Disc Review

Live from Madison Square Garden, New York, NY, April 1, 2023 / Bruce Springsteen & The E Street Band (live.brucespringsteen.net)

ライヴ・フロム・マディソン・スクエア・ガーデン、ニューヨークNY/ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンド

さあ、今日から東京はボブ・ディランまつり。朝からウキウキしているわけですが。大阪公演の噂とかはちらちら耳にしているものの、ぼくは今回まだ見ておらず。最新のディランさんがどんなことになっているのか、まだ全然わかっていないもんで。今朝は別のライヴ盤をご紹介しつつ、今夜に向けて盛り上がっていこうかな、と。

現在、鋭意全米ツアー中のブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンド。本ブログでもこことかここですでに大騒ぎさせていただいていますが。

2月1日のフロリダ州タンパ公演を皮切りに、ずずーっと北米各地を巡りながらツアーは続いていて。先日、4月1日には2016年3月以来となるニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン公演があって。4月3日にはブルックリンのバークレイズ・センター公演。そのあと、オハイオ州クリーヴランド、メリーランド州ボルティモアを回って、またニューヨークへ。ちょうど今はロングアイランドでライヴぶちかましているところかな。

相変わらずこの北米ツアーの全公演の模様はばっちりオフィシャル録音されて、公演がひとつ終わるごとにおなじみ live.brucespringsteen.net で有料配信リリースが続いております。で、ぼくもちまちまゲットし続け中。とはいえ、ツアー初盤はわりと頻繁に変更されたりしていたセットリストも、ある時期からはだいぶ固まってきて。しかも最新カヴァー・アルバム『オンリー・ザ・ストロング・サヴァイヴ』からは「ナイトシフト」1曲だけになっちゃっているし。もうこれ以上、大きな変更はないのかな、そろそろゲットしなくてもいいかな…と、さすがに弱気になってきていたのだけれど。

やっぱりニューヨークにやってくると、まあ、地元ニュージャージーに近いってこともあってか、気合いが違うというか。ということで、また新たな途中経過報告です。

4月1日のマディソン・スクエア・ガーデンでは、ついに「ジャングルランド」が今回のツアーで初お目見え! これがやばかった。ごきげんな演奏だった。古くからのEストリート・バンド仲間はもちろん、途中加入のジェイク・クレモンズもクラレンス叔父さんの名ブロウを全力で継承しようと奮闘していて。聞いていて思いきりアガった。下に複数のオーディエンス・ショットをつないだ涙ぐましい「ジャングルランド」@マディソン・スクエア・ガーデンの映像、貼っておきます。以前貼ったタンパ公演の映像みたいに消されちゃわないうちに、どうぞ。

ブルックリン公演では「都会で聖者になるのはたいへんだ(It’s Hard to Be a Saint in the City)」が初登場。やばい。こちらも盛り上がる。この後、いよいよ4月14日、ヨーロッパへと旅立つ前、北米ツアーとりあえずの最終公演が地元ニュージャージーで行なわれる予定。どんなことになるのかなぁ。楽しみだ。

今回のツアー、いろいろな土地でのライヴ・レコーディングを聞きまくってきて、いくつものかっこいい瞬間を体験させてもらってきたけれど。初日からずっと歌われている「ラスト・マン・スタンディング」の前に、スプリングスティーンはこんなことをMCしている。毎回ちょっとずつ違うのだけれど、ニューヨーク公演のものを元にざっと訳してみると——

「1965年のことだ。俺は15歳だった。ギターを始めて半年ほどたったころ。ある夏の午後、うちのドアをノックする音が。そのころ俺の妹とデートしていたハイスクールの友達、ジョージ・シースだった。妹から俺がちょっとギターを弾けるらしいと聞きつけて、彼のバンドのオーディションを受けないかと誘ってきた…」

と、初めてのバンド体験のスタート地点を述懐しつつ、こう続ける。

「若き日、最大の冒険だった。俺は初めてリアルなロックンロール・バンドに加入したんだ。1965年、66年、そして67年。3年間、バンドが続いた。ティーンエイジャーにとっては永遠みたいな期間だ。すべての時間がスクール・オヴ・ロック〜ロックの学校だった。アメリカの歴史にとっても爆発的な時代。ロック・バンドに参加するには絶好の時代だった。俺たちはシャンプーのボトルに書かれていた商品名をバンド名にした。ザ・キャスティールズ。いい響きだろ?」

そして話は現在へ——

「あの夏の午後から50年。また別の夏の日、俺はジョージの死の床に立ち会っていた。彼は晩年、肺がんと闘い、余命いくばくもなかった。そして、俺は気づいたんだ。彼が亡くなると俺はあのちっぽけなバンドを一緒に組んだ仲間の中で最後の生き残りとして取り残されてしまうのだな、と。死者が生きている者に最後に与えてくれる偉大な贈り物は、視野を広げてくれることだ。15歳のころ、すべては“明日、明日、明日”、そして“こんにちは、こんにちは”だった。が、時を経て、多くの“さよなら”を経験して…。今、一瞬一瞬を確かに生きることがどれほど大切かを誰もが実感する。だから自分に優しく、愛する人に優しく、そして自分を取り巻くこの世界に優しくするんだ」

若き日と変わらぬロックンロールへの情熱と、年輪を重ねた者にしか語ることができない深遠な人生観と。その両者が共存するブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンドの最新ツアー。先日のジャクソン・ブラウンのコンサートでも思ったことだけれど、優れたベテラン・ミュージシャンのライヴってのはそういう両極を分かちがたく感じさせてくれる。だから、たまらないのだ。

さて、今夜のボブ・ディランはどんなことを感じさせてくれるのか。もちろんMCはないだろうけど。音楽で何を伝えてくれるのか。何を思い知らせてくれるのか。まじ、楽しみです。

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