アティテューズ+グッド・ニュース(2022年リマスター)/アティテューズ
あれは確か大学の仲間、ナカムラくんの下宿でのことだったか。ミズグチの下宿だったか。どっちかのおうちに遊びに行って、どっちかが買ったばかりだったジョージ・ハリスンの新作『ジョージ・ハリスン帝国(Extra Texture)』を聞かせてもらっていたときのこと。だから1975年か。
聞きながらジャケット裏のクレジットをじっと眺めていたら、その右下のほうに“Danny Kootch doesn't appear on this record”って一文が入っていて。なんだ、こりゃ…と思ったことをよく覚えている。
まあ、その一文に続いて、次行に“Also not appearing on this record: Derek Taylor, Peter Sellers, Chuck Trammell, Dino Airali, Eric Idle, Dennis Killeen and Emil Richards”というクレジットもあって。ジョージらしいひとひねりだなぁと思ったものの。それにしても、なんでダニー・コーチマーだけ別立てで不参加クレジットがあるんだろう、だいたいクーチってジョージのそれまでのアルバムに参加したことあったっけ? と。首を傾げたものです。
その答えがわかったのは翌年。1976年。ジョージ・ハリスンが設立したレコード・レーベル“ダーク・ホース”からアティテューズという新バンドのデビュー・アルバムがリリースされたときだった。このバンド、ご存じの通り、ダニー・コーチマー(ギター)、ジム・ケルトナー(ドラム)、ポール・ストールワース(ベース)、デヴィッド・フォスター(キーボード)という名うてのセッション系ミュージシャンたち4人がロサンゼルスで結成したもの。
で、4人中、ケルトナー、ストールワース、フォスターの3人が『ジョージ・ハリスン帝国』の半分くらいをバックアップしていた。ミュージシャン・クレジットにも“David Foster, Jim Keltner & Paul Stallworth appear courtesy of Dark Horse Records”という一文があって。ということはこのアルバムのレコーディングが行なわれた1975年前半にはすでに彼らはアティテューズを結成していて、ダーク・ホース・レコードとも契約していて、もちろんクーチもバンドには加わっていて。でも、ジョージのレコーディング・セッションにおけるギタリストとしてはジェシ・エド・デイヴィスがいたし、ジョージ自身もギタリストだし…。てことで不参加。それゆえの別立て不参加クレジットだった、と。そういうわけだったのか。
そんな事実を知ったアティテューズのファースト・アルバム。日本でもキング・レコードから国内盤が出て。それ買って。聞いて。盛り上がりました。A面1曲目の「エイント・ラヴ・イナフ」を耳にした瞬間、ちょっとレゲエっぽいグルーヴを取り入れつつの、ファンキーで、でもどこかさわやかなアプローチにいきなりハマった。クーチの盟友、ジェイムス・テイラーが翌1977年、アルバム『JT』でカヴァーすることになる「ハニー・ドント・リーヴ・L.A.」も入っていたし。1曲、ジェシ・エド・デイヴィスも客演していたし。新時代のMGズだなぁ…とか思いつつ楽しんだ1枚だった。
アティテューズは1977年、これまたポップでファンキーなセカンド・アルバム『グッド・ニュース』をリリース。それを最後に自然消滅してしまうことになるのだけれど。こっちも当時、本当によく聞いた。「スウィート・サマー・ミュージック」とか大好きだった。
と、そんなアティテューズの2作を含め、1974〜1977年、ジョージのダーク・ホース・レコードからリリースされたジョージ以外の所属アーティストたちによる諸作が、なんとこのほどリマスターされ、まとめてデジタル・リリース(ストリーミング、あるいはデジタル・ダウンロード)された。ラインアップとしては——
レーベル契約第1号となった英ポップ・デュオ、スプリンターの『ザ・プレイス・アイ・ラヴ』(1974年)と『ハーダー・トゥ・リヴ』(1975年)と『トゥー・マン・バンド』(1977年)。
ジョージのインド音楽の師としておなじみ、ラヴィ・シャンカールの『シャンカール・ファミリー&フレンズ』(1974年)と『ラヴィ・シャンカールズ・ミュージック・フェスティヴァル・フロム・インディア』(1976年)。
LAの4人組、ジャイヴァのセカンド・アルバム『ジャイヴァ』(1975年)。スプーキー・トゥースやウイングスのメンバーとしてもおなじみ、ヘンリー・マカロックの『マインド・ユア・オウン・ビジネス!』(1975年)。ファイヴ・ステアステップスがグループ名を“ステアステップス”と短縮してリリースした『セカンド・レザレクション』(1976年)。そのステアステップスの一員で、セッション・ギタリスト/ベーシストとしても活動していたケニー・バークの『ケニー・バーク』(1977年)。
それにアティテューズの2作を加えた11作が、このほど最新リマスター音源でサブクス入りしたというわけだ。うれしいじゃないですか。ちなみにリンク先は全部Apple Musicです。すみません。例のニール・ヤングの一件以来、ヤング先輩に倣って本サイトからも基本的にはSpotifyへのリンクを外したもんで。どうしてもSpotifyがいい方は各自でチェックしてください。
せっかくの最新リマスターだし。フィジカルでの再発も改めて、ね。ぜひ!