Disc Review

Half a Hundred Years / Asleep at the Wheel (Home Records)

ハーフ・ア・ハンドレッド・イヤーズ/アスリープ・アット・ザ・ホイール

ヴォーカル/ギターのレイ・ベンソンとスティール・ギターのラッキー・オーシャンズ。フィラデルフィア州ペンシルヴェニア出身の若者二人を中心に、アスリープ・アット・ザ・ホイールなるバンドが誕生したのは1969年のことだ。なんでもウェスト・ヴァージニア州モーガン郡にある人口500人の町、パウ・パウで結成されたらしいとか、眉唾っぽいエピソードも残っている。

そこにドラム/ギター/ヴォーカルのルロイ・プレストンやピアノのダニー・レヴィンらが合流。サイケでアシッドなロック音楽が全盛だった時代に、ちょっとレトロなウェスタン・スウィング的快感の再構築を目指す変わり者カントリー・ロック・バンドとして活動開始。当初はホット・ツナとかアリス・クーパーとかのオープニング・アクトをつとめていたりしたという。

1970年、先日本ブログでも訃報をお伝えしたコマンダー・コディに誘われてカリフォルニア州オークランドへ。ベイエリアのライヴ・シーンに本格参戦した。たまたまそのステージを目にしたヴァン・モリソンが『ローリング・ストーン』紙にお気に入りのバンドとして彼らを紹介したのをきっかけに注目が集まり、1973年にレコード・デビューも実現。1974年にはウィリー・ネルソンの誘いを受け、オークランドからテキサス州オースティンへと本拠地を移した。

と、まあ、そんなふうに歴史をスタートさせたバンドなのだけれど。以来、メンバーチェンジを繰り返しながら、ボブ・ウィルスばりのウェスタン・スウィングをはじめ、フィドルとサックスが軽快なリフを展開するジャンプR&B、テックス・メックス風味のカントリー、ロックンロール、ジャズなど雑多な要素をぐちゃぐちゃに撹拌した独自の音楽を貪欲に演奏し続けてきた。今や結成当初のオリジナル・メンバーはレイ・ベンソン一人になってしまったものの、新たな腕ききメンバーたちを従え、変わらぬ個性を保ちながら今なお現役でばりばり活動中。全米中をくまなくツアーして回り、各地のクラブやボールルームで絶大な人気を博し続けている。

そんなアスリープ・アット・ザ・ホイールの新作がこれだ。『ハーフ・ア・ハンドレッド・イヤーズ』。100年の半分。つまりバンドの50周年を祝う1枚なわけだけれど。でも、今、説明した通り、1969年に結成して、1973年にレコード・デビューだから。どっちから数えてもジャスト50周年ではないじゃん(笑)。

まあ、だいたいそのくらいってこと。1970年結成説もあって、そこからの50周年が新型コロナ禍でちょっと遅れた、と。そういう感じ? その辺のざっくりした判断もまたアスリープ。大好きです。ダン・ヒックス&ヒズ・ホット・リックスやコマンダー・コディ&ヒズ・ロスト・プラネット・エアメンともども、ぼくにとってものすごく大切な存在だ。

いずれにせよ、50周年記念盤。なもんで、縁のある豪華な顔ぶれの音楽仲間たちがこぞってゲスト参加している。ウィリー・ネルソン、ジョージ・ストレイト、エミルー・ハリス、リー・アン・ウーマック、ライル・ラヴェット、そしてコマンダー・コディ&ヒズ・ロスト・プラネット・エアメンのギタリストとしても活躍していたビル・カーチェンなど。彼らが曲によって加わり祝福。ちょっと前まで数年間在籍していたメンバー、ピアノ担当のエミリー・ギンブルのおじいちゃん、ジョニー・ギンブルも協力して衰え知らずのフィドルの腕前を披露していたりして。なんだか楽しい。

さらにうれしいのは、結成当初から1980年代にかけてバンドに在籍していた懐かしい仲間たち、ラッキー・オーシャンズやルロイ・プレストン、そしてレイ・ベンソンとリード・ヴォーカルの座を分け合っていた看板女性シンガー、クリス・オコネルが久々にバンドに合流して元気な様子を聞かせてくれているところ。特にクリスの歌声が楽しめる「イッツ・ザ・セイム・オールド・サウス」とか「マイ・リトル・ベイビー」とか「ザッツ・ハウ・アイ・リメンバー・イット」とか、もうそれだけで、ああ、佳きころのアスリープだなぁ…と。そんな気分になって。たまらない。じんわり胸にしみる。泣けてくる。

他にも、オープニングを飾るレイ・ベンソン作のアルバム・タイトル・チューンとか、ウィリー・ネルソンを迎えたアーヴィング・バーリン作品「マリー」とか、ビル・カーチェンがかつてダン・ヒックスと一緒にやっていた「ワード・トゥ・ザ・ワイズ」の再演とか、軽快なインスト「ザ・ホイール・ブギー」とか、ツアーに明け暮れた半世紀の体験を下敷きにした世界観をエミルーやウィリー翁とともに綴る感動的なラスト・チューン「ザ・ロード・ウィル・ホールド・ミー・トゥナイト」とか、ぐっとくるトラック多し。

全19曲、収められているけれど、後半3分の1くらいは、たとえば「テイク・ミー・バック・トゥ・タルサ」とか「ザ・レター・ザット・ジョニー・ウォーカー・リード」とか「バンプ・バウンス・ブギー」とか「マイルズ・アンド・マイルズ・オヴ・テキサス」とか「ルート66」とか「スパニッシュ・トゥー・ステップ」とか、オリジナル、カヴァー取り混ぜた過去の十八番レパートリーをゲスト交えつつ再演したもの。このあたりはいかにも周年のおまつりアルバムって感じか。

まだまだごきげんな旅、続けてください。

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