
ディア・ナッシュヴィル/アシュリー・モンロー
最近は、特にアメリカのアーティストの音楽を聞くとき、この人、どっち寄りかな…? とか。本来、音楽を聞くうえで関係ないはずのことまで脳裏をよぎっちゃったりして。いろいろ疲れます。
ことカントリー系のアーティストとなると、ね。ついつい疑心暗鬼というか(笑)。
そんなこと考えなくてもいい時代に戻ってほしいなと願いつつ、今朝はアシュリー・モンローの新作、ご紹介です。ミランダ・ランバートとかと組んだピストル・アニーズの一員でもあり。ノージくんが素敵な“傘ジャケ”もののひとつに挙げている名盤『ライク・ア・ローズ』(2013年)でもおなじみのアシュリーさん。
他にもジャック・ホワイト、デイヴ・コブ、ヴィンス・ギルなどと組んで気になる活動を続けている人だけれど。2021年にがんの診断を受けたことを公表。しばらく治療のために活動を休止していた。でも、ついにがんが寛解。去年、シーンに復帰して久々のアルバム『テネシー・ライトニング』をリリース。それに続いて今年出たのが本作『ディア・ナッシュヴィル』なのでした。
『テネシー・ライトニング』はTボーン・バーネットやブレンダン・ベンソンをゲストに迎え、ほんの少しだけインディ・ロック的なアプローチも採り入れたツクリになっていたけれど。今回はケイシー・マスグレイヴスやケニー・チェズニー、リトル・ビッグ・タウンなどとの仕事で大当たりをとっているルーク・レアードとタッグを組んで、なんともさりげなく良質なナッシュヴィル・サウンドを聞かせる1枚に仕上げている。だからこそ、このアルバム・タイトルか。
でも、アルバム冒頭を飾る曲のタイトルが「アイ・ヘイト・ナッシュヴィル」。ナッシュヴィルなんて大嫌い…という曲だったりして。そのあたりの逡巡がぐっとくる。
“ナッシュヴィルなんて大嫌い/何度も何度も挑んだ/尽くしてボロボロになって/ただ奪われるだけ/人生最良の歳月を/カントリー音楽こそ私が生きる理由/ポール・フランクリンがスティール・ギターを奏でる/ヴィンス・ギルが大好き/ドリー、エミルー、そしてパティ・ラヴレスの「ナッシング・バット・ザ・ホイール」も/でもナッシュヴィルなんて大嫌い”というサビにしびれた。
この曲を皮切りに、カントリー音楽シーンにおけるアシュリーさんの経験を綴ったコンセプト・アルバムという感じ。全曲、アシュリーとルーク・レアードとの共作。ノスタルジーと批評性とを絶妙のバランスで共存させつつ、アシュリーさんは自身の物語をナッシュヴィルという街、あるいはシーンの変容の中に位置づける。この街に渦巻く成功と喪失、献身と挫折…。
単にナッシュヴィルやカントリー・シーンへ不満をぶちまけているわけではなく、夢を追う者たちが抱くワケのわからない飢餓感なり切なさなり、そういったものをアシュリー・モンローが彼女ならではの透明な歌声で淡々と綴っています。今のところフィジカルはなし。ストリーミング〜ダウンロードのみみたい。

