Disc Review

1999 (Super Deluxe Edition) / Prince (Warner)

1999:スーパー・デラックス・エディション/プリンス

『パープル・レイン』の大爆発ひとつ手前、プリンスというとてつもない才能の黄金時代到来を告げた傑作が『1999』。ローリング・ストーンズのオープニング・アクトをつめたこともあって“黒いミック・ジャガー”とかなんとか、今じゃちょっと使うのもためらわれるようなキャッチコピーまで付与され、賛否渦巻く中、それでも確実に知名度/期待度を上げつつあったところへドカーンと登場したアナログLP2枚組だった。

全編に渡ってシンセサイザーとドラム・マシーンを大々的に導入。それまでファルセット中心だったヴォーカル・スタイルを地声方面へと本格的にシフトチェンジ。まさにプリンスという存在を世に知らしめるうえで大きな役割を果たした作品だ。

と、そんなこともあってか、プリンスのポップさが炸裂したアルバムという印象で語られることも多いのだけれど。それはたぶん、アルバム冒頭、P-ファンク・グルーヴでタイトに綴られた黙示録とでも言うべき「1999」、完璧なポップ・チューン「リトル・レッド・コルヴェット」、そしてコンピューター・エイジの2ビート・ロカビリーとで言うべき「デリリアス」…と、シングル・ヒットが3連発で入っているおかげかも。

完璧な導入部。とはいえ、実はその後はけっこう何でもありというか。けっこう実験的だったり、ちょっとだけアヴァンギャルドだったり、過剰だったり、エロエロだったり…。今の耳で、この、いかにも80年代初期って感じの中途半端なデジタル・サウンドを聞かされると、なんとも平べったく感じたりもするのは事実だけれど、ここにちりばめられた未来への予感というか、のちのプリンスのアルバム群への足がかり的な要素は、やはり面白い。興味深い。その後のプリンスの試行錯誤を知ったうえで接し直すとなかなか楽しい。

そんな名盤のデラックス・エディション。1CDヴァージョン、2CDヴァージョン、2LPヴァージョン、4LPヴァージョンなども出るけれど、基本的なフォーマットは5CD+DVD、あるいは10LP+DVDという“スーパー・デラックス・エディション”だ。

5CD+DVDの中身をおさらいすると。ディスク1はもちろんオリジナル・アルバムの最新2019リマスター。このアルバム、本格的リマスタリングは今回が初なんだとか。もちろん初期CDから収録時間の関係であえなくカットされていた「D.M.S.R.」もちゃんと入った形の2オン1CDです。1CDヴァージョン、2LPヴァージョンはこれだけ。

で、ディスク2がシングル・エディット・ヴァージョンとかアルバム未収録のシングルB面曲とかを集めたもの。ディスク1と2を合体させたものが2CD、および4LPの“デラックス・エディション”だ。

“スーパー・デラックス・エディション”にはさらにCD3枚とDVD1枚が付く。ディスク3と4がレア音源集。プリンスはこの時期、自分の作品だけでなくヴァニティ6やザ・タイムなどへの楽曲提供も手がけ、とてつもなく膨大な量の音源をレコーディングしていたようで。倉庫に眠っていたそれら未発表音源が24曲、一気に蔵出しされている。

今回のボックスの目玉は、やはりこのレア集2枚かな。次作『パープル・レイン』はもちろん、1990年代の『グラフィティ・ブリッジ』『ニュー・パワー・ジェネレーション』へと連なる原石のようなものも含まれている。ヴァニティ6のために書かれたと思われる「ヴァギナ」とか、いいのか、そのタイトル、みたいな曲も…。個人的には、どポップな「ティーチャー、ティーチャー」とか大好き。ごきげん。

ディスク5は1982年11月30日にデトロイトで行われた完全未発表ライヴ音源12曲。そして、DVDには1982年12月29日のヒューストン公演の未発表ライヴ映像。

すごい。超ボリューミー。こんな紹介記事書いてますが、ぼくはまだライヴ映像は見てません(笑)。各ディスク、紙ジャケット仕様。新規ライナーや楽曲解説、未発表写真、プリンス手書きの歌詞などを満載したブックレット付き。全部堪能するには年末年始つぶれちゃいそうだな…。

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