Disc Review

Psychomania Choppers: Chicano Oldies and R&B Rarities, Vol. 1 / Various Artists (Psychomania Records)

サイコマニア・チョッパーズ:チカーノ・オールディーズ・アンド R&B レアリティーズVol.1/ヴァリアス・アーティスツ

近ごろ“ブラウン・アイド・ソウル”というとK-POPのボーイズ・グループのこと、あるいはK-POP全般のことを表わす用語になっちゃったらしいけど。

何年か前まではアメリカ西海岸に暮らすメキシコ系アメリカ人、つまりチカーノの若者たちによって演奏されるラティーノ・ロック/チカーノ・ロックをはじめ、そういう若者たちの間で熱心に支持され続けてきたシカゴやフィラデルフィアのヴィンテージR&Bやスウィート・ソウルのことを表わす言葉だった。東のイタロ・アメリカンによるブルー・アイド・ソウルに対する、西のチカーノによるブラウン・アイド・ソウル、みたいな。

戦後、メキシコから流れ込んできた若者たちがLA周辺でブラック・ミュージック局を愛聴するようになり、その独特の感覚でとてつもなく魅力的な混合音楽シーンを作り上げた。で、1950年代後半、のちに映画にも描かれたリッチー・ヴァレンスの「ラ・バンバ」のヒットをきっかけに多くのチカーノ/ラティーノたちがトラディッショナルなラテン・リズムとR&Bとを融合した独特のサウンドをクリエイトし始め、1963年から1965年ごろをピークに南カリフォルニア周辺でラティーノ・ロックンロールは大当たり。

リル・ジュリアン・エレーラ、チャン・ロメロ、ザ・ブレンデルズ、キャニバル&ザ・ヘッドハンターズ、ジー・ミッドナイターズなど多くのチカーノ系ラティーノ・ロッカーがシーンを賑わした。このムーヴメントがやがてサンタナ、エル・チカーノ、ティエラなどに受け継がれ、ロス・ロボス、ロス・ロンリー・ボーイズなどへと至るわけですが。

と、そうしたブラウン・アイド・ソウル・シーン。これがなんともいい感じにスウィートで、同時にいかがわしくて、最高なのだ。大好き。ローライダーたちのバリオ・クルージングに欠かせないBGMというか。やばい感じがなんとも言えない。で、その種の音楽は米ライノ・レコードとか、英エース・レコードとか、意識的な再発レーベルによって過去何度もコンピレーションが編まれてきたのだけれど。

先日、Apple Musicをうろうろしていたら、なんと、その種のチカーノ好みの音楽を集めた新たな10曲いりコンピが8月4日にストリーミング開始されているのを発見。うれしくなってご紹介です。といっても、タイトル通り、そんなに有名どころじゃないレアな曲ばっかりで。たぶん板起こし。アナログ盤の盤面ノイズ込みでの復刻だ。クオリティ的には、んー、今いちってことになるのかもしれないけれど。そのチープさも含めて、なんだか真っ向からチカーノ・オールディーズ。

もろチカーノのアーティストによる楽曲はなく、シカゴのジ・アドミレーションズとかジー・ドゥプリームズとかザ・シークインズとか、フィリー系のドニー・エルバートとかバーバラ・メイソンとか、LAのザ・ヴァウズとかカレン・スモールとか、JBの弟なんて触れ込みで登場したリトル・ロイヤルとか、ウィリアム・デヴォーンなども手がけたフランク・フィオラヴァンティ制作によるロウジー・ジョーンズとか、そういった渋い顔ぶれのレア音源集。1960年代〜1970年代アタマに出たシングルの、しかもB面曲が大半だ。

かつてチカーノの若者たちが堪能したBGM。今ではヒップホップに取って代わられてしまったようだけれど、何十年か前にLAのそのテのラジオ局を聞いている気分の追体験。サブスクで、ぜひ。ちょいマニアックなプレイリストって感じか。タイトルが“Vol.1”となっているのが、なんだか楽しみ。過度に期待せず、次も待ちます。

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