Disc Review

Back to the Hive / Jay Gonzalez (Middlebrow Records)

バック・トゥ・ザ・ハイヴ/ジェイ・ゴンザレス

ドライヴ・バイ・トラッカーズの秘密兵器なんだとか。いいなぁ。ドライヴ・バイ・トラッカーズ自体、米ロック界の秘密兵器的な存在な気がするけど…(笑)。

ドライヴ・バイ・トラッカーズといえば、1996年に米ジョージア州アセンズで結成されて以来、世紀を超えてサザン・ロック/カントリー・ロックの快感を伝えてくれ続けている頼もしいバンド。マッスル・ショールズ・サウンドの偉大な担い手のひとり、デヴィッド・フッドの息子であるパターソン・フッドと、彼の子供時代からのアラバマ仲間、マイク・クーリーというという二人の強力なソングライターがバンドの要だ。

ベティ・ラヴェットのアルバム『ザ・シーン・オヴ・ザ・クライム』(2007年)やブッカー・T・ジョーンズのソロ・アルバム『ポテト・ホール』(2009年)で聞かせたサポート・ワークでもおなじみ。ジェイソン・イズベルがかつて在籍していたバンドとして知られているかも。

で、今回の主役であるジェイ・ゴンザレスはそこのキーボード/ギター・プレイヤー。秘密兵器中の秘密兵器(笑)。2012年に出た初ソロ・アルバム『メス・オヴ・ハッピネス』、2015年のEP『ザ・ビター・スイート』に続く彼の新作が届けられた。

かつて初ソロ作を聞いたとき、正直、ぼくはちょっと驚いたものだ。なにせドライヴ・バイ・トラッカーズのメンバーなのだから。この人もきっとアーシーでソウルフルでスワンプでディープな南部ロックンロールを聞かせてくれるのかなと思っていたら。意外なことに、そうしたイメージとはちょっと違う、サンシャイン・ポップ〜パワー・ポップ系の音楽性が全開になっていて。まじ、うれしい誤算だった。

ジェイさんはニューヨーク生まれ。いろいろ調べてみると、なにやら1970年代パワー・ポップの大ファンらしく。アセンズに本拠を移し、2008年にドライヴ・バイ・トラッカーズに加入する以前は、音楽仲間とパワー・ポップ・バンドを組んで活動していたのだとか。そういう流れを引き継いでのソロ活動。この傾向の活動としては、他にも2017年、パターソン・フッドに紹介してもらったというポートランドのパワー・ポップ・バンド、アイリッズのセカンド『OR』にゲスト参加していたり、一緒に7インチ・シングルを出していたり、去年、本ブログでも紹介したエクスプローラーズ・クラブのアルバムにもゲスト参加してみたり…。

というわけで、今回も迷うことなくそっちの流れ。ドライヴ・バイ・トラッカーズの音とはひと味違う、ぐっとキュートでカラフルでマジカルなポップ・アルバムを届けてくれた。オープニングからいきなり、シンセサイザーも導入しつつ少々チープ目に構築した『ペット・サウンズ』オマージュといった感じのバリトン・ギター・インストでスタート。

以降はもう、エミット・ローズというか、ビリー・ニコルスというか、アンドリュー・ゴールドというか、キースというか、タートルズというか、ビッグ・スターというか、マーシャル・クレンショウというか、トッド・ラングレンというか、いや、そもそもポール・マッカートニーというか、ブライアン・ウィルソンというか…。そういう先達からの影響をポジティヴに、色濃くたたえた持ち味を全開にした曲を次々と連ねて。どの曲も楽しい楽しい。

1990年代後半、ドライヴ・バイ・トラッカーズのドラマーだったマット・レインや、何度か加入したり脱退したりを繰り返してきたペダル・スティール・ギター・プレイヤー、ジョン・ネフらも参加してます。これまた今のところCD発売はないみたいで、各ストリーミングおよびAmazonをはじめとする配信サイトでのダウンロード販売のみ。ただ、竹内修くんに教えてもらったのだけれど、バンドキャンプではうれしいことにヴァイナル、扱ってました。やった。発売は6月になっちゃうみたいだけど、ヴァイナルならまさに望むところ。買わなきゃ!

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