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Cut Worms / Cut Worms (Jagjaguwar)

カット・ワームズ/カット・ワームズ

カット・ワームズの新作です。米オハイオ州ストロングズヴィル出身、シカゴでのバンド活動を経て、現在はブルックリンを本拠に活動するポップ系シンガー・ソングライター、マックス・クラークのソロ・プロジェクト。

ジャングリーなバブルガム・ポップや、推進力に満ちたサーフィン/ホットロッドもの、キュートなサンシャイン・ポップ、メロウなハーモニー・ポップ、グルーヴィなパワー・ポップなど、1960〜70年代の不滅のポップ・ドリームに今どきのインディ・ポップ世代ならではの柔軟な感覚を全開にしながら正面突破でダイヴしてみせるカット・ワームズはごっきげんにかっこいい。

去年出たシングル「ドリームズ・モスト・ワイルド」とかも、往年のリヴァプール・サウンドとフォーク・ロックとが絡まり合いながら今どきのベッドルーム・ポップ〜チェンバー・ポップ的な音像の下、ゆるやかに舞う感じの魅力的なハイブリッド・ナンバーだったし。

と、そんなマックス・クラーク=カット・ワームズの新作、出ました。フル・アルバムとしては2018年のファースト『ホロウ・グラウンド』、2020年の2枚組『ノーバディ・リヴズ・ヒア・エニモア』に続く3作目だ。まあ、その間、去年の秋に出てローリング・ストーン誌が選ぶ2022年最優秀音楽書にも選ばれたグリール・マーカスの新著『Folk Music: A Bob Dylan Biography in Seven Songs』の表紙のデザインをしたりもしていて。多才な人ですが。

やはり、音楽がよいです。今回、「ドリームズ・モスト・ワイルド」も入っているんじゃないかとひそかに期待していたら、それは収録されずじまいで残念だけれど。でも全9曲、そこそこ粒ぞろい。相変わらずポップで、コンパクトで、キュートで、メロウで。

個人的にはレモン・ツイッグスのブライアンとマイケルのダダリオ兄弟が制作に手を貸している「ドント・フェイド・アウト」と「リヴィング・インサイド」がわりとお気に入り。ジャグジャグァー・レコード経由というか、フォクシジェンのジョナサン・ラド経由でレモン・ツイッグスとつながったようだけれど、このタッグは理想的かも。

ビーチ・ボーイズを思わせるバス・ハーモニカの響きを効果的にあしらった曲もいくつか。ゆるめのサンシャイン・ポップって感じの「バラッド・オヴ・ザ・テキサス・キング」とか「ユーズ・ユア・ラヴ!」とか。そのあたりもじんわり素敵でした。3作目にして初めてプロジェクト名をストレートにアルバム・タイトルに冠したという静かな自信も伝わって。ぐっときます。

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