Disc Review

Done Come Too Far / Shemekia Copeland (Alligator Records)

ダン・カム・トゥー・ファー/シェメキア・コープランド

先日、渋谷陽一さんのブログを眺めていたら。マネスキンが2022年型の最新ポップ・アクトたりえているのは、ロック親父の大好物であるブルースの要素が少ないからだ…みたいなことを書いていらっしゃって。なるほど、そういうものなのか…と思った。

まあ、そう思いはしたものの。ぼくはどう転んでもロック親父世代なもんで。そういうお古い音楽ファンとしてはですね、最新型のポップ・ミュージックに乗れようが乗れまいが、もうあまり気にもならないので、時代の流れなど気にせず大好物のブルースとかブルース・ロックとかを愛しまくりながら、これからも日々暮らしていきたいとの思いを新たにした次第であります(笑)。

というわけで、今朝はブルース系を。もうジョニー・コープランドの娘さんとか、そういう説明も不要なのかな。現在の米国に渦巻く様々な問題に対して切り込む鋭いメッセージを、ブルースとルーツ・ロックとアメリカーナとを合体させたようなたくましいサウンドで放ち続けるシェメキア・コープランド。

新作、出ました。人種問題とか、経済格差とかを巡る問題に痛烈に切り込んだ2018年の『アメリカズ・チャイルド』、銃規制問題とか、陰謀論とか、イデオロギーの対立とか分断とかを扱った2020年の『アンシヴィル・ウォー』に引き続き、今回もウィル・キンブローがプロデュース。ナッシュヴィルでのレコーディング。通算だと11作目ということになりそうだけど、キンブローと組んだ3部作の3作目というニュアンスか。

収録曲はパーソナル・マネージャーのジョン・ハーンとキンブローの共作曲が基本。サニー・ランドレスが客演したオープニング・チューン「トゥー・ファー・トゥ・ビー・ゴーン」からいきなり熱い。ローザ・パークス事件のこととか、マーティン・ルーサー・キング牧師のこととかに触れながら、ランドレスの粘っこいスライド・ギターを従えて、ファンキーにグルーヴする。

以降、銃乱射事件のやばさに言及したロック・チューンあり、黒人男性だというだけでいわれのない仕打ちを受けるかもしれない脅威について息子に警告する母親の視点が描かれたマイナー・キーのスロウ・グルーヴあり、奴隷制度によって引き裂かれた夫婦の物語が綴られたアメリカーナものあり、アコーディオン大活躍のテックス・メックス/ザディコものあり、子供の性的虐待を描くアコースティック・ブルースあり…。

コンテンポラリー・フォーク系のシンガー・ソングライター、スーザン・ワーナー作のカントリー・バラード「ホワイ・ホワイ・ホワイ」や、レイ・ウィリー・ハバード作の「ベアウット・イン・ヘヴン」なども挟んで、ラストは父親ジョニー・コープランドの強烈なスロー・ブルース「ノーバディ・バット・ユー」で締め。

メイヴィス・ステイプルとか、リアノン・ギデンズとか、そういう意識的なおねーさま方と並んで、まじかっこいい存在です。これもまた2022年、最新型の音楽のひとつではあると思います。

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