
アイ・アム・シェルビー・リン/シェルビー・リン
もう10年選手になると思うけど。
きっと悩んでいるんだろうなとは思う。ジョージ・ジョーンズに見出されるような形でカントリー・フィールドから登場しちゃったことがむしろ仇となっているのか。なかなかビッグ・ヒットにも恵まれないし。ぼくが知る限り、4つ目のレーベルからの通算6作目。そろそろなんとかしなくちゃ…とばかり、今回はシェリル・クロウを手がけているビル・ボトレルをプロデューサーに。アラバマ、メンフィス、カリフォルニアを行ったり来たりしながら心機一転の仕上がりだ。アルバム・タイトルにも気合が入っている。
でね。見方によっては、方向性が中途半端というか、とっちらかってるというか、そう思えないこともないのだろうけど。ぼくはなんだか気に入ったのだ。アメリカン・ポップス・ファンとしてかなり楽しめた。いきなり60年代ガール・グループっぽい三連曲でスタートして、メンフィス系のソウル・ポップみたいなものとか、ルシンダ・ウィリアムスみたいなオルタナ・カントリー曲とか、ちょっとジャジーな曲とか、アコースティック・ギターとストリングス・セクションだけをバックにした"しみる"バラードとかが入れ替わり立ち替わり登場。これを、迷いだと受け取るとそれまでなのだけど、ぼくはわりと素直に受け入ることができた。いい意味でのバラエティ豊かさと解釈できた。
もともとこの人、ストレートアヘッドなカントリー・シンガーだったことはないわけで。いわば、かつてカントリー/フォークをベースにR&Bやオールディーズ・ポップをカヴァーしつつポップ・フィールドでのびのび活躍していたころのリンダ・ロンシュタットに近い感触、ね。音の手触りが似てるというのではなく、たたずまいがそれに近い感じがある。ほぼ全曲、シェルビーとボトレルさんの共作。わりといい曲ぞろいです。FM局が音楽ジャンルごとに細分化されすぎているアメリカではもしかしてまたもや苦戦かもしれないけど、ありがたいことにぼくは日本に住む日本人だから(笑)。ばっちり。応援しますよ。