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Disc Review

Love & Peace / Seasick Steve (Contagious Records)

ラヴ&ピース/シーシック・スティーヴ

昨夜、東京・新宿のRock Cafe LOFTでDJというか、BGM係というか、レコード当番というかをさせてもらいました。現在最悪の感染スポットってイメージの強い新宿歌舞伎町のお店で。もちろん、お店自体はばっちりウイルス対策して、都から要請されている営業時間とかも遵守しながらやっているのだけれど。でも、さすがにお客さん、いないかなぁと思っていたら。

何人か足を運んでくださって。本当にうれしかったです。みんなでちゃんと距離をとりつつ、軽くお酒をいただいたり、おいしいおつまみ食べたりしながら、ぼくのかけるアナログ・レコードを楽しんでいただきました。でも、改めてアナログ盤は重いね。ぼくのDJタイムは2時間くらいだったのだけれど、そこでかけるための盤を全部でかいバックパックに入れて背負っていったら、翌朝、つまりこの記事書いている今、さすがに腰痛いです(笑)。

昨夜のDJテーマは、ピーター・グリーン追悼、ブルース・ロック特集…って感じで。まあ、そんなに厳密な選盤ではなかったけれど、1960〜70年代の英米ブルース・ロックにボブ・ディランの新作とかもちょこっと交えつつの30曲強。プレイリストも軽くメモはしておいたので、機会があったら公開しますね。

で、そういうモードに入っていることもあって。今朝はブルースもののニュー・リリースをご紹介。われらがシーシック・スティーヴ翁の新作。2018年秋に出た『キャン・ユー・クック?』以来1年半ぶりとなる通算10作目『ラヴ&ピース』だ。

今さらながら、スティーヴ翁の歩みをおさらいしておくと。1951年、カリフォルニア州オークランド生まれ。なんか、当初、メジャー・デビューしたころは1941年生まれとか、あえて10歳分くらい老けさせたジジイ演出をしていたけれど、実際は1951年生まれの現在69歳。

7歳のころ、南部のブルースマンと出会い弟子入り。両親は早くに離婚しており母親と暮らしていたが、そんな母親の同棲相手のDVがひどかったため、13歳で家出。ホームレス生活に。16歳のころからストリートで演奏するようになった。が、1960年代半ばの段階で彼の音楽はすでに古臭く、ミュージシャンとして生計は立てられなかったらしい。で、肉体労働したり、セッション・ミュージシャンやったり、レコーディング・エンジニアをつとめたり…。

1980年代にワシントン州シアトルにレコーディング・スタジオを構えて、エンジニアとして活躍。生活も安定してきたおかげで自らのバンド活動も徐々に充実。21世紀に入ると、ノルウェー人である奥さまのたっての希望もあり、彼女の故郷オスロに移住。その地でシーシック・スティーヴ&ザ・レヴェル・デヴィルズを結成。2003年に初アルバム『チープ』をリリースした。

これがヨーロッパでちょっとだけ話題になったものの、翌年、突然心臓発作に襲われて。生死の境をさまよった。が、看護師もつとめていた奥さまのがんばりでなんとか復活。やりたいことはやれるときに思いきりやっておかなければ…という強い覚悟のもと、2006年、アルバム『ドッグ・ハウス・ミュージック』を制作。これをひっさげてジュールズ・ホーランドが司会するテレビ音楽番組に出演し、一気に注目度を上げた。

2007年には50歳代半ばを過ぎていたにもかかわらず、モジョ・アワードの最優秀新人賞を獲得。以降、着実にアルバム・リリースを続けながら現在に至る。2008年にはフジロックにも来た。

自分がなぜ21世紀に入ってから、しかも還暦間近の時期にこれほど人気を獲得できたのかを問われたスティーヴ翁は、「タイミングがよかったんだろう。みんなおしゃれなものにうんざりしているのさ。だから、こんなジジイが箱を鳴らして生ギターかき鳴らすのを見たいと思うんだ」と答えていたけれど。本作『ラヴ&ピース』も、要するにそういう1枚だ。

愛と平和。もうこのタイトルだけで、古臭いっちゃ超古臭く、でも、実は今のやさぐれた時代にいちばん必要なものを訴えかけてくる。スティーヴ翁の枯れたヴォーカルと相変わらずローダウンでダーティなギター・プレイをサポートする基本的な顔ぶれは、ノース・ミシシッピ・オールスターズのルーサー・ディッキンソン(ベース、ギター、シガー・ボックス)、ダン・マグナソン(ドラム)、マルコム・アリソン(ハーモニカ)。曲によってキーボードが加わったりもする。

2インチ・アナログ・テープを使った、というインフォメーションもあったので、古き良きアナログ24チャンネル録音かも。そこからハーフ・インチのアナログにトラックダウンされて、ラッカー盤にカッティングされたのだとか。もちろんコンピューター・ミックスなどはいっさい使用せず。いいね。痛快。

自身、エンジニアとして1960年代から経験を積んできたスティーヴ翁ならでは。ごきげんなブギー、ブルース、ロック、フォーク、アメリカーナ。そう。音楽的なことも含めて、ここにこそ未来があるのだよ。たぶん。まじに。

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