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Disc Review

Late Checkout / Dent May (Carpark Records)

レイト・チェックアウト/デント・メイ

2009年、アニマル・コレクティヴが大絶賛…とか、そんなキャッチコピーの下で登場してきたミシシッピ生まれのシンガー・ソングライター、デント・メイ。デビュー作が『ザ・グッド・フィーリング・ミュージック・オヴ・デント・メイ&ヒズ・マグニフィセント・ウクレレ』なんてタイトルだったものだから、グッド・フィーリング・ミュージック好きで、ウクレレ好きなぼくは聞かないわけにはいかず。さっそく手に入れてみたわけですが。

タイトルからして、なんか、こう、ウクレレ・アイク的な、ノスタルジックなグッド・タイム・ミュージック系の人なのかと思ったのに。聞いてみたら、確かにその種の曲も入ってはいるものの、印象的だったのはむしろ、自ら奏でるウクレレとかコーラスとかを多重録音して、リズム隊も加えて、タンバリンとかも鳴らして、曲によってはペダル・スティールとかも導入しつつ、なんというか、ウクレレ版のフィル・スペクター・サウンドというか(笑)、そういう音像を目指したような曲だったりして。

まあ、大きくくくれば今どきのベッドルーム宅録派に分類されるのだろうけど。どうも作る楽曲の手触りが1960〜70年代のポップ・ソングライターたちに近い感じで。ハリー・ニルソンとか、ニール・セダカとか、キャロル・キングとか、エミット・ローズとか、トッド・ラングレンとか、ブルース・ロバーツとか、そういう先達からの影響を大きくたたえていて。ひねくれてるなぁ…というのが第一印象。で、一発でハマりました。

その後、ウクレレへのこだわりとか、そういう細かい設定は捨てて、ビーチ・ボーイズ/ブライアン・ウィルソンやビートルズからの影響をよりストレートに露わにしたアルバム群をぽつりぽつりとリリース。当初はアニマル・コレクティヴのエイヴィ・テアが設立したインディ・レーベル、ポウ・トラックスに所属していたけれど、レーベル閉鎖にともなって、親レーベルにあたるカーパーク・レコードへと移籍。本拠地もロサンゼルスへと移して、2017年、アルバム『アクロス・ザ・マルチヴァース』を制作。相変わらずのエヴァーグリーンなポップ・テイストを披露してくれた。

そんな流れを経て、今回、3年ぶり、通算5作目のアルバムとなる新作『レイト・チェックアウト』が登場した、と。そういうわけです。自ら設立したハネムーン・スイート・レコーディング・スタジオでの録音。サウンド的にはかなり洗練されてきた感触もあり。とはいえ、もちろん適度な宅録感もあえて残されていて。その辺の案配がなんとも21世紀っぽい。敬愛する先輩ソングライターたちの作風をサブリミナル的に埋め込んだメロディと、きっとiPhoneのメモ・アプリ的なツールに走り書きしたのであろう歌詞との共存具合が絶妙だ。

ポップ・ソウル調のグルーヴとアダルト・コンテンポラリーなコード進行とが合体したアップテンポものとか、ちょっとトロピカルなムードをたたえたアコースティックなミディアム・チューンとか、真っ向からのMORバラードとか、多彩な楽曲を満載。いい曲多し。1970年代に初めてアンドリュー・ゴールドやティム・ムーアのアルバムを聞いたときの気分になった。

歌詞のこととかまだ細かくわかっていないのだけれど、この人、ホテルに泊まるたびに備品を持ち帰るのが好きらしく(笑)、そのあたりがオープニングを飾る「ホテル・ステイショナリー」とかに反映されているのかも。アルバム・タイトルも含めて、ホテルという、安らぎとか快適さとかを謳っているくせして無機的な冷たさとか孤独感とかが否応なく漂う、そういう独特な“場”のムードに触発されたコンセプト・アルバムという感じ。多層的な感情の入り乱れ具合が興味深い。まるでバリー・マニロウとかエリック・カルメンが歌いそうな壮大なバラード調のメロディに乗せて“今は全速力/もう過去は振り返らない”とか歌っていたり。なんだ、そのひねくれた取り合わせ(笑)。

デント・メイも今年35歳。10年選手になったけど。いい感じに自信をつけながら歩みを進めているみたい。

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© 2020 Kenta Hagiwara