Disc Review

epic Ten / Sharon Van Etten (Ba Da Bing Records)

エピック・テン/シャロン・ヴァン・エッテン

4月の半ばにストリーミング/ダウンロードがスタートした作品なもんで。なんだかタイミングを逃した感じの紹介になってしまったのだけれど。CDとかLPとか、フィジカルは6月に入ってからのリリースらしく。なんか、いつ取り上げようか、うだうだ迷いまくったあげく(笑)、その狭間って感じの今、この5月末に紹介させていただくことにしました。

てことで、2010年にリリースされたシャロン・ヴァン・エッテンのセカンド・アルバム『エピック』の発売10周年を祝う再発盤。その名も『エピック・テン』。

シャロンさんといえば、最近エンジェル・オルセンを誘って制作した夢のコラボレーション・シングル「ライク・アイ・ユースト・トゥ」を出したばかり。ウォール・オヴ・サウンド的な深い音像をともなったごきげんにいい曲で。ビデオ・クリップも素敵だった。なもんで、次なる新たな動きが大いに気になるところ。前作『リマインド・ミー・トゥモロウ』からも2年以上が過ぎちゃったし。

でも、そのあたりに思いを馳せてあれこれ予測しつつ、まずは10年前に立ち返っていったん落ち着け、と。そんな感じかな。まあ、このところ40周年だ、50周年だ…と、ド派手な周年盤が多いもんで。10年くらいだとあまりにも近すぎる気がしちゃったりしがちではありますが。

でも、もちろん10年だって立派な節目。そんな節目にあたって、シャロンさん、オリジナル・アルバムをそのまま復刻するだけでなく、オリジナル・アルバムに加えて、収録曲7曲それぞれを興味深い顔ぶれのアーティストたちが新たにカヴァーした新録音源をオリジナル曲順通りに並べたスペシャル・ディスクと抱き合わせた形でよみがえらせたのでありました。

そのカヴァー・ディスクがなかなかに興味深い仕上がりだ。ビッグ・レッド・マシーン(ボン・イヴェールのジャスティン・ヴァーノン+ザ・ナショナルのアーロン・デスナー)、アイドルズ、フィオナ・アップル、コートニー・バーネット&ヴァガボン、ルシンダ・ウィリアムス、シャミール、セイント・パンサーによるリメイクで、シャロン・ヴァン・エッテンの、こう、きわめて静かにもかかわらず、確かな手応えとともに聞き手の胸に届く彼女の強い意志と冷徹なまなざしが再構築されていく。

人選がやばいくらい的確で。おかげで、ビッグ・レッド・マシーンのフォーク・ロック感覚から、アイドルズのポスト・パンク感覚、ルシンダ・ウィリアムスの埃っぽいカントリー・ロック感覚、セイント・パンサーのべッドルーム・ポップ感覚まで、その幅広さをすべて10年前のシャロン・ヴァン・エッテンがすでに体現していたんだなという事実もいきいきと再確認できる、まじ理想的な10周年盤です。

2015年の来日公演の濃密さもいまだ忘れらない。また来日してもらえるような、そんな状況に1日も早く戻ってもらいたいものです。2枚組カラー・ヴァイナル、予約しといたほうがいいかな…。

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