Disc Review

Still Here / Ben Levin (VizzTone Label Group)

スティル・ヒア/ベン・レヴィン

こういう若者がいるんだねー。シンシナティ本拠の22歳。ごっきげんなブルース/ブギウギ・ピアノとともにフレッシュな歌声を聞かせるベン・レヴィン。なにやら日本の若いブルース・プレイヤーとかとも交流があるようなので、そのスジではすでにおなじみの存在なのかもしれない。

ぼくは今回初めて知りました。でもって、大いにハマりました。調べてみたら、子供向けの音楽作ってる同名の人とかもいて。いろいろややこしかったんだけれど。ざっくり判明したこととしては——

これがすでに4作目のフル・アルバム。まだ22歳なのに。でも、15歳のころからプロとして年間100本のクラブ・ギグをこなしてきたというから、この年齢にしてすでにキャリア7年。マニアックな音楽を愛好するギタリストである父親からの影響もあり、当初からプロフェッサー・ロングヘアとかパイントップ・パーキンスとかオーティス・スパンとかレイ・チャールズとか、そういう偉大な、しかしけっして若者の趣味とは思えない先達のオーセンティックな音世界に最大限の敬意を評したパフォーマンスを展開してきたらしい。

こういう音楽に傾倒するきっかけとなったのは、6歳のころ、父親が見ていたレイ・チャールズのバイオピック『レイ』。あの映画を一緒に見てベンくんはいたく感動。さっそくシンシナティが誇るブルース/ブギウギ・ピアノの名手、リッキー・ナイのもとで修行を開始した。好きこそものの上手なれ。めきめき腕を上げ、13歳のころには地元のブルース・フェスにも出演。先述した通り、15歳からは父親のバンドのピアニストとしてフルタイムでプレイするようになったのだとか。

で、2016年、17歳のとき、4曲の自作曲に加えてプロフェッサー・ロングヘア、ビッグ・メイシオ、ジョン・リー・フッカーなどのカヴァーを含むアルバム『ベンズ・ブルース』を自主制作してレコード・デビュー。これがブルース関係のいくつかの賞にノミネートされたのをきっかけにヨーロッパからも声がかかるようになって。フランス、オランダ、イギリスなどを転戦しつつ、各地のブルース・フェス荒らし。

2019年にヴィズトーン・レコードと契約して、セカンド・アルバム『ビフォア・ミー』をリリース。さらに2020年に『キャリーアウト・オア・デリヴァリー』ってやつを出して、このほどヴィズトーンからの第3弾、通算4作目の本作『スティル・ヒア』が出た、と。そういう流れみたいです。

ヴィズトーンからの過去2作もストリーミングされているので聞いてみたら、今回も基本的には同じ路線。父親アロンのギターをはじめとする最小限のサポートを従えつつ、自らのピアノとヴォーカルで綴るタイムレスなブルースやブギウギやニューオーリンズR&Bの世界だ。

全12曲中8曲がベン・レヴィン単独、あるいは父親のアロン・レヴィンとの共作曲。パパのギターをフィーチャーしたインストも1曲あり。その他、アルバムのオープニングを飾るジミー・ウィザースプーンの「ラヴ・アンド・フレンドシップ」をはじめ、ジミー・リギンスの「アイ・キャント・ストップ・イット」、ビリー・ボーイ・アーノルドの「キッシング・アット・ミッドナイト」、メンフィス・スリムの「アイ・ワンダー・ホワッツ・ザ・マター」の4曲がカヴァーだ。

過去作品は普通にステレオ録音だったけれど、本作はアルバム・ジャケットでも高らかに宣言されている通り、ついにモノラル(笑)。気合いが入ってる。伸び盛り世代だけに、ピアニストとしてはもちろん、ヴォーカリストとしてもぐんぐん成長してきているようだ。ジャンルがジャンルだけに、まだ渋さが足りないとか言われそうではあるものの、もともとこういう音楽だってかつては、若い、活きのいい音楽だったわけで。若者がこういう文化を継承して若々しくプレイしているのを見るのは楽しいです。

各オンライン・ストアを眺めていると、フィジカル・リリースが遅れて11月…みたいな情報もあるので、ぼくは今のところおとなしくサブスクで楽しんでます。ヴァイナルがほしいな。LP。出してくれたらいいんだけど。

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