Disc Review

I Know I’m Funny haha / Faye Webster (Secretly Canadian)

アイ・ノウ・アイム・ファニー・ハハ/フェイ・ウェブスター

米アトランタが本拠。今23歳の女性シンガー・ソングライター、フェイ・ウェブスターの新作、2年ぶりに登場です。

2019年、21歳のときにリリースした前作『アトランタズ・ミリオネアズ・クラブ』もものすごく気に入っていて。コイン・チョコをぶひゃーっと食い散らかしてるジャケットもやばめで、かわいかったし。ウォーキングしながらよくストリーミングで聞いたものだ。でも、今、自分のブログを検索してみたら、なんとブログでは紹介してなかったみたい。なんか、タイミングが合わなかったのかな。日々、テキトーに選盤しながらブログ続けてることがよくわかります(笑)。すんません。

で、そんなフェイ嬢の新作。素晴らしいです。去年の春、先行トラックとして「イン・ア・グッド・ウェイ」が公開されたとき、ずいぶんと一気に大人っぽくなったなと少し戸惑ったものの、その後、秋ごろ「ベター・ディストラクションズ」が公開されたときは、これこれ! 来た! と盛り上がって。オバマさんもお気に入りプレイリストに入れたりしていて。それからえんえん、大いに期待しておりました。

前作の段階で、ぼくがそもそもこの子のアルバムを聞いてみようという気になったのは、印象的にペダル・スティール・ギターを使っているという情報をピッチフォークのレビューで読んだから。

もちろん、ペダル・スティールが入っているからってカントリーをやってるわけじゃなく。ピッチフォークのレビューに曰く、“ペダル・スティールが入ったR&Bアルバムはほとんどない。ラップがフィーチャーされたオルタナ・カントリーのアルバムもほとんどない。フェイ・ウェブスターの『アトランタズ・ミリオネアズ・クラブ』には、なぜかそのすべてがある。さらに奇妙なことに、彼女はそれら明らかな矛盾たちをメロウなソウル風味を帯びた穏やかなフォーク・ポップへとうまく溶け込ませている”とか書いてあって。

で、聞いてみて、まさにその通り。ペダル・スティールを音像の核に据えたアンサンブルと彼女の曲作りの巧みさにすっかりやられた、と。そういうわけです。といっても、ペダル・スティールの導入そのものにはさほど衝撃を受けたわけではなく。

というのも、ほら、ぼくは大滝詠一ファンだから。

特に1970年代後半のナイアガラ・サウンドにとって駒沢裕城さんのペダル・スティールは必須だったというか。当時の大滝作品において、普通のギターでもない、キーボードでもない、コマコさんのペダル・スティールの響きが果たしていた役割は本当に大きくて。そのあたりを浴びるように聞いていた者にとって、特にカントリーとか、そういうものじゃないポップ・サウンドにペダル・スティールの響きが導入されていることに関して違和感はないというか。

と、そんな1970年代ナイアガラ・サウンド・ファンにとっても、まじ、うれしいフェイ・ウェブスターの新作。シークレットリー・カナディアン・レコードに移籍後2作目。2013年、15歳だったころに自費制作した『ラン・アンド・テル』から数えて4作目ということなる。

今回も前作の持ち味そのまま、ペダル・スティールがいい仕事してます。Ⅱ度マイナー・セヴンスとトニックのメジャー・セヴンスを行き来するような、なんともメロウな、ちょびっとネオ・ソウルっぽいというか、そういうフェイ嬢ならではの洗練されたコード進行や旋律、そして年齢のわりにシニカルで、でも年齢なりにロマンチックな、叙情的な歌詞に、ペダル・スティールのなめらかなトーンとハーモニー感覚がものすごくフィットしている。

今回はよりバンド・サウンドにこだわったアンサンブルを聞かせている感じ。ジョージア州アセンズに本拠を置いてオヴ・モントリオールやトロ・イ・モア、キシ・バシ、デント・メイなどを手がけるドリュー・ヴァンデンバーグのプロデュース/エンジニアリングの下、フェイ・ウェブスター本人がギターとヴォーカル、ハロルド・ブラウンがドラム、ブライアン・ハワードがベース、ニック・ローゼンがキーボード、そしてマット“ピストル”ストーセルがペダル・スティールと各種ギター…というベーシックなメンバーを固定。曲によって淡々とホーンが入ったり、さりげなくストリングスが入ったり。

ソングライターとしての成長ぶりも感じさせてくれると同時に、アルバムを作り上げる構成力のようなものも飛躍的に伸びていて。聞いていてなんだかうれしくなってくる。mei ehara が1曲、「オーヴァースレプト」にゲスト・ヴォーカルで参加しているのも素敵。透き通るような歌声とやわらかい日本語の響きが胸に沁みました。

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