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Disc Review

The Legendary Typewriter Tape: 6/25/64 Jorma’s House / Janis Joplin & Jorma Kaukonen (Omnivore Recordings)

ザ・レジェンダリー・タイプライター・テープ/ジャニス・ジョプリン&ヨーマ・コーコネン

のちのサンフランシスコ・シーンで神話を作り上げることになる二人のアーティストが、若き日、むちゃくちゃラフに、カジュアルに、おうちでリハーサルしている様子をとらえた伝説の宅録音源が、ついに初オフィシャル・リリースされましたー! 今年のレコード・ストア・デイに合わせてまずヴァイナルが出て。それに続き、CDも出て。ダウンロード、ストリーミングなどデジタル・リリースもスタートして。

迫力たっぷりのシャウトが魅力の“不滅のロック・クイーン”とか。そういうイメージ語られることが多いジャニスだけれど。この人の基本はブルースというか、フォークというか。そっちのほうで。そういうある種の本音が聞き取れる素晴らしい初期音源集です。

1943年、テキサス生まれのジャニス。信心深い南部の白人家庭でそれなりに厳格に育てられたものの、ティーンエイジャーになったころ友達が持っていたベッシー・スミスやマ・レイニー、ビッグ・ママ・ソーントン、レッドベリーといったブルース/フォーク系アーティストのレコードを聞いて感動。自らもブルースやフォークを歌いたいと決意した。

読書にいそしみ、絵を描き、思索にふけり、南部にまだ根強くはびこる人種差別などに惑わされることなく黒人音楽を愛聴し、自らも歌い…。が、そんな彼女を周囲のクラスメイトたちが変人としていじめ、のけ者にしていたというのは有名な話だ。多感なハイスクール時代に否応なく体験させられた孤独感。無力感。そうしたものがのちの彼女の歌声の背後に潜む悲しみや切なさを育んだのかも。

大学に進むと、フォーク・トリオを組んで本格的に音楽活動。キャンパス内ではいつもオートハープを持ち歩き、気分が乗るとどこでも裸足になって歌い出すなど、エキセントリックな行動でなかなかの有名人だったようだ。そのころ、カリフォルニア州サンノゼで行なわれたフーテナニーに出演していたジャニスのことを見初めたのが、やがてジェファーソン・エアプレインに加入することになるヨーマ・コーコネンだった。

そんな縁もあって、1963年、大学をドロップアウトしサンフランシスコに向かったジャニスは、コンサートに出演する際、よくヨーマにギター伴奏してもらっていたのだとか。1964年、サンフランシスコのノース・ビーチで行なわれるショーでも共演することになり、それに向けてヨーマの自宅でリハーサル。そのときの模様をヨーマは軽い気持ちでオープン・リールのテープレコーダーで記録した。それらの音源を収めたのが本CD『ザ・レジェンダリー・タイプライター・テープ』だ。

もちろん正式なレコーディングではなく、軽いメモのようなもの。ヨーマの妻、マーガリータが演奏の背後でパシャパシャとタイプライターを叩く音まで入っている。ジャニスの死後にこの音源が流出したとき、“ザ・タイプライター・テープ”と名付けられたのはそのせいだ。何世代もダビングを繰り返した音質の悪いブートレッグ・アルバムがファンの間に出回っていた。今回、ジャニス・ジョプリン・エステイトとヨーマ・コーコネンが協力する形でその音源をついに正規盤としてリリース。名マスタリング・エンジニア、マイケル・グレイヴズがいい仕事をして、これまでの劣悪音質のブートとはまるで違う充実の音質へと仕上げている。うれしい。ヨーマ・コーコネンのライナーも付いてます。

ジョージア・ホワイト、ダイナ・ワシントン、ニーナ・シモンらのレパートリーとしておなじみの「トラブル・イン・マインド」、ロニー・ジョンソンの「ロング・ブラック・トレイン」、ホット・ツナのファーストでヨーマ自らも取り上げていたトラディショナルの「ヘジテイション・ブルース」、ベッシー・スミスでおなじみの「だれも知らない(Nobody Knows You When You're Down and Out)」、のちにドキュメンタリー映画『ジャニス』のサントラ盤にテキサス州オースティンでのライヴ・ヴァージョンで収録されたチャーリー・パーカー作「カンサス・シティ・ブルース」(詞はジャニス?)とジャニス作の「ダディ・ダディ・ダディ」。この6曲に短い会話2つを加えた全8トラック。たったそれだけではあるけれど、いやいや、ヨーマさん、よくぞ録っておいてくれました。

この後、いろいろ紆余曲折があって、サンフランシスコのバンド、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーから、リード・シンガーとしてバンドに加入しないかというオファーがジャニスのもとに届き、いよいよジャニスの新章が本格的に始まることになるわけだけれど。ここで聞くことができるのはその前、ロック・フィールドでの本格的活動前夜の若きジャニスだ。

もちろんまだまだ個性を完全に確立するには至っていない時期のものとはいえ、このときのジャニスの初々しい歌声はまぶしい。まじ、宝物です。

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