Disc Review

Blue Blue Blue / Noel McKay (self-released)

ブルー・ブルー・ブルー/ノエル・マッケイ

バディ・ホリー生誕の地、テキサス州ラボックで育ったというシンガー・ソングライター、ノエル・マッケイ。ご存じの方もいらっしゃることとは思うけれど、不勉強なことに、ぼくはこれまでまったくノーマークで。今さらながら知りました。なんでも、1993年に地元近くの劇場で催された“ジミー・ロジャース・フェスティヴァル”に、兄弟のホリンと組んでいたデュオ、マッケイ・ブラザーズで出演していたところを、今は亡きアウトロー・カントリーのヒーロー、あのガイ・クラークに見初められた人らしく。

それをきっかけにマッケイは、クラークをはじめとする多彩な先輩たちと共作したり、ギタリストとして様々なレコーディングに参加したり、サニー・スウィーニー、サラ・ボージズらに楽曲をピックアップしてもらったり、マッケイ・ブラザーズとしてテキサスでローカル・ヒットを放ったり…。

へー、そうなんだと思って、ガイ・クラークのアルバムとかチェックし直してみたら、名前、ありました。クレジットされてた。クラークの遺作となってしまった2013年の傑作アルバム『マイ・フェイヴァリット・ピクチャー・オヴ・ユー』に収められていた独特のワルツ・チューン「エル・コヨーテ」の共作者。ナイロン弦ギターの演奏でも参加していて。チェック甘かったです。反省。

そんなノエル・マッケイの新作、バンドキャンプ経由で聞きました。題して『ブルー・ブルー・ブルー』。ガイ・クラークが取り上げる以前にその「エル・コヨーテ」をすでに世にお披露目していた2012年の初ソロ・アルバム『スケッチズ・オヴ・サウス・セントラル・テキサス』と、2014年に出たセカンド『イズ・ザット・ソー・マッチ・トゥ・アスク』に続く3作目らしい。

ガイ・クラークに見出された男ということで、クラーク本人やリー・クレイトン、ルシンダ・ウィリアムス、あるいはスティーヴ・アールのような、どこか煤けた、土臭いオルタナティヴ・カントリー系の個性なのかなと思いがちだけれど。ノエル・マッケイはもっと柔軟というか、もっと多彩なカントリーを聞かせてくれる。

アルバムは「ザ・50・ロンリエスト・プレイシズ・イン・ザ・ネイション」なる、ポール・サイモンの名曲を思い出させるタイトルの作品でスタート。これがブラシを使ったスネアの響きも軽快なポップ・カントリー調で。佳きころのベイカーズフィールド・カントリーの味わいがたっぷり。

続く「スリーピング・イン・マイ・カー」は、文字通り自分の車のバックシートで寝ることに疲れ、これまで繰り返してきた間違った判断を悔やみ、朝にはガソリン・スタンドで顔と手を洗い、でも夜を過ごせる場所があるだけでもましだと自らに言い聞かせながら過ごす日々を、なんともほのぼのとしたギターのスリー・フィンガーに乗せて淡々と綴って。

3トラック目の「フライング・アンド・フォーリング」は前述「エル・コヨーテ」同様、ガイ・クラークとの共作曲。こちらもクラークの『オールドNo.1』に入っていてもよさそうな1曲で。ちょっと泣ける。

4曲目「リアル・カウボーイ」は、デュオ・チーム“マッケイ&リー”としても一緒にアルバムを出したり、ツアー活動したりしている女性アーティスト、ブレネン・リーとの共作。これは偉大な先達ロジャー・ミラーに通じるユーモア感覚も聞き取れるノヴェルティ系の1曲だった。この機会にブレネン・リーも聞いてみたのだけれど、この人もすでにキャリア20年近く。調べてみたら、リー・アン・ウーマックやロドニー・クロウェル、サニー・スウィーニーらにも曲提供していて。なかなかよいですね。マッケイとのデュエット・アルバムも1作だけストリーミングされていて。それも聞いてみたらかなりよかった。まだまだ知らないことだらけ。日々、発見だなぁ。

他にも、アコーディオンやペダル・スティールを従えてスパニッシュ交じりで歌われるティファノ系の「サムバディ、サムウェイ、サムホエア」があったり、ベッキー・ウォーレンと共作したチャック・ベリー〜ジェリー・リー・ルイス調のロックンロール「ラーリーン」(96歳になるマッケイのおばあちゃんのことを歌ったものらしい)があったり。アーロ・ガスリーっぽい語りでかつての街の風景をシニカルに回想する「ホエン・ザ・タウン・ワズ・クール」があったり。誰かとのつながりを失い、間違った選択を悔やみ、でもよりよい日を夢見て旅に出て…様々な形で“孤独”と対峙する12曲という感じ。

レコーディングはオースティンとナッシュヴィルで。ここには確かに、ウィリー・ネルソンやジョニー・キャッシュ、ガイ・クラークたちとはちょっと違う、たとえばジム・ウェザリーとか、サム・ニーリーとか、ちょっと広げればヘンリー・グロスとか、ポール・デイヴィスとか、そのあたりのちょいマイルドなカントリー風味も漂うシンガー・ソングライターたちが1970年代に放っていた独特の香りが横溢していて。それをノスタルジックすぎると言うならば、まあ、そうなのかも。

ただ、そんなノスタルジックな感触も悪くないと思う方にはばっちりの1枚です。もちろん、ぼくにはばっちりでした。

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