Disc Review

For Real / Tom Petty (Geffen/UMG)

BestPetty

フォー・リアル/トム・ペティ

昨夜のCRT、本秀康くんを迎えての毎年恒例ジョージ・ハリスンまつり、多数のご来場、感謝です。今年も楽しかった。特にジョージがらみの大ネタがない年のほうが、本くんのマニア気質が炸裂するようで。細かいところへの分け入り方とか、視点のねじれ具合とかが露わになって、むちゃくちゃ盛り上がります(笑)。

間もなく告知も更新しますが、来月は、げっ、また来日してくれるの? こないだこれがもう最後の来日って言ったじゃんか、でもうれしいっす…の、エリック・クラプトンがテーマ。CRTギター長屋シリーズでもおなじみの中森泰弘、青山陽一、ニシイケタカシ、3人のギタリスト勢揃いでお届けします。そちらもぜひお楽しみに!

で、イベント終了後、軽く乾杯しながらSpotifyのジョージ・ハリスン・ラジオをBGMとして流していたんだけど。ジョージ本人の曲やビートルズの曲などに交じって関連作品としてトム・ペティの曲も何曲か流れて。ああ、やっぱこの人もいいよなぁ、しみるよなぁ、と改めて胸ときめかせたのでした。ジョージも、トムさんも、もういないのか…。

で、そのトム・ペティ。CD2枚組『ザ・ベスト・オブ・エヴリシング』が3月にリリースされるとアナウンスされていて。これ、ハートブレイカーズを率いた音源はもちろん、ソロ名義、さらにはマッドクラッチ名義のものまで、全キャリアを総ざらいした感じのベスト盤なのだけれど。

あ、ベスト盤? これまでにもいろいろ出てたよね…と、油断するとやばい。ブートレッグとかでも聞いたことがなかった未発表音源が2曲入っているのだ。しかも、ストリーミングとかダウンロードがメインの今の時代、アルバム全体を買わなくても大丈夫だから。“差分”だけでOK。コンピュータのソフトのアップグレードみたいな感覚で未発表音源だけ入手できる。先行リリースされちゃってるし。

先行リリースされた未発表音源。ひとつは『サザン・アクセンツ』の収録曲「ザ・ベスト・オブ・エヴリシング」の未発表ヴァージョン。で、もうひとつが「フォー・リアル」という曲。なんでも、2000年に編まれたベスト盤『アンソロジー〜スルー・ザ・イヤーズ』に収録するために「サレンダー」を新録した際、一緒にレコーディングされたものだとか。

雑誌のためにやったんじゃない/ビデオのためにやったんじゃない/CEOのためでもない/真実のためにやった/自由のためにやりたかった/自分のためにやった/それがすべて本当だったから/真実のためにやった/そして、君のためにやった

みたいなことを歌っていて。自らの心意気というか。トム・ペティ、やっぱりかっこいいなと思う。衝撃の訃報の後にリリースされたものとしては、去年出た4枚組の『アメリカン・トレジャー』に続く盤ということになるけれど。あちらがかなりマニアックな選曲になっていたのに対して、今度出るベストは未発表もの入りとはいえ、剛速球の代表曲集という感じ。

なので、生前あまりトム・ペティに耳を傾けなかったというリスナーの方が彼の素晴らしい音楽世界に触れるには絶好かも。そういう方は“差分”だけとか言わず、3月になったら2枚組まるごと行っちゃってください。キャメロン・クロウの書き下ろしエッセイとかも付いてるそうです。

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