Disc Review

Always / Eric Krasno (Provogue)

オールウェイズ/エリック・クラズノ

ソウライヴとか、レタスとか、あるいはオルガン・トリオのE3とか、そういった刺激的なバンド/ユニットのメンバーとしてもおなじみ、とびきりファンキーなギタリスト、エリック・クラズノの新作ソロ。出ました。ソロ名義では4作目かな。

多彩なユニットでがんがんアルバムをリリースしたり、アーロン・ネヴィルとか、テデスキ・トラックス・バンドとか、レデシーとか、マーカス・キングとか、ローレンスとか、様々なアーティストと絡みつつ、ギタリストとして、プロデューサーとして、ばりばり活躍したり。とてつもなく多作なクラズノさんですが。

さすがにパンデミックの間はじっと我慢の日々だったようで。結婚したということもあり、活動のペースを抑え、新しいおうちで奥さんと赤ちゃんと過ごしながら、“家族”とか“誕生”というテーマをじっくり考えたのだとか。そんな中で生まれたのが本作だとのこと。アルバム・ジャケットにもそんな思いがこめられているのかな。

おうちでおとなしくしている間、レタスのドラマー、アダム・ダイチを介してミュージシャン/プロデューサーのオーティス・マクドナルドのSNSをフォローするようになって。それをきっかけに意気投合。一昨年、2020年の半ば、NAACP(全米有色人種地位向上協会)への寄付をつのる“ソングエイド・プロジェクト”の一環として、二人で手を組み、ボブ・ディラン作品「ザ・マン・イン・ミー」をカヴァーすることにした。

時期が時期だったこともあり、彼らはリモートでレコーディング・セッションを開始。すると、この曲でのコラボレーションが予想以上に盛り上がり、そのまま本ニュー・アルバムの制作へと本格的に突入したらしい。クラズノのギター、キーボード、ヴォーカルの他、マクドナルド(ベース)、ウィル・ブレイズ(キーボード)、カーティス・ケリー(ドラム)、そして『アメリカン・アイドル』出身のジェイムスVIIIことジェイムズ・グレイ・ドーソン(ギター)といった顔ぶれがバックアップ。作業の9割がリモートだったようだけれど、さすがは名手どうしのコラボ。対面セッションと変わらぬ躍動感に満ちている。

オープニング・チューン「サイレンス」から、もうかっこいい。ぐっと抑制の効いたミディアム・グルーヴに乗せて、恋人から静寂以外の何も届いてこない辛さを綴る。続く「ソー・コールド」も、クールでメロウなヴァイヴが心地よい1曲。ギター・ソロも歌心たっぷりで、聞きながらいい感じにとろけていると。3曲目「ロスト・マイセルフ」では、そうそうこの人、ソウライヴやレタスやってる人なんだよなと改めて思い出させるような1970年代っぽいファンク・グルーヴが炸裂。切れのいいホーン・セクションも導入しつつ、スネアが半拍ウラにずれ込む例のスリリングなビート・パターンでホットに決めて。で、本作のきっかけとなった「ザ・マン・イン・ミー」のカーティス・メイフィールド風味のカヴァーへ。

冒頭の流れだけで、もうばっちり。その後も、クラズノのブルース・フィーリングが炸裂する「ホエア・アイ・ビロング」とか、ハモンドがうなりを上げるゴスペルライクな「ホールド・タイト」とか、ごきげんな曲がずらり。エリック・クラズノと、ジェイムスVIIIと、スペイン系の女の子シンガー・ソングライター、ヴィクトリア・カナルによる即席ヴォーカル・グループ“The Uyuyuys”(なんて読むんだ?)のふくよかなコーラス・ハーモニーを活かしたラスト・チューン「オールウェイズ・ウィズ・ユー」も泣けます。

ギタリストとしてだけでなく、ソングライターとしての充実ぶりも思い知らせてくれる1枚です。ブルーとかイエローとかカラー・ヴァイナル(Amazon / Tower)もあるな。ほしい。

Listen on Apple Music

Resent Posts

-Disc Review
-