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Disc Review

Sharecropper's Son / Robert Finley (Easy Eye Sound)

シェアクロッパーズ・サン/ロバート・フィンリー

5年くらい前、スクィーレル・ナット・ジッパーズのジムボ・マサスのプロデュースの下、この人、ロバート・フィンリーの“遅すぎた”デビュー・アルバム『エイジ・ドント・ミーン・ア・シング』が出たとき、けっこうぶっとんだものだ。

アルバム・タイトル通り、歳なんか関係ねぇ…と。このデビュー作が出たときフィンリーさん、すでに還暦超えの62歳。ルイジアナ生まれで、11歳のころ、リサイクル・ショップで買ったギターを始めて音楽の世界へ。といっても、フルタイムのミュージシャンとして活躍するには至らず、兵役について技術者として働いたり、大工さんとして稼いだりしながら、家族とゴスペル・グループを組んで歌ったり、ストリート・ミュージシャンをやったり…。

ただ、緑内障のため法的に盲目と認定され、大工仕事などを継続することができなくなり、地道に路上などで音楽活動。2015年、高齢のブルースマンたちを支援する非営利団体“ミュージック・メイカー・リリーフ・ファウンデーション”がそんなフィンリーをようやく発見し、少しずつ本格的に各地のパッケージ・ショーなどに出演できるようになっていったという。

で、2016年、前述のデビュー・アルバム『エイジ・ドント・ミーン・ア・シング』をインディからリリース。ぼくはバンドキャンプで見つけたんだっけ。大半の収録曲がフィンリー作のオリジナルで。ブルースというよりもサザン・ソウルという感じの持ち味をメインに炸裂させた1枚に仕上がっていた。すげえじいさんが隠れていたもんだな、とうれしい驚きを覚えたものだ。

その後、フィンリーの存在がブラック・キーズのダン・オーバックの耳に届き、オーバックとの共同作業が始まる。まず2017年、オーバックが手がけたグラフィック・ノヴェル『マーダー・バラッズ』のサウンドトラック・アルバムにフィンリーがヴォーカルで参加。これをきっかけにいよいよオーバックのプロデュースで新作フル・アルバムの制作がスタートした。でもってその年の暮れ、セカンド・アルバム『ゴーイン・プラティナム!』をオーバックのイージー・アイ・サウンドからリリース。これもかっこよかったー。

その後“イージー・アイ・サウンド・レヴュー”なるパッケージ・ツアーに参加して世界中を回ったりしたものの、しかし、このセカンド・アルバムのタイトル通りに大当たりすることも残念ながらなく…。ただ、あまり売れなかったことを逆手にとって、2019年、例のタレント発掘番組『アメリカズ・ガット・タレント』に出演。盲目の無名老ソウル・シンガーとして審査員たちの度肝を抜き、セミ・ファイナルまで進出する快挙を成し遂げた。

で、今ここ…ってことになるのだけれど。こうした追い風を受けつつ、2021年5月、再びオーバックのプロデュースの下、サード・アルバムにあたる本作『シェアクロッパーズ・サン』が届けられた、と。そういうわけです。

アルバム・タイトル通り、人種差別の激しい南部の小作農家の息子として生まれた自身の物語を根底に据えた1枚で。今回もブルース、ゴスペル、サザン・ソウル、ニューオーリンズR&Bといったブラック系ルーツ・ミュージックの味はもちろん、スワンプ・ロック、カントリー・ソウルといった白人系のルーツものの要素も強くたたえた仕上がり。このあたりは間違いなくダン・オーバックならではのセンスというか。オーバックがイージー・アイから夜に送り出す作品群――ヨラとか、シーロ・グリーンとか、マーカス・キングとか、アーロン・フレイザーとか、トニー・ジョー・ホワイトとか、そのあたりのすべてに共通する感触だ。

いつものオーバック・プロデュース作同様、ナッシュヴィルのイージー・アイ・スタジオでのレコーディング。ボビー・ウッド(キーボード)、ジーン・クリスマン(ドラム)といった伝説のメンフィス・ボーイズの面々を筆頭に、ナッシュヴィルの名手として知られるベテランのビリー・サンフォード(ギター)、デイヴ・ロー(ベース)、ニック・モーヴション(ベース)らががっちりサポート。パット・マクラフリン(ギター、コーラス)が曲作りも含めて大きく絡んでいる。

南部音楽の奥深さを改めて思い知ることができる痛快な1枚。苦節…何年になるんだろう。でも、フィンリーさんも今の状況に充実した手応えを感じ取っているようで。アルバム中盤に収められた情熱的なミディアム・バラード「マイ・ストーリー」で、“だから俺は自分の物語を語っているんだ。そうすれば、お前も夢を見始めることができるだろう?”とか歌っていて。クサいっちゃクサいけど。このじいさんに歌われたら、ね。なんかぐっと来ちゃったりして。

んー、ぼくの2〜3歳、年上なだけなんだけどねぇ(笑)。どうも人としての深みと渋さが違うな。反省反省…。

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