったなぁ。兄ジェイムスとも違う独自の色を模索しつつ、淡々と歩みを進めていた時期というか。

1978年から1996年というと、リヴはベスト盤とかレア音源集とかも含めて8作のアルバムを出しているのだけれど。今回セレクトの対象となっているのはなぜだかそのうちほんの4作だけ。

トラック1から4までがニック・デカロがプロデュースした1978年の『三面鏡(Three Way Mirror)』からのナンバー。トラック5から9までがジェフ・バクスターらがプロデュースした1980年の『マンズ・ベスト・フレンド』から。トラック10から15までが、いきなり時期が飛んで1991年の『アワ・ターン・トゥ・ダンス』から。で、それ以降、16から19までが1996年の『自転車と僕(Bicycle)』から。

まあ、熱心なファンはオリジナル・アルバムをちゃんと全部手にしていることとは思いますが。今、リヴのオリジナル・アルバムはけっこう入手困難なものも多いので、これからリヴの歌声に接したいと思う方は、初期・中期の音をざっくり集めた今回のベスト2種をとっかかりにするのも悪くない。すでにオリジナル・アルバムをお持ちの方にとっても、ぎゅっとコンパクトにリヴの作品群を再訪できるいい機会。

両盤ともにサブスクに入っているので、そのあたりも活用しながらリヴの深い魅力を改めてじっくり味わい直しましょう。

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