Disc Review

CeeLo Green…Is Thomas Callaway / CeeLo Green (Easy Eye Sound/BMG)

シーロー・グリーン…イズ・トーマス・キャラウェイ/シーロー・グリーン

6月末にストリーミング配信がスタートした1枚。タイミングが悪くて紹介しそびれていたけれど、フィジカルCDが明日リリースされるみたいなので、遅ればせながら取り上げておきます。グッディ・モブのメンバーとしてはもちろん、ソロとして放った「ファ★ク・ユー」の大ヒットで、あるいはデンジャー・マウスとの異色ユニット、ナールズ・バークレイでの活躍などでもおなじみの巨漢ソウル・マシーン、シーロー・グリーンが2015年の『ハート・ブランシュ』から5年ぶりに放つ6作目のソロ・アルバムだ。

前作ではジョン・ベリオン、マーク・ロンソン、チャーリー・プースらを制作陣に迎えていたけれど、今回組んだ相手はなんとザ・ブラック・キーズのダン・アワーバック。テネシー州ナッシュヴィルにあるアワーバックのイージー・アイ・スタジオで、地元ナッシュヴィルはもちろん、アラバマ州マッスル・ショールズを本拠とするセッション・ミュージシャン陣などを迎えつつ制作された。昨日紹介したシーシック・スティーヴ同様、こちらも一発録りを基調に、古き良きオールドスクールなやり方でレコーディングされたらしい。

けっこう古くからの知り合いだったらしきグリーンとアワーバックながら、ちゃんと組んで共同作業をしたのは今回が初。アワーバックは常日頃グリーンのソングライティングを賞賛しており、いつかコラボレートしたいとよく口にしていた。それを耳にしたグリーンが、アワーバックの誘いを受ける形で2年ほど前に曲作りセッションがスタート。半年ほどにわたってグリーンがナッシュヴィルをちょいちょい訪れ、アワーバック宅でコーヒーやお茶を飲んだり、音楽のこと、日々の暮らしのことなど、あれこれダベったりしながら曲のテーマを決めて、カジュアルに共作を続けていったのだとか。

当初、特にアルバムを作ろうと具体的に思い描いていたわけではなかったようだが、いい曲がたくさんできたこともあり、じゃ、レコーディングしちゃおうか、と。そういうことになってできあがったのが本作『シーロー・グリーン…イズ・トーマス・キャラウェイ』だ。トーマス・キャラウェイというのはグリーンの本名。このアルバム・タイトルからもわかる通り、これまではあまり表出することがなかったグリーンの“素”の要素というか、内省というか、そういったものにも少し踏み込んだ仕上がりになっている。

ある種のルーツ帰りというか。そういう意味でも、なんとなく、んー、1968〜69年くらいの感触? あ、いや、もちろんシーロー・グリーンは1974年生まれだから、それだと生まれる前の記憶ってことになっちゃうのだけれど。自分を育んだ様々な音楽要素の根っこの部分にアプローチしているというか。

といっても、なにせダン・アワーバックとのタッグだから。その当時のニュー・ソウルとかスウィート・ソウルとか、あるいはもっと根源的なゴスペルとか、そういった要素を掘り起こすだけでなく、たとえば1960年代末にメンフィスのアメリカン・サウンド・スタジオで意欲的な音作りに挑んだエルヴィス・プレスリーとか、ジミー・ウェッブと組んだグレン・キャンベルとか、他にもB.J.トーマスとか、ジョー・サウスとか、ダスティ・スプリングフィールドとか、ニール・ダイアモンドとか、そういった当時の意識的な白人アーティストたちの試行錯誤を想起させるアプローチも随所に聞かれて。ブルース・スプリングスティーンの『ウエスタン・スターズ』とある意味同じ方向性。実に面白い。

メンフィス/ナッシュヴィル系の重鎮セッション・ミュージシャン、ボビー・ウッド(キーボード)やジーン・クリスマン(ドラム)、ビリー・サンフォード(ギター)、ラス・パール(スティール・ギター)らの名前もクレジットされている。全12曲中11曲がグリーンとアワーバックの共作。残る1曲がアワーバックと、ミュージシャンとしても参加しているボビー・ウッドと、カントリー系のジョン・アンダーソンとの共作曲。ボビー・ウッドはこの他さらに4曲、共作者として名を連ねている。やはりカントリー系のポール・オーヴァーストリートや、エンジニア/プロデューサーとして知られるデヴィッド・ファーガソンもそれぞれ2曲に参加。

というわけで、ロケーション的にも参加人脈的にもコンセプト的にも、アワーバックががっつりバックアップして去年リリースされたUKの黒人女性シンガー、ヨラの傑作アルバム『ウォーク・スルー・ファイア』の完璧な続編という感じ。悪かろうはずがないです。

ちなみに、あとひとり、2曲の共作ソングライターとして、やはりヨラのアルバムにもクレジットされていた“ロジャー・クック”って名前も入ってるんだけど。これ、あのロジャー・クック? クック&グリーナウェイの? 1976年に隠れた傑作アルバム『オールライト』を出した? 英国出身で、もう80歳くらい? 確かに現在はナッシュヴィル在住のはずだし。それっぽい。だとしたら、さらに一層うれしいことです。

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