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Disc Review

I Ran Down Every Dream / Tommy McLain (Yep Roc Records)

夢から醒めて/トミー・マクレイン

ティアドロッパーって、ゲームの話っスか? とか言われちゃったりして。もうおじさんにはよくわからない時代なわけですが。

洋楽好きなお古い世代のおっさんにとって、ティアドロッパーといえば、ゲームのことでも、バスケットボールのことでも、サングラスのことでもなく、サニー&ザ・サンライナーズ、クッキー&ザ・カップケイクス、ジョー・バリー、ジョニー・アラン、フレディ・フェンダー、ダグ・サーム、リッチ・マイナスなど、テックス・メックス〜スワンプ・ポップ系のアーティストたちによる、リスナーの涙を誘う必殺のお涙頂戴6/8(ハチロク)バラードのこと。

そんな必殺ティアドロッパーのひとつ、「スウィート・ドリームス」を1966年に全米15位にランクさせた男がトミー・マクレイン。1940年、米ルイジアナ州北東部の町、ジョーンズヴィル生まれのスワンプ・ポップ・アーティストだ。

ヒットチャート的には後続ヒットにあまり恵まれず、いわゆるワン・ヒット・ワンダー、つまり一発屋と認定される存在ではあるのだけれど。以降も着実なペースでレコード・リリースは続けていた。バック・バンド“ミュール・トレイン・バンド”を率いて1970年代いっぱいいくつもの傑作アルバムを制作したり、映画に出たり、しぶとく多彩に活動。2007年にはルイジアナ・ミュージック・ホール・オヴ・フェイムの殿堂入りも果たしている。

と、そんな南部の重鎮が、なんと82歳を迎えた今年、1979年の『バックウッズ・バイユー・アドヴェンチャー』以来43年ぶりとなる驚きの新作アルバムをリリースしたのでした。それが本作『夢から醒めて(I Ran Down Every Dream)』だ。

プロデュースはスワンプ・ポップのスーパー・グループ的存在であるリル・バンド・オ・ゴールドの中心メンバーとしておなじみ、弟子筋のC.C.アドコック。アドコックはリル・バンド・オ・ゴールドのレコーディングにマクレインを迎えたりもしているけれど、今回は師匠名義の作品をがっちりサポートしてみせた。

バックを支えるのはアドコック(ギター)の他、リル・バンド・オ・ゴールドのメンバーでもあるウォーレン・ストーム(ドラム)とスティーヴ・ライリー(アコーディオン、フィドル)、サニー・ランドレス人脈のデヴィッド・ランソン(ベース)ら。マクレイン本人もキーボードをプレイしている。曲によってアイヴァン・ネヴィル(コーラス)、ジョン・クリアリー(キーボード)、デニー・フリーマン(オルガン)、ヴァン・ダイク・パークス(アレンジ&アコーディオン)、オーギー・メイヤーズ(ヴォックス・オルガン)、ミッキー・ラファエル(ハーモニカ)らのクレジットも。

かつてミュール・トレイン・バンドを率いて自ら1970年代にリリースした「ノー・トゥモロウズ・ナウ」や「イフ・ユー・ドント・ラヴ・ミー」の再演なども含め、収録曲の大半はトミー・マクレインの自作曲だ。ボビー・チャールズやファッツ・ドミノのカヴァーもあり。ファッツ・ドミノの「ビフォア・アイ・グロウ・トゥー・オールド」もマクレインがかつて1960年代にカヴァー・シングルをリリースしたことがある曲の再カヴァーだ。加えて、エルヴィス・コステロが2曲をマクレインやアドコックと共作。そのうちアルバム表題曲「アイ・ラン・ダウン・エヴリ・ドリーム」のほうではコステロ自身がデュエット・パートナーもつとめた。今年の6月、対バンで全米ツアーを行なったニック・ロウも1曲共作している。

トミーさん、過去に二度の心臓発作に襲われたこともあるのだとか。昨年、2021年には本作のレコーディングにも参加している盟友ウォーレン・ストームとデニー・フリーマンが亡くなっている。南部を襲ったハリケーンや、自宅の火災も経験した。そうした不運や心痛を受け止めつつのアルバム制作。これが引退作、キャリアのラストを締めくくる1枚という覚悟らしい。ぼくたちもそれをしっかり受け止めたい。で、泣きたい。

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