Disc Review

The Cradle of All Living Things / Chip Taylor (Train Wreck Records)

ザ・クレイドル・オヴ・オール・リヴィング・シングズ/チップ・テイラー

ボブ・ディラン。東京公演初日。見ました。楽しかったなぁ…。

ライヴ評を依頼されたりもしているので、詳しくはまた機会を改めて書くことになりますが。なんか、とにかくディランさんの機嫌がすごくいいみたいで。見ているこちらもうれしくなっちゃうというか。

来日直前、ハマ・オカモトくんのFM番組のディラン来日特集コーナーに出演させていただいたことがあって。そのとき、近ごろのディランはMCほとんどしないので“サンキュー”とか言った日にゃそれだけで事件ですよ、世界に配信されちゃいますよ…的な話題で盛り上がったのだけれど。

昨夜のディランさん、連発してました。“サンキュー”を。東京公演に先立って行なわれた大阪3公演をすでにご覧になった方にうかがったら、初日はコンサートの最後に“サンキュー”1回だったらしいけど、2日目、3日目とだんだん回数が増えてきて。ディランが唯一、ヴォーカル以外の言葉をいっぱい発するメンバー紹介も少しずつ饒舌になってきたのだとか。

昨夜のメンバー紹介もものすごくたっぷりだったし。ベースのトニー・ガーニエと“次どの曲だっけ?”みたいな私語交わしたりまでして。歌いながら笑ったりもしていたし。なんかいいことありましたかね?(笑)

“サンキュー”ごときで何を言ってるの? とか笑われそうだけれど。熱心なディラン・ファンの中には“サンキュー”の回数でそのコンサートの出来を判断するなんて人もいるくらいで。バカにはできない。

開演前のBGMはいっさいなし。照明が落ちるとベートーヴェンの9番が鳴り響き、メンバーが出てきてコンサートが開幕。新作『ラフ&ロウディ・ウェイズ』の収録曲中、別立てになっていた「最も卑劣な殺人(Murder Most Foul)」以外の9曲すべてを核に、映像作品『シャドウ・キングダム』でも再演していた過去曲を5曲、それ以外の過去レパートリー2曲、グレイト・アメリカン・ソングブックもののカヴァーが1曲…という計17曲。

1曲目「川の流れを見つめて(Watching The River Flow)」では、PAがまだ手探りだったのか、ディランのヴォーカルがちょっと奥に引っ込んじゃっていたけれど、2曲目「我が道を行く(Most Likely You Go Your Way and I'll Go Mine)」以降は絶好調。81歳という年齢を感じさせないと言うべきか、81歳ゆえと言うべきか、とにかく凄みのあるストーリーテラーぶりを存分に炸裂させていた。一気にたたみかけたり、かと思えば溜めまくったり、伸縮自在のヴォーカルに翻弄されまくりですよ(笑)。特に「マスターピース(When I Paint My Masterpiece)」の改訂版の歌詞、ラスト直前に出てくる“beautiful”って語を“ビューーーーーーーーティフォー”って歌ったとことか、しびれたなー。

「マスターピース」ではハーモニカも吹いたし。ディランが次どう出るのか、どう歌うのか、どう弾くのか、全員が彼の一挙手一投足に注目しながら演奏を繰り出すバンドとのコンビネーションもスリリングで。最高でした。今夜も行くぞ! 盛り上がるぞ! 楽しみだ。チケット、まだ大丈夫みたいなので、お暇がある方、気が向いたらぜひ。

と、そんな感じなもんで。ディラン以外の歌声に接する気があんまり起きない朝です。外じゃ不穏なくらい強い風が吹きまくっているし。サイレンも鳴ってるし。81歳のディランを超える、さらなる人生の先輩、現在83歳のチップ・テイラーの新作2枚組をざっくり、軽くご紹介して心を落ち着けましょう。

チップ・テイラーがどんな人なのかは、本ブログでもこことかここに、雑にではありますが、あれこれ書いたので、そちらをご参照ください。そんなチップ・テイラーの新作はギターのジョン・プラタニアと、ノルウェーのマルチ・インストゥルメンタリスト、ヨラン・グリニといういつもの仲間とともに編み上げた作品。真夜中、訥々と何かを静かに打ち明けるように、小声で歌ったりしゃべったり。いくつもの愛情、後悔、忠告、同情、謝罪、そして死などについて赤裸々かつ哲学的に綴った自伝的な内容だ。

やはりノルウェーのアメリカーナ〜カントリー系シンガー・ソングライター、何て読むのか全然わからない Hege Brynildsen さん(ヘゲ・ブライニルドセン、かな)とのデュエットも。

「オー・イット・フィールズ・カインダ・ディファレント」って曲でチップ・テイラーは“フィーリングがあればいい/チューニングなんかどうでもいい/古いエルヴィスとメンフィスの曲を聞かせてくれ/そして古いジョン・プラインも部屋に残しておいてくれ…”とかつぶやくように歌っていて。直後、わざとピアノのミスタッチが聞かれたり。沁みました。

徹頭徹尾、囁き声なのがとてつもない凄みを味わわせてくれます。

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